【北欧神話】ジークフリートの冒険まとめ。壮絶な三角関係の末に暗殺!
北欧神話、ゲルマン神話で一番の有名人といえば、ジークフリートでしょう!漫画「オルフェウスの窓」でも、ジークフリートとクリームヒルトのロマンスは外せませんね。(北欧神話での名前はシグルズです)
褐色の髪に、神がかり的な二枚目。竜退治をして姫を助けた不死身の騎士!どこをとってもカッコいいジークフリート。なのですが……そのラストは「女の恨みを買ってぶっ殺される」と、あまりにもヒドイ……。
今回は、ゲルマン最高の英雄、ジークフリートの人生を「どこよりも分かりやすく」まとめます!
ジークフリート、ホイホイ乗せられて竜を退治
まずはジークフリートの紹介から!
【お父さん】
ジークムント。超強い王様。クサンテンという国を支配してるよ。
【お母さん】
ジークリンデ。お父さんとよく似た名前のお妃様。ワーグナーのオペラでは、ジークムントの妹で、しかも双子。兄妹で駆け落ちしてジークフリートを生むという、超ヤバい関係。
【容姿】
茶褐色の髪で、端正な顔立ち。目つきが鋭い。肩幅はフツーの男性の約二倍(神話上では「ハンサム」だけど、リアルに考えると不気味……?)。
【持ってるアイテム】
馬のグラーニ。なんとスレイプニル(八本足の神馬)の血を引く、超名馬。
バルムンク。何でも切れるすごい剣。育ててくれた鍛冶屋のレギンが作ってくれた。
さて、産まれた時から親にも容姿にもパワーにも優れてたジークフリート!まさにエリート中のエリートです。「望んで叶わないことは一つもない!」って感じなので、その性格はかなりの自信家。イケイケなタイプです。
このジークフリートの腕力に目をつけたのが、レギンという鍛冶屋。ジークムントが息子の教育係につけた賢い男です。賢いし物知りだし、鍛冶の腕前も一流なのですが、このレギンの身内には、かなりの問題が……。
このレギン、ファーヴニルというお兄さんがいるのですが、この ファーヴニル、お父さんを殺したあげく、莫大な遺産を独り占めして洞窟で引きこもり人生。ヤバすぎる欲望がつのったあまりに竜に化けたという……とにかく厄介な奴なのです!
この「遺産」というのが、またハンパじゃありません!かぶったら姿が見えなくなる(なんにでも変身できるとも)マントなどの魔法アイテム。それから多すぎて計ることができないくらいの黄金の山。
レギンは遺産が欲しいのですが、アニキの竜が独り占めして、近づく者は誰彼構わず炎を吐くので、手も足も出ません……。そこで
「そうだ!ジークフリートをそそのかして、竜を殺せばいいんだ(アニキなのに)!そして竜さえ殺せば、ジークフリートは用済み。毒殺しちまおう(教え子なのに)!」
こう考えて、ジークフリートにそれとな~く相談。
「こんなに悪い竜がいるんだ。被害者がたくさんいるんだ。退治しないか」
まさかレギンが自分を殺そうとしてることなんて、全然知らないジークフリート。
「そうか、そりゃ悪い竜だな!よし、殺そう!」
こうしてジークフリート、すごい刀のバルムンクを持ち、愛馬グラーニにまたがって出かけたのでした。
ファーヴニルは洞窟に住んでますが、時々水を飲みに川に来ます。そこでジークフリート、穴を掘ってその中に潜み、獲物を待つことしばし……。
やがてファーヴニルがやって来ます!ジークフリートはすかさず飛び出してグサリ!ファーヴニルは大量出血でバッタリ。
「オレの兄弟のレギンが、お前を裏切るぞ!お前も殺されるからな!」
と、言い残して死んだのでした。
ジークフリート、竜の血で全身固くなる
……さて、この後のジークフリートの行動は、けっこう衝撃です。
ファーヴニルが死んだ後、ジークフリートの潜んでた穴にたくさん血が溜まったのですが、あったかくてヌクヌクなので、ジークフリートは「こりゃいいや」と、なんと湯あみ!ザブザブと血の風呂に浸かったのです!
