【北欧神話のあらすじ】ロキの口論
光の神バルドルを殺害した犯人ロキ。巨人でありながら、今まで神々の仲間として仲良く(?)していたロキが、本性をむき出しにしてすべての神を罵倒しまくるという衝撃的な場面です!
北欧神話の大スターロキの、一番の見せ場です!
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【北欧神話のあらすじ】ロキ、バルドルを殺害する
主な登場人物
・ロキ
・オーディン
・フレイヤ
・フリッグ
・トール
・その他大勢の神様たち
ロキ、宴の場でいきなり下男殺害
バルドルが死んだ後、さすがに神々はしおれ切っていたのですが、次第に元気を取り戻します。
そしてある日、海神エーギルが神々を招いて宴を開きました。オーディンとフリッグ、フレイとフレイヤ、ニヨルドと妻のスカジなど、大勢の神々が集まってきました。ただトールだけは遠征に行っていたのでいませんでした。
この館では輝く黄金が明かりの代わりになって辺りを照らしていたし、ビールはひとりでに杯に溢れてくるし、神々はみんな上機嫌になって、機嫌よくおしゃべりしていました。
ただ、ロキだけはこの騒ぎが気に入りませんでした。神々の浮かれたおしゃべりや、喜びや上品さが癇に障ってたまらなくなりました。
突然、ロキは立ち上がると、エーギルの召使の一人をナイフで殺害!
神々はワッと叫び声をあげ、
「出て行け!この災いの元凶め!」
と、ロキを館から追い出しました。
ロキは真っ暗な森の中に追いやられ、神々はもう一度エーギルの館へ戻って、宴の席についたのです。
ロキ、堂々と宴に戻ってくる
やがて、ロキは闇の中から引き返して、館の前に立ちました。戸口には下男のエルディルがいたのですが、ロキは恐ろしい調子で、
「動くな、エルディル。さあ、一歩も動かず話せ。あのバカ騒ぎはなんだ。勝利の神々はいったい何を話している」
「神々は自分の武器のことや武勇について話しておられる。あなたのことは、誰もよく言ってはいませんよ。妖精でさえもね」
するとロキはニヤッと笑って、
「いいさ、俺は宴席に戻るよ。この宴会に欠席するつもりはないからな。アース神たちに騒動を持ち込んでやる。奴らの酒を台無しにしてやるさ」
「よしなさい、ロキ。きっと神々はあんたの罵詈雑言を、あんたの身体で拭き取ろうとなさるでしょうよ」
「いいか、おいエルディル。お前がどんなに俺を罵ろうとしたって、この俺にかないっこないのさ」
こうして、エルディルを押しのけて宴の間へ帰って来たロキ!
ロキが入って来たとたんに、誰もが飲むのも食べるのもやめて、広間はしんと静まり返ってしまいます。
でもロキは広間の中央へ平然と歩いて行って、一同に言いました。
「ロキが喉をカラカラにして、はるばるこの広間までやって来ましたぞ。名高い蜜酒を一杯、神々から所望したいですな。
なぜあんた方は、それそのように黙っておられる。陰気な神々よ、あんた方の間には一言もないのかね。俺の為の椅子をお決めになるとか、さもなければ俺に退席をお命じになるとかさ」
これに詩の神ブラギが言い返します。
「お前のための椅子はない。お前は宴会の席にいてほしい者ではないからな!」
でも、ロキはブラギを完全無視!オーディンの方を見て、
「オーディン、あんた覚えているだろう?俺とあんたが付き合いだして間もない頃さ、俺たちはお互いの血を混ぜて兄弟の交わりをしたな。あんたはその時誓ったじゃないか。この俺に飲み物が運ばれないうちは、あんたは一滴のビールだって飲まないってさ」
この言葉に、オーディンは息子のヴィーダルに酒を注がせて、ロキに持っていってやります。
するとロキはぐるっと辺りを見回して、
「ごきげんよう、神々!ごきげんよう、女神がた!すべての神聖な神々に栄えあれ!奥のベンチにどっかり腰を掛けてる、ブラギを除いてはね」
ロキ、神々を罵倒しまくる!
ロキに侮辱されたブラギはカンカンに怒ります!
「ここが神聖な広間じゃなかったら、お前の首なんぞこの手にぶら下げてやるところだ」
するとこれを皮切りに、ロキの毒舌がさく裂!
