アーサー王伝説あらすじ。世界一分かりやすくまとめてみた。

ケルト神話は大きく二つの場面に分けられます。
1.クーフーリンやフィン・マックールがカッコよく活躍する「アルスター、フィアナ神話編」
2.中世騎士物語の代表格「アーサー王伝説編」。これが一番有名で、ファンも多いですよね。
しかし、このアーサー王伝説。欠点は「長すぎ!」ってことです。カッコいい話が多いのですが、とにかく「長すぎ!」「ダレる!」「いらねーエピソードが多い!」なんですよね……。わたしのカンでは、大体三分の一読んでギブアップする人がほとんどかと……。
そこで、このページではそのウザい部分を全カット!アーサー王伝説を究極に短く分かりやすくまとめてみました!アーサー王伝説で困っているすべての人のために、このページがお役に立てれば幸いです。
アーサー王誕生。魔法使いマーリン大活躍
アーサー王のお父さんはユーサー・ペンドラコン王、お母さんはイグレーヌ姫です。ただし、この二人はかなりエロい関係。
イグレーヌ姫は美人だけど人妻だったので、王様のユーサーも手出しできません。そこでユーサー、世界一の魔法使いマーリンに頼み込みます。
「マーリン、手を貸してくれよ。どうしてもあの女を手に入れたいんだよね」
「いいですよ。魔法でイグレーヌの旦那の姿に変えれば、カンタンにベッドに入れますよ」
「よし!これであの女はオレのものだ!」
「王様、その代わり一つ頼みが。イグレーヌはそのうち男の子を生みますから、その子はわたしに下さい」
「いいよ、いいよ。それくらい」
ホントにアーサー王の父親か⁈ってくらい道徳観念に欠けた行動!ユーサーはうまうまと姫とおいしい関係に。そのうち、イグレーヌ姫はアーサーを出産。マーリンは待ってましたとばかりやってきて、「はい、産まれましたね。じゃあ、もらっていきますよ」と連れていっちゃいました。
その後、マーリンが産まれたてアーサーをどうしたかというと、信頼置けるマジメな騎士エクター卿の館にアポなしで訪れ、「これ育ててね」と新生児を丸投げ!アーサーは自分が王子だとは知らずに、エクター卿の息子として育ちました。う~ん、さすが歴史に名を遺した王様、産まれる前から波乱万丈ですね。
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アーサー王の剣。カリバーンをゲット!
産まれた瞬間に息子をとられたユーサー・ペンドラコン王。この王様、女には熱心でしたが、子供には関心の薄い人だったみたいで、その後まったく息子の消息を気にした様子はありません。
やがて時がたって、ユーサーが死んでしまうと、イングランドは「オレが次の王だ!」と争う騎士たちの間でバラバラに。マーリンは騎士たちを教会に集めました。教会の広間には巨大な岩があって、マーリンはその岩に剣を一振りグサリ。そしておごそかに宣言しました。
「見なさい。ここに巨大な岩に刺さった剣、カリバーンがある。この剣を岩から引き抜いたものが次の王だ」
引っこ抜けば大出世で、イングランド王です!みんな気負ってチャレンジしましたが、剣はサッパリ抜けません。
「こんなもん、抜けないよ。あきらめよーぜ」とみんながあきらめたある日。少年アーサーが教会を訪れて、
「あ、こんなところに剣がある。ちょうど兄さん(エクター卿の子で、アーサーと血の繋がりはありません)が剣を忘れたから、これをパクっていこう」
何も知らずに、ひょいっと剣を抜いてしまいます。近くにいたアーサーの育ての親、エクター卿は腰を抜かすほどびっくり!
「アーサー!今まで黙ってましたが、わたしはホントの父親じゃないんです!あなたがイングランド王です!」
このアッサリした偉業によって、アーサーは王になったのでした。
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すぐ割れちゃったカリバーン。二つ目の剣、エクスカリバーをゲット
カリバーンを手に入れたのはいいのですが、その直後、とある通りすがりの騎士とのケンカでカリバーンは真っ二つに……。劇的に手に入れた割に、寿命の短い剣でした……。
剣がなくなって困ったアーサー。マーリンに泣きつくと「まあまあ、大丈夫だから!新しい剣を手に入れればいいでしょ」と慰めて、「こっちに新しいのがあるからついておいで」と、妖精の湖へ出かけます。
するとたどり着いた湖の真ん中から、腕が一本ニョキリと突き出していて、宝剣と鞘とベルトを握っていたのでした。アーサー、この手から剣一式をもらい受けます。この剣がエクスカリバー。ぶっちゃけアーサーより有名な魔剣なのです。
よく、石から引き抜いたのがエクスカリバーみたいに思われてたりしますが、ホントは「石から抜いたのはカリバーン」「湖でゲットしたのがエクスカリバー」です。アーサーは剣を二本持ってたんですね。
エクスカリバーは最高級の魔法の剣で、この剣でアーサーはあらゆる戦いを勝ち抜いていきます。また、この鞘は特別製で、持ってるだけでどんなけがをしても血が流れないという優れものなのでした。
しかし、ずっと後になってアーサーは魔女モルガンに剣と鞘を盗まれ、窮地に陥ります。
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アーサー、エクスカリバーで戦いまくる!