この竜の血を全身に浴びたために、ジークフリートの皮膚は角質化(って、神話に書いてある)。斬っても突いても大丈夫な身体になったんだとか……。
このためにジークフリートは「不死身の男」となったのですが、実は背中に一枚、葉っぱが張り付いていたために、ここだけ皮膚が角質化しませんでした。なので、この「背中」が、ジークフリートの唯一の弱点となったのでした。
まあ、こうして「不死身」になったジークフリート、バルムンクで竜をザクザク切り開き、心臓を取り出して焚火でジュウジュウあぶります。焼き肉にして食べるつもりです。
が、この時、一つの事故が……。
心臓の血がはねて手にかかり、「アチッ」とあわてて舐めたのですが、不思議や、イキナリ鳥語が分かるようになったのです!
風呂に入って不死身になり、バーベキューして聞き耳ずきんになるとは、何とラッキーな男でしょうか!
すげー!と思って、鳥の言葉に耳を澄ませていたジークフリート。頭上でシジュウカラが、こんな事を言っていました。
「ジークフリート、レギンはあなたを殺すつもりだよ」
「あんたの首をレギンが取るつもりだよ」
……こう言われて、黙ってるジークフリートじゃありません。竜退治を見物するために来ていたレギンに無言で近づき、バルムンクでイキナリ真っ二つ!そんで、愛馬グラーニにお宝を積めるだけ積んでおさらばしたのでした。
ブリュンヒルデと結婚の約束!……なのに何で別れる?
レギンを殺したとき、シジュウカラたちはジークフリートに耳より情報を伝えていました。
「山の頂(いただき)に、炎に包まれて眠っている人がいる。その人を目覚めさせれば、ジークフリートに素晴らしい知恵を授けてくれるだろう」
これを聞いたジークフリート、さっそく愛馬グラーニにまたがって、山に向かいます。(どの山かは不明)
山の頂はマジで炎が燃え盛って、天まで焦がすほどの大火事だったのですが、ジークフリートは竜の血のおかげで全然平気。しかも怖いもの知らずですから、やすやすと炎の壁をくぐり抜けていきました。
炎を超えて、山のてっぺんにたどり着くと、そこには!なんと絶世の美女が鎧姿で眠っていたのでした!
この美女、名前をブリュンヒルデといいます。ニンゲンじゃなくって、ヴァルキューレ(死ぬ運命の英雄の魂を、神々の宮殿に連れて行く神様。全員、女戦士で鎧を着てる)なのですが、むか~し、神々の王オーディンに逆らったために、罰として神格をはく奪され、山のてっぺんに置き去りにされて、
「お前を目覚めさせた者の嫁になれ!」
と、ムリヤリ何十年も眠らされてたのです。
(ブリュンヒルデは昔、年寄りと若者が戦ってる場面で、オーディンから年寄りが勝つようにしろと言われてたのに、イケメンの若者の味方をしたために罰せられたそうです)
さて、ジークフリートはブリュンヒルデを発見して、何でか知りませんが「鎧を脱がせよう」と考えます。そこでバルムンクを使って鎧をズバズバとぶった切り、全部脱がせちゃいました。これで目が覚めたブリュンヒルデに、ジークフリートは大真面目に一言。
「あなたの妖艶さを、この目で確かめてみたいと思いまして」
初対面の寝てる女性の鎧を全部脱がせて、このセリフ!現代だったら間違いなくアウトですが、神話の時代なので悪しからず……。かなり後に変形した神話では、「ジークフリートは眠るブリュンヒルデにキスして目を覚まさせた」となっています。これが「眠れる森の美女」の原型です。
この後、ジークフリートとブリュンヒルデは酒を飲みながらベラベラとおしゃべり。ブリュンヒルデは元ヴァルキューレで魔法に通じてましたから、ジークフリートはブリュンヒルデから大量に魔法を伝授。その博識に感激したジークフリート、
「あなたほど賢い女性は他にいません!誓って申し上げますが、あなたを妻に持ちたいと思います」
と、プロポーズ。ブリュンヒルデは「イヤです」と何度も断ったのですが、ジークフリートは食い下がります。ぶっちゃけ、しつこいくらい
「妻にしたい」
「あなたほど美しい人はない」
と、朝から晩まで口説きまくり(その間、ず~っと飲みまくって)、とうとうOKをもらいます。
OKをもらうと、そこは若くて元気なジークフリート。「もっと深く愛が知りたい」とか何とか言って、即、肉体関係に。気が済むまで愛の行為を続けると、
「そのうち結婚式を挙げよう」
と言って、どこへともなく旅へ……。これでちゃんと戻って来て結婚式をやれば、めでたしめでたしだったのですが、この直後にジークフリートはブリュンヒルデを裏切ります!ハッキリ言って最低の男です!
