【北欧神話のあらすじ】アースガルドの城壁づくり。ロキ大活躍!

2025年5月30日

ヴァン神とメッチャクチャに戦いまくって、へとへとのアース神たち。気が付いたらアースガルドの城壁はぐちゃぐちゃ、住む場所もボロボロという状態です。

ここで、北欧神話の影の大主役ロキが大活躍します!

この物語は、神話の中で初めてロキが活躍する記念すべき作品です(^-^)

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【前回のお話】
【北欧神話のあらすじ】アース神VSヴァン神!勝つのはどっちだ!

神々の元に来た棟梁

アース神たちが住んでるアースガルドの城壁は、ヴァン神との戦いでぐっちゃぐちゃに崩れてしまいました。

まあ、木柵がぐるっと囲ってあるだけだったし、戦いがなくってもそのうち壊れたんでしょうが……。

アース神はボロボロの城壁を眺めて困り果てていました。建て直さないと、そのうち巨人が襲ってくるかもしれないし、いつまでもこのままってわけにもいかないし……。

でも、「大変だな~」「メンドイな~」「疲れそうだな~」って思って、みんなやりたくありませんでした。神様、怠けもんですね。

戦いの神チュールでさえ「酒飲んでた方が好き」って言ってるんですから、こうなったら誰もやらないです!

そんなある日、一人の男が馬に乗って、アースガルドにやってきました。

男は虹の橋ビフロストで見張り番をしてるヘイムダルに

「神々に聞いていただきたいお話があるんですよ。わたしの話は、神々はとても興味があると思いますよ。女神方も同様にね」

と言ったので、ヘイムダルはさっそくオーディンに報告。

全ての神々が、男のところへ集まってきました。男は神々に言いました。

「何、簡単な話ですよ。アースガルドの壊れた城壁を、わたしが直して見せようというのです。城壁は、前よりももっと高く、頑丈になるでしょうよ。岩の巨人や霜の巨人が攻めてきても、城壁はびくともしないでしょう。それはあなた方が望んできたことじゃありませんか?わたしがその城壁を作ってあげようと言っているんです」

「しかし、何か条件があるんじゃないのかね」

「十八か月ください。城壁を建てるには、それだけ必要です」

「なるほど。確かにそれだけ必要だろう。それで――値段は?」

「それを今から言おうと思っていたんですよ。一番美しいフレイヤをわたしに下さい。それから、太陽と月もほしいのです」

これを聞いて、神々は「そりゃダメだ!」と大ブーイング!「こんなバカ、さっさと追い出そうぜ!」とまで言い出しました。

ロキ、神々に提案する

と、ここでいよいよ、悪知恵の働くロキが登場!

「まあまあ、そう騒がないで。そんなあっさりと片づけるなよ」

と声を上げました。ロキがいたずら者で、嘘つきで油断がならないことを、神々はよく知っているのですが、でも彼のずる賢さには誰もかなわないので、彼らはロキを無視することができまいのです。

「われわれはもっとよく考えてみるべきだよ。この計画を、僕らの利益になるようにできるかもしれないんだからね。たとえば、あの棟梁に十八か月ではなく、六か月だけ与えてみてはどうだろう?」

「ふむ、そんな短期間に工事を終えることはできまいな」

「その通りさ。棟梁が断ったろころで、僕らは何も損はしないし、城壁を建てたところで、全部作るのは間に合いっこないから、僕らはただで城壁を半分手に入れることができるよ。何もせずに、ただでさ」

「そうか、確かに……!」

でも、もし棟梁が城壁を全部建てちゃったら?と、多少の心配はあったのですが、これ以上良い知恵なんてなかったので、ロキの意見を入れることに。

オーディンはさっそく棟梁の前に出て交渉。

「期限は六か月!冬が終わるその日までに、城壁を建てることができたなら、フレイヤを連れて行ってもよい。だが、夏が始まるその最初の日に、石が一つでも積まれていなかったなら、この取り決めは無効だ。また、城壁はそなた一人で建てねばならぬ。誰の援助も受けてはならない」

