【北欧神話】ヘイムダルは何の神?能力から別名まで解説

2025年5月23日

北欧神話の名脇役、ヘイムダル

昼でも夜でも百リーグ(一リーグが三マイル)先を見通す千里眼と、草木の成長する音まで聞こえるという聴力の持ち主!天空の虹の橋ビフロストを守る、神々の番人です。

出番はそこまで多くないですが、神々の中でも特殊能力を持つヘイムダルは、実に重要な役どころ。

ここでは、ヘイムダルの性格や能力、住んでる場所まで詳しく説明します!

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ヘイムダルの人生(?)まとめ

ヘイムダルは神々の神オーディンと、九人の波の乙女との間に産まれた神です。つまりお母さんが九人いるということに……。う~ん、どうやって産まれたのか謎ですが、これが神ワザというものなのでしょう!

ヘイムダルは耳は草木の成長する音を聞き、目は昼夜問わず百リーグ先まで見通せました。そのため、ヘイムダルは神々から「見張り番」の役目を負わされました。

巨人がいつ襲ってくるか見張るため、神々の国アースガルドと、大地をつなぐ虹の橋ビフロストの端に座っているのです。

「見張り番」なので、ずっとビフロストから動かないでいなきゃいけないはずですが、ヘイムダルは時々勝手に旅に出てます。

何度か人間界(ミッドガルド)へ下りて行って、三軒の家に寝泊まり。そこの奥さんを寝取って子供を作りました。後に、これらの子孫が「奴隷」「農民」「王侯」になったんだとか。つまり、ヘイムダルが人間界の階級を作ったというわけです。

ヘイムダルはギャラルホルンという角笛を持っていて、これは、神々と巨人族との最後の戦い「ラグナロク」がやって来た時に、吹き鳴らすためのものなのです。そしてついにラグナロクが訪れたとき、ヘイムダルは角笛を吹き鳴らし、その音は世界中に響き渡りました。
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ヘイムダルは最後、長年の宿敵だった巨人族ロキと戦い、相打ちになって死んでしまいました。

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ヘイムダルの見た目

ヘイムダルは「神々の中で最も美しかった」と言われています。

・真っ白い肌

・黄金の歯

別名、「白い神」と呼ばれています。でも正直、リアルにこの容貌を考えると恐いかも……。

ヘイムダルの能力

ヘイムダルは他の神々にはない、特殊な能力を持っています!

・素晴らしい聴力の持ち主。草の伸びていく音、羊の毛が伸びていく音まで聞くことができる。
・昼も夜も、百リーグも離れたところの微かな動きさえ見ることができる。
・鳥よりも少ない眠りで足りる。

一説によると、この威力は片耳をミーミルの泉(賢者ミーミルの首がいる泉)に捧げて、その代償にもらったと言います。

ヘイムダルの住所

神々の国アースガルドと、人間界ミッドガルドを繋ぐ虹の橋ビフロストを守る番人なので、このビフロストの近くに館を構えています。

ヘイムダルの所領はヒミンビョルグといいます。「天の絶壁」という意味です。

ヘイムダルが出てくるお話

①ビフロストを渡って、アヤシイ奴がアースガルドにやって来る。

②ヘイムダルがアヤシイ奴を発見。

③ヘイムダルが神々に連絡。

という出だしで始まる神話が多いので、ヘイムダルが登場する話はたくさんあります(ほとんど主役じゃないけど)。

でも、主役や、準主役を担っているお話もいくつか!ここでは代表的なものを紹介します。

リーグの歌

あるとき、ヘイムダルはギャラルホルンをビフロストのたもとに置いて、リーグ」と名乗って人間の世界ミッドガルドを旅しました。

その途中、ヘイムダルは「貧しい家」「普通の家」「とってもお金持ち」の三軒の家を訪ね、そこの若い夫婦に子宝を恵みます(ぶっちゃけ寝取った)。彼らの子孫が、その後「奴隷」「農民」「王侯」となったのです。

ヘイムダルは後に王侯となる子供ヤルルに、特別な祝福を与えました。彼にルーン文字と知恵を与え、

「お前に教えてやることがもう一つある。我が子よ、お前はわたしの息子なのだ。さあ、国土を勝ち得、偉大な古い時代の館を勝ち得て、今こそ軍勢を指揮するときだぞ」

と言ったのです。

このことから、ヘイムダルは人間の祖先であると言われています。

北欧神話の出だしも

「すべての貴い氏族、身分の高下を問わず、ヘイムダルの子らによく聴いてもらいたい」

言葉から始まります。

 