グンターと仲良し兄弟になる。クリームヒルト姫をゲットするために大手柄
旅を続けたジークフリート、「ブルグンドの国に、クリームヒルトという美しい姫がいる」という噂を聞き、噂を聞いたとたんに「手に入れよう」と決意。一瞬でブリュンヒルデのことは忘れてます……。
宮廷にやって来て、クリームヒルトを目撃したジークフリート。そのあまりの美貌に驚愕!一瞬で魂を奪われてしまいました。
この時、ジークフリートにとっては都合よく、ザクセンがブルグンドに攻めてきたところで、クリームヒルトの兄貴、グンターは困ってるところ。
「グンター殿、お味方します!」
将を射んとする者はまず馬を射よで、姫をゲットするために、まずは兄貴を陥落させようと考えたジークフリート。ザクセン軍の真っただ中に躍り込んで大乱闘。敵将を生け捕りにするという大手柄を立てます。
グンターは泣いて喜び、ジークフリートと義兄弟の約束。妹のクリームヒルトも、この勇姿にはほれぼれ。まだ一言も言葉を交わしたわけじゃありませんが、お互いに目に物言わせて愛を語ってるところです。
最低の裏切り!ブリュンヒルデを義兄弟にあげちゃうジークフリート!
さて、ザクセン軍を退けてホッとしたブルグンド族。平和になると家族の悩みが出てきます。
「オレはまだ独り身だ。王様なわけだし、誰か嫁を貰わないと……」
こう考えたグンター。「ブリュンヒルデという美女が、ライン川を下ったあたりにいるそうだ。その女をもらおう」と考えて、義弟のジークフリートに相談します(グンターは、ジークフリートとブリュンヒルデの関係を知らないのです)。するとジークフリート、
「分かりました!じゃあ、クリームヒルトをわたしに下さると約束してください!そしたら、ブリュンヒルデを手に入れるために、いくらでも手伝いますよ!」
と、あまりにも鬼畜すぎる発言!ブリュンヒルデとの結婚の約束を、完全に無視してます!
これについては、オペラとかでは「ジークフリートは忘れ薬を飲まされてて、それまで関係したすべての女の記憶を失くしてしまってた」となってますが、これはかなり後世のお話です。
こうして、意気揚々と船に乗り込んだグンターとジークフリート。すぐにブリュンヒルデの国に到着。
「グンター王が求婚に来ました!」と大声で宣言する二人。そこへ姿を現したブリュンヒルデは、ジークフリートを見て真っ青。怒りのあまり口もきけません。
「わたしを妻にしたいなら、力技で三度勝負しなさい!一つでも負けたら、あなたの命はありませんよ!」
と、ブリュンヒルデは勝負を挑みます。ヴァルキューレなので、普通の人間では絶対に敵わないと知っていたからです。
ところが、ジークフリートは姿を隠す魔法のマントを持っています。これを使って、ひそかにグンターに手助け。槍を投げたり岩を持ち上げたり、ぜ~んぶジークフリートが代わりにやって、グンターを勝たせてしまったのでした。
あまりのショックで泣き出すブリュンヒルデ。強制的に船に乗せられ、ブルグンドの国へ連れてかれちゃったのでした。
ブリュンヒルデ、ブチ切れ!グンターを縛り上げて、壁に引っ掛ける。
さて、ジークフリートとグンターは、ブリュンヒルデを連れてブルグンドの国に帰りました。ジークフリートは約束通りにクリームヒルトを手に入れ、二組の結婚式が賑やかに行われたのですが……収まらないのはブリュンヒルデです。
「結婚式を挙げよう」と約束したジークフリートが、別の女と目の前で結婚式を挙げて、自分は全然知らない別の男と結婚することになったのですから、これで怒り狂わないワケがありません!