「何だって!そりゃ無茶だ!不可能です。しかも、あんたはそれを承知で言っているんだ!」

棟梁は飛び上がって抗議しましたが、でも太陽と月はともかく、「でも、わしは憧れのフレイヤが……」と、フレイヤのことはあきらめがつかない様子。

そこで、棟梁は必死の嘆願。

「六か月で建てます!ですから、わしの馬を使うことだけ許可してください!わしの馬、スヴァディルファリ(不幸な結果をもたらすもの)を使わせてください」

しかし、オーディンは承知しません。

「一人で建てるのだ。それが条件だ」

「一人で建てます!ただ、馬を一頭だけ……。でなきゃ、この話はなしだ!」

どうも話がぶち壊しになりそうになってきたので、またロキが口を出しました。

「オーディン!あんた、あんまり頑固だよ。そのくらい許してやれよ。馬を使うことくらい、何が悪いんだね。もしここで拒絶したら、契約は成立せず、城壁は建てられないことになっちまうよ」

こうして、ロキの勧めに従って、いよいよ棟梁が城壁を建てることになったのでした!

棟梁、すごい勢いで城壁を建てる

棟梁はさっそく次の日から工事に取り掛かります。

何としても美人のフレイヤをゲットしたい棟梁は死に物狂いです!

来る日も来る日も、棟梁は頑強な馬スヴァディルファリに岩を引かせて、石切場と城壁の間を行ったり来たりしていました。

このスヴァディルファリという馬、神々は「まあ、馬一頭くらいならいいよ」とOKしたのですが、こいつがタダの馬じゃありませんでした……。

棟梁は夜の間に山の中で石を山ほど集め、それを網でくるんでスヴァディルファリに引っ張っていかせるのですが、この馬はヤベーくらいの怪力の持ち主!小山のような石の山を、ずりずりと引っ張ってアースガルドまで運んでいくのです!

朝になるとスヴァディルファリはアースガルドまで石を運び終え、夜までくたばって寝ます。そして棟梁は昼の間、必死になって石を積んでいくのでした。(棟梁、いつ寝てるのかな?六か月間寝なくて平気なの?)

この調子で、愛のパワー全開で、猛スピードで城壁を立てていく棟梁!神々は

「あ、ヤベー……。マジで城壁出来上がっちゃうかも……」

と、だんだん心配になってきました。そして約束の期限三日前に、城壁は門を残してほぼ完成していました。

ロキ、神々につるし上げられる

神々は高く強固な城壁を百ぺんも見上げて、もうじっとしていられなくなっていました。「城壁がしあがったら、フレイヤと太陽と月を渡す」と契約を結んでいたからです。

神々の王オーディンは、神々を呼び、集会を開きました。

「我々は何とかして、この約束から逃げるすべを考えなければならない!このままではフレイヤが奪われ、空からは太陽と月が失われてしまう。それでは我々は、光も熱も奪われて、闇の中で手探りせねばならん。いったい、何者が我々にこの契約を進めたのか?」

神々全員がロキを睨みつけ、オーディンがロキを捕まえたので、ロキは必死に抗議。

「どうして俺の責任なんだ!自分たちのことは棚に上げて、俺のせいにばっかりするなよ!みんな同意したんだろ」

オーディンがロキの肩をつかんで、まるで人形のように軽々と持ちあげたので、ロキはますます縮み上がってわめきました。

「みんな同意したくせに!」

「馬を使うよう、棟梁に許したのは誰かね?あの馬を使わなければ、城壁はしあがらなかったのではないかね?お前が提案したのだから、お前がこの窮地から逃れる方法を考えるべきではないのかね?」

オーディンがこう言うと、全ての神々はオーディンに同意しました。

「あんまりだ!あんたたち、何もしなかったくせに。何も決定しなかったくせに。あんたたちは何も手を汚さずに、お高い態度を取っているんだ。おいヘイムダル、知らん顔するなよ!あんただって、俺の考えに賛成したくせに!」