ロキと争う

どうしてかは不明ですが、ヘイムダルはロキと宿敵同士です

あるとき、女神フレイヤ(美の女神)の一番の宝、ブリーシングの首飾りを、ロキが盗みました。ヘイムダルは首飾りを取り戻すため、ロキと争います。彼らはアザラシの姿になって海に飛び込み、壮絶な戦いの末、ヘイムダルが首飾りを取り戻したとされています。(この話は断片的にしか残ってないので、細かいところは不明)

スリュムの歌

あるとき、トールが目を覚ました時、彼の武器ミョルニル(最強のハンマー)が巨人のスリュムに盗まれてなくなっていました。
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ロキがスリュムのところへ行って

「ハンマーはお前が盗んだのかね」

と尋ねると、スリュムは

「フレイヤをおれの花嫁にすれば返そう」

と言います。
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フレイヤはもちろん怒り狂って拒否。ここで、ヘイムダルが知恵を出します。

「トールをくるみましょう。そう、トールを花嫁のヴェールでくるむんです。ブリーシングの首飾りを彼の首にしっかり留めましょう。あらゆる花嫁にふさわしいように、彼は美しく装わなければなりません。腰にはジャラジャラ鳴る鍵の束がぶら下がっていなければなりません。そして長い衣装を着せなければなりません。わたしたちは精巧な作りのブローチを、彼の胸に留めることを忘れてはいけません」

平たく言えば、「女装させましょう」ということですが、これに神々は爆笑。トールはしかめ面。

でも結局、トールは女装してスリュムのところへ行き、まんまとミョルニルを取り戻しました。

ロキの口論

ロキがアース神と対立して、最後にアース神に悪口を浴びせかけた時のことです。ロキはもちろんヘイムダルにも悪口を浴びせます。

「ロキ、酔っぱらったな。こんなに正気を失うとは。なぜよさないのだ、ロキ。飲みすぎると、誰しも自分の言葉が分からなくなるものだが」

「黙れ、ヘイムダル。お前は昔、酷い暮らしをさせられたくせに。いつも背中を濡らして、神々の見張り番をして目を覚ましておかねばならなかったろ」

このロキのセリフは、ヘイムダルの「神々の番人」という役目が、ヘイムダルにとっても相当に重荷だったことを知る手がかりです!

もしかしたら、あまりにも重荷だったので、ミーミルに片耳を渡して超能力を手に入れたのかもしれませんね。

ヘイムダルお勧めの本

岩波少年文庫の「北欧神話」!これはお勧めです!子供向けの本ですが、かなりの読み応え。

この中に、ヘイムダルと、フレイヤの娘フノッサの物語が載っています。

まだ非常に幼い少女の神フノッサが、毎日ビフロストに座っているヘイムダルのところへ行き、昔話を聞かせてもらうという、なんとも心温まる物語。

「フノッサは、大門から外へ出て、虹の橋の番人ヘイムダルのそばにいるのがすきでした。(略)フノッサが、毎日のように、ヘイムダルのそばにいたので、ヘイムダルは、万物がどうしてできたかという、ものごとの始まりの話を、小さいフノッサにして聞かせてやりました。ヘイムダルは、夜の始まりから生きていましたから、どんなことでも知っていたのです」

北欧神話はかなりドロドロと惨たらしい話が多いですが、そうした物語の中に、こんなエピソードがあると、とても印象に残りますね。

ヘイムダルのアイテム

ヘイムダルは番人なので、あまり持ち物はありません。

ギャラルホルン

ラグナロクに鳴らす角笛だよ。

ヒミンビョルグ

ヘイムダルのおうち。ビフロストの側にあるよ。

グルトップ

ヘイムダルの頭

ヘンな名前だけど、剣のことだよ。

ヘイムダルの関係者

特に関係の深い神や人間を紹介します。

オーディン

お父さんだよ。

九人の波の乙女

お母さん。九人もいるよ。

ロキ

ヘイムダルはこいつ大っ嫌い。ラグナロクで殺し合いするよ。

アーイとエッダ

貧乏な人間。「リーグの歌」で、家に泊めてもらった。奴隷の祖先スレールが生まれる。

アヴィとアンマ

中産階級の人間。「リーグの歌」で、家に泊めてもらった。農民の祖先カルルが生まれる

ファジルとモージル

とってもお金持ちの人間。「リーグの歌」で家に泊めてもらった。王侯の祖先ヤルルが生まれる。

まとめ

長文失礼しました。

ヘイムダルは何かと活躍しますが、これといった物語が乏しいのが残念なところ。ギリシャ神話のヘルメスにちょっと似たところがあります。

でも、ヘイムダルは北欧神話に欠かせない重要キャラです。美形で世話好き、何でも知ってる。彼の人気は不滅ですね!

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