その晩、意気揚々とベッドルームに入ってきたグンターに、ブリュンヒルデは掴みかかります!イキナリ縄で縛り上げて壁のクギに引っ掛け、
「絶対わたしに触らないで!」
と宣言。グンターは「おろしてくれ~」とヒイヒイ泣き声を出しましたが、ブリュンヒルデは一晩中知らんぷりだったのでした……。
が、次の晩、再びジークフリートがグンターの手助けにやって来ます。例のマントでグンターに化けたジークフリート、
「大人しく言うことを聞け!」
とブリュンヒルデをベッドに押さえつけて暴行。ブリュンヒルデが泣きわめいて半狂乱になっているのをいいことに、途中でホンモノのグンターとバトンタッチ。……ハッキリ言って輪姦したわけです。
しかも!この時、ジークムントはブリュンヒルデの腰ひもと指輪を「戦利品だ」と持ち帰って、寝室で待ってる新妻クリームヒルトに
「これをあげるよ!ブリュンヒルデと寝て盗んできたんだ」
と、ぬけぬけとプレゼント。贈る方も贈る方ですが、「まあ、素敵!ありがとう!」と、受け取る方も受け取る方です!う~ん、サイテイすぎますね。
ブリュンヒルデとクリームヒルトが女の戦い!ハーゲンが悪だくみする。
この後、ジークフリートとクリームヒルトは、ジークフリートの国クサンテンに帰ったので、しばらくは何もありませんでした。
しかし!裏切られまくったブリュンヒルデの恨みつらみが、このままで晴れるわけがありません!
やがてジークフリートたちが、夫婦そろって、ブルグンドの国に遊びに来たのをきっかけに、再びバトルが始まります!
きっかけは、ブリュンヒルデとクリームヒルトの醜い言い争い。この二人、どっちも絶世の美女でプライドが高いですから、仲良しになれるわけがありません。
「私のジークフリートがこの世で一番立派な王様よ!」
「馬鹿言わないで!ジークフリートはグンターの家臣でしょ!(ジークフリートは王様ですが、グンターがブリュンヒルデに求婚しに来た時、ジークフリートはグンターの家臣のフリをしてたのです)」
と、小学生レベルの争い……。そのうち、頭に血が上ったクリームヒルト、言っちゃいけないことをバラしてしまいます。
「ジークフリートが家臣ですって!何も知らないくせに!あなたが初夜を一緒に過ごしたのは、グンターに化けたジークフリートなのよ!家臣に処女を奪われてお気の毒なことね!」
と、このサイアクな事実を、家臣たち、侍女たちが何百人もいる前で叫んでしまったのです。
ブリュンヒルデは真っ青。
「そんなはずないわ!」
とガタガタ震えて言いましたが、クリームヒルトは勝ち誇って、
「この指輪と腰ひもに覚えがあるでしょ?ジークフリートがあなたと寝た時に奪って、わたしにくれたのよ。ジークフリートがあなたの最初の夫だったのよ」
完全に打ちのめされたブリュンヒルデ、その日、一日中ベッドで泣き叫んで、
「グンター!あなたの妹がわたしを大勢の前で侮辱したのよ!この辱めを晴らしてください!」
と、夫のグンターに訴えました。
これに対してグンターは「別にもういいじゃないか」と知らん顔。当の犯人のジークフリートは
「身に覚えがありませんね。クリームヒルトがブリュンヒルデに妙なことを言ったようだが、婦人というものは軽々しい口を利かないようにしつけてもらいたいものだ。まあ、彼女にはちゃんと償いをさせますから」
と、いけしゃあしゃあ。
一人だけ、グンターの弟のハーゲンが
「女王を辱めたジークフリートの罪は許しておけない。わたしが必ず復讐しましょう。ジークフリートが罰を受けないなら、わたしが死にます!」
と、ブリュンヒルデとグンターに向かって宣言。グンターは「そりゃ良くない。ジークフリートはブルグンドを救うために、ザクセン軍を追い払った恩人だぞ」と言いましたが、ハーゲンは
「よく聞きなさいよ、グンター。ジークフリートが死ねば、奴の莫大な遺産(竜から奪ったやつ)は、全部オレたちのものなんだぜ」
と耳打ち。ハーゲンはハーゲンで下心があったのです。
「作戦はオレが立てるよ。まあ、任せておきなさい」
と、ジークフリートを暗殺することを決めたのでした。
ハーゲン、ジークフリートの弱点を聞き出す。
それから四日後、「またザクセンが攻めてきた~!」という知らせが届きます。
みんなたいそうビックリしましたが、実はこの知らせ、ハーゲンが仕組んだガセネタ。ザクセンは無実です。
「仕返しはオレがやる!ザクセンの国を荒らしまくってやるぜ!」
と、ジークフリートは聞くなりやる気満々。すぐにも敵陣に躍り込む構え。ハーゲンとグンターは「ご協力ありがとうございます」と頭を下げてニコニコ顔。
さて、この晩、ハーゲンはクリームヒルトのところへ挨拶に行きました。クリームヒルトは兄弟のハーゲンと世間話をして、ついでにグチグチと旦那の文句。
「あの人は戦に出ると、あまりにも向こう見ずで、思い上がったところがあります。もっと慎重であってくれたらよいのに……」
「では、あの方は傷を受けやすいのですか?わたしはどのようにあの方をお守りしたら良いでしょう」
こう言われて、クリームヒルトは聞かれてもいないのにジークフリートの秘密をペラペラとしゃべってしまいます!