「うるさい」

と、オーディンはますます手に力を込めてロキを締め上げました。ロキは息が詰まりそうになって床に膝をつきました。

「お前の悪知恵を絞って、ロキ、考えるんだ。棟梁が報酬を失うか、お前が命を失うか、どちらか一つだぞ。われわれはじっくりとお前を痛い目にあわせてやるんだ。じわじわとな」

オーディンも他の神々も、真剣に自分に手を掛けようとしているのを悟ったので、ロキはしぶしぶ誓いました。

「あんたの言うとおりにするよ、オーディン。誓うよ。どんな犠牲を払っても、棟梁が失敗するようにするからさ」

ロキ、馬に化けて棟梁を失敗させる

その日の夕方、例の棟梁は浮かれまくって、スヴァディルファリと一緒に石切場から歩いてきました。

明日が約束の六か月目ですが、確実に仕事は終わらせられると目星がついてるので、いよいよフレイヤは自分のものです!

超ハッピーで天にも昇る心地の棟梁は、聞くに堪えないヘタクソな歌を歌いながら、ルンルン気分で夜道を登っていました。スヴァディルファリはその後を、「あ~、しんどいな~」と思いながら重い岩を引き引きついていきました。

その時です!ふいに茂みが揺れて、一頭の美しい雌馬が飛び出してきました。

見たことないほど美女の雌馬で、月光を浴びて毛並みが濡れたように光っていました。雌馬は誘うようにいなないて、雑木林へするりと入ってしまいました。

ただでさえ六か月もこき使われて、ストレスたまり放題だったスヴァディルファリ。雌馬のラブコールを聞いて限界突破!棟梁が止めるのも聞かず、手綱をふりちぎって追いかけていってしまいました。

「バカヤロー!戻るんだ~!」

と、棟梁は慌てて追いかけましたが、スヴァディルファリは戻りません。一晩中、彼は彼の馬を追いかけ、叫びまくりましたが、スヴァディルファリは飼い主をほったらかして雌馬とラブラブしまくり、全然戻らなかったのです。

こうしたわけで、棟梁は石を城壁に運ぶことができませんでした。

もう城壁を建てるのは間に合わないと悟った彼は、怒りのあまり変装を解きました。実はこの棟梁の正体は、岩の巨人だったのです!棟梁はたちまち、見上げるような巨人の姿をあらわにしまして叫びました。

「だましたな!嘘で固められた神々め!ここは女神どもの淫売宿だ!」

神々は「ヤベー」と思いましたが、ここへちょうど、東のトロルたちを討伐に行っていたトールがタイムリーに帰還!すぐさま巨人の頭をハンマーのミョルニルでたたき割ってしまいました。

ロキ、スレイプニルを連れてくる

さて、それから数か月後。しばらく姿を消していたロキがアースガルドに戻ってきました。

この時、ロキは不思議な仔馬を連れていました。その馬は灰色の毛並みをしていて、八本足でした。

実は、スヴァディルファリを誘惑したあの雌馬は、姿を変えたロキだったのです。

ロキは別の名を、「変身者」といいます。彼は男にも女にも、どんな生き物にも姿を変えることができて、なんと子供を産むこともできるという特異体質なのでした!八本足の仔馬は、スヴァディルファリとロキの間にできた仔馬でした。

ロキの連れた仔馬は素晴らしい馬で、誰もそれまで、これほどの駿馬を見たことはありませんでした。オーディンがこの仔馬をほめると、ロキは仔馬を差し出して言いました。

「あんたにこの馬をやるよ、オーディン!これからはこいつが、あんたを乗せて走るだろうよ。こいつはスレイプニルといってね、どんな馬よりも速く走るよ。海の上も虚空も走ることができるし、あんたをのせて死の国まで行き、また戻ってくることもできるんだ」

オーディンは受け取り、それからはスレイプニルが八本の足でオーディンを乗せて走るようになったのです。

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