「大噓つきのブラギめ!お前はここにいる神々の中で一番の臆病者さ。戦が怖くて、縦の後ろでびくびくしてやがるんだ」
ここでブラギの妻、イドゥンが出てきて
「ブラギ、ロキはそっとしておきましょう。罵り合ったりしないで」
「黙れ、イドゥン!お前ほど男狂いの女はいないぞ。なんて食い気だ!お前はその腕を、お前の兄弟を殺した奴にも巻き付けたんだからな」
豊穣の女神、ゲフィオンも参戦。
「アース神二人して、どうして言い争いをしあったりするの?誰でも知ってるわ。ロキは悪口を言うのが好きなのよ。神々が嫌いで憎んでるんですからね」
「たくさんだ、ゲフィオン!お前についても、ちゃんと知っているぞ。あの生っ白い男が首飾りをちらつかせたら、おまえは奴に馬乗りになったんだよな」
ここで、オーディンが「ロキ、お前どうかしているぞ」と呼びかけると、ロキの毒舌はますますヒートアップします!
「たくさんだ、オーディン!あんたは一度だって公平だったことはないんだ!何が《戦の父》だ!人間に正しく勝利を与えることもできないくせに!いいかげんに、弱い男に勝利を与えるのはやめたらどうなんだ!」
「わしは弱い男に勝利を与えたかもしれんが、お前は八年もの間、地下で女の姿になっていたな。その上、子供をはらんで、お前の太ももの間から押し出したろう。どこからどこまでも女だった」
「ははあ、サムス島で、あんたが巫女のように魔法を使ったと噂してますぜ。そうさ、人間の間を魔女の姿で歩き回ったってね」
フリッグはこの言い争いを聞くに堪えなかったので、
「過ぎたことを今さら言って何になるのです。いい加減にやめなさい」
と言うと、ロキは待ってましたとばかりに
「あんたは生まれながらの売春婦さ。あんたはオーディンの妻のくせに、オーディンの兄弟のヴィリとヴェーとも寝たんだからな」
「ロキ!あなた気が狂ったの?ちょっとは気を静めてよ!」
フレイヤが叫びましたが、ロキが気を静めるわけがありません!
「たくさんだ、フレイヤ!魔女だ、あんたは!この場にいる全部の男と、あんたは寝たことがあるじゃないか!それだけじゃない。あんたが自分の兄とベッドを共にして、神々に踏み込まれた時にゃ、あんたは屁をこいたものさ」
ニヨルドが娘のフレイヤをかばって、
「夫だって、情婦だって、その二人同時にだって恥じゃない。だがここにいる男が、女になって赤ん坊を産んだとは驚きだね」
「たくさんだ、ニヨルド!あんたはアースのところへ送られてきた人質さ。ヒュミルの娘たちが、あんたの上にしゃがみこんで、口の中に放尿したっけな」
こうなったら、もう止まりません!ロキはチュールもフレイもヘイムダルもやり玉にあげて、悪口雑言の嵐!
最後にトールの妻シフに向かって、
「あんたはほとんどの男に対しては手厳しい人でしたからね。あんたには罪がないと言っていいところですがね。でも俺は、あんたと通じた男を一人知ってるんだな。悪知恵の働くロキがそいつさ」
それからロキは急に黙って、息をついて立っていました。
するとオーディンがロキに向かって尋ねました。
「もしバルドルがここにいたら、彼の顔に唾を吐きかけることができるかね?彼に似合うような下劣なことはない。だから彼がここにやってこられないようにしたのかね?」
ロキはニヤッと笑いました。
「罪がなく、潔白ということが奴の弱点さ。何も決定することなく、何もしない奴が穢れを知らずに、お高い態度をとっていられる。それが奴の一番の罪だ」
その場に多くの神々がいましたが、この言葉の意味を理解したのはオーディンだけでした。
トール帰還!ロキを追い出す
その時、ガラガラと凄まじい戦車の音を響かせて、トールが帰ってきました。
ロキの言葉を途中から聞いていたトールは、真っ赤になって怒り狂って、
「黙れ、悪党!俺のハンマーのミョルニルで、お前の口をふさいでやるぞ!」
ロキには、トールが本気で自分に向かってくることは分かったので、
「俺の舌は、今この時ほど自由な時はこれまでなかったよ。でもトール、お前のために、お前一人の為に、今は別れを告げようと思う。お前の強さについては、俺は残らず知っているからなあ」
と言って、ちょっと一休みしてから、また宴の主催者エーギルに言いました。
「お前は素晴らしいビールを作ったな。だが、もう二度とこんな宴会を催すことはないだろうよ。炎がこの館を貪り食い、焼き尽くし、お前の背中にも火が付くからな」
ロキはくるりと向きを変えると、空飛ぶ靴を履いて去っていきました。神々もまた、誰もがすっかり疲れたようになって、黙りこくったままエーギルの館を出て行ったのです。
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