「ジークフリートは竜の血で全身固くなっていますが、両肩の間だけが、菩提樹の葉っぱが張り付いていたために、固くならなかったのです。そこを突かれたら死んでしまいます」
「では、ジークフリートが着る衣装に、印を縫い付けておいてください。目印を付けておいてもらえれば、わたしはあの方のどこを守ればいいのか分かりますからね」
「分かりました。ありがとうハーゲン!」
と、こうしてクリームヒルトは馬鹿正直にジークフリートの衣装の背中に、十字架のマークを刺しゅうしてしまいます!ジークフリートの弱点は、ハーゲンにバレバレになってしまったのでした!
ジークフリート、アッサリと殺される
翌朝、戦う気満々のジークフリートの元に、
「ザクセン軍は戦いをやめました。戦争はなしになったから、狩猟に出かけましょう」
という知らせが届きます。せっかくなので、ジークフリートはそのまま、グンターやハーゲンと一緒に狩猟に行くことに。
一行はライン川のほとりまで出かけ、いよいよ狩りが始まります!ジークフリートは張り切りまくって、ライオンを一頭、水牛一頭、大鹿一頭、野牛四頭、牡鹿一頭、猪一頭を仕留めます。さっそく、焼肉パーティーが始まって大賑わい。
ところが!この食事に、なぜか飲み物がないことに、ジークフリートが怒りだしました。
「あれほど狩りで駆け回って喉が渇いているのに。どうして飲み物がないのですか」
すると、すかさずハーゲンが一言。
「実は、今日の狩りはシュペルアールトで行われると聞いていたので、飲み物はそちらに届けてしまったんですよ。でも、この近くに冷たい泉がありますから、そこへ行きましょう」
こうして、水を求めて移動した一行。ジークフリートは泉に口をつけるために、思いっきり身をかがめました。
と、その瞬間!槍を持ったハーゲンが、柄まで通れと、ジークフリートの背中の十字架を突き刺したのです!槍先は胸の前まで飛び出し、ジークフリートは怒り狂って楯を握りしめ、ハーゲンの楯に力任せに打ちかかりました。このとき、あまりの衝撃でハーゲンの楯を飾った宝石が砕けて、四方に飛び散りました。
「下劣な卑怯者め!(略)お前らはわたしを刺し殺した。(略)わたしの忠誠に、このような謀殺で報いた。わたしはお前らと、お前らの血筋、一族の全てを恨み呪うぞ!(略)」
この時の、ジークフリートのセリフは長いです!
さすが、竜の血を浴びた男。世界一、頑丈で長持ちな男なので、串刺しになりながらも長々と悪口雑言を叫ぶのですが、ベラベラとしゃべっているうちに、さすがに出血多量で弱ってきます。グンターに対して「何でハーゲンを止めなかったんだ」とか「自分が先に殺しとけばよかった」とかいろいろ言った後で、
「ああ、オレはもう死ぬ!死んだ後、クリームヒルトのことだけが心配だ。クリームヒルトはあなたの妹なのだから、彼女を幸せにしてやってくれ」
と、最後の息で言います。これに対するハーゲンのセリフは、実に酷薄……。
「ジークフリートの死骸は、わたしが持って帰りますよ。こうなったのも、彼がブリュンヒルデを侮辱したからです。自業自得ですね。ジークフリートが死んで、クリームヒルトが嘆き悲しもうがどうしようが、わたしの知ったことじゃありませんね」
う~ん、まあ、おっしゃる通りなのですが……。死んだ後で、これほど冷淡な評価をされた男も、なかなかいないでしょう!
まとめ
以上です!長々とお疲れさまでした!
まとめてみると、どいつもこいつも、何て身勝手なんでしょうか……。やることなすこと、あまりにも自己中すぎて、救いようがありません。
でも、これを神話の文章で読むと、実に格調高いのが不思議なところ。一度読んでみてね!