さて、アーサーはまだ少年と言っていいほど若かったし、「剣を引っこ抜いてイキナリ王になった人」だったので、ブリテン中で好き勝手やってた王様たちが黙ってるはずがありません!いくらマーリンが
「アーサーはユーサー・ペンドラゴン王の息子なの!イングランド全部を治める王様の資格があるんだから!」
と説得したところで、馬の耳に念仏です。
「ふざけんな、こわっぱ!てめーが王なもんか!」
と、何十人もの王様たちが入れ代わり立ち代わり、アーサーに襲い掛かってきます!
それからというもの、アーサーは戦争しまくり!毎日、毎日、戦いの連続です!養父エクター卿の親族や、自分の味方になってくれた騎士たちを集め、どんどん反対派の王たちをなぎ倒していきます。
さらに、イングランドには異民族サクソン人が侵入してきていたので、この勢力とも戦争。サクソン人たちをイングランドから追っ払うために、ドーバー海峡を渡って、ガリア(その後のフランス)まで戦いに行きます。
この時のアーサー王は
「宝石をちりばめた黄金の鎧を身に着け、黄金の龍の付いた兜をかぶり、聖母マリアの肖像を描いた盾をとった。名剣エクスカリバーを腰につけ、右手に名槍ロンを持ち」
という出で立ち!きらびやかですね~。
この名槍ロン、実はこのサクソン人との戦い以外では一度も登場しません(^^;)なので結構影が薄いのですが、「一撃で五百人を吹っ飛ばす」という爆発的な威力があるんですよ!
サクソン人との戦いは大変激しく、アーサー王は「馬の拍車から羽飾りまで、朝日のように真っ赤になってエクスカリバーを振りかざした」といいます。ちょっと聞くとカッコいいですが、リアルに考えると恐ろしいことです!
伝説では、サクソン人との戦いに勝利したアーサー王は、勝ちに乗じて大ローマ帝国とも戦争。ローマ皇帝をぶっ殺し、ローマ法王から冠を戴いてローマ皇帝になります。イギリスからエジプトまでの大帝国を築くのですが——でも首都はイングランドのキャメロット、となってるのですが……ここまでくると、いくら伝説でも嘘っぽいですね(-_-;)
とにかく!アーサー王は反対派と戦ってサクソン人を追っ払い、イングランド統一を成し遂げたのでした!
アーサー、自分の姉に手を出しちゃう
アーサー王といえば「円卓の騎士」!
イングランドを統一したアーサーは、宮廷をキャメロットに置きました。このキャメロット、ぶっちゃけどこにあったのか分からないし、そもそも実在したかどうかも分かりませんが、「多分、イギリスの南部でロンドンの近く?」と言われてます。国の名前はログレス王国です。
キャメロットは町の片側に川が流れているので通行に便利。もう一方には森や草原が広がって、とっても住みよいところ。どんどん人口も増えていって、順風満帆に思えたのですが……。ここでアーサーは人生最大の失敗をします。
この頃、アーサーはモルゴースという美人といい仲になり、子供まで産ませたのですが……何とこの女、生き別れの姉だったのです!
アーサーのお母さんはイグレーヌ姫で、人妻でしたよね?アーサーのお父さんユーサーは、イグレーヌに夜這いをかけてアーサーを産ませましたが、その前にイグレーヌは正式な旦那との間に、三人も子供がいたんです!アーサーが子供を産ませた女は、このうちの一人だったのでした!
アーサーは産まれてすぐに里子に出されちゃったから全然知らなかったわけですが……いくら父親が違うからって、お姉さんに手を出したのはヤバいです。しかも産まれたのは男の子だったのでさらにサイアク……。
アーサーはこの男の子にモルドレッドと名付けて、ちゃんと育てましたが、因果応報というのでしょうか。モルドレッドは超腹黒の騎士に育って、将来アーサーにとって災いの種になります。
女で失敗してもめげない!グウィネヴィアと結婚
知らなかったとはいえ、お姉さんに手を出したら相当トラウマになりそうなんですが……。そこは天下のアーサー王、常人とはメンタルの強さが格段に違います!
「そんなら別の姫を王妃に迎える!」
と、戦争中にたまたま見かけた超美人の姫、グウィネヴィアを后に迎えることにしました。
「あの女と結婚する!」と相談されたマーリンは
「やめたほうがいいですよ。あの女のためにあなたは不幸になるよ。美人はあの女だけじゃないんだから、よく考えたら?」(暗に浮気されるよって言ってる)
と、必死の説得。でも、グウィネヴィアの美貌に目がくらんでるアーサーの意志は固い!結局結婚することに。
一方、娘がイングランド王に玉の輿となったグウィネヴィアのお父さんは超有頂天!
「娘をもらってくれてありがとう!お礼に家宝の円卓をプレゼントします!」
浮かれまくって、娘と一緒にバカでかい円卓を送り届けました。この円卓こそ、アーサー王伝説にその名も高い「円卓の騎士」の円卓です。
ただし!この時、マーリンが「あなたは不幸になるよ」と予言した通り、アーサー王に滅亡の影が近づいていました。アーサーがグウィネヴィアを迎えに行く時に連れていたお供の中に、ランスロットという若い騎士がいたのですが、何とグウィネヴィアがこのランスロットに一目ぼれ。しかもランスロットの方もグウィネヴィアに運命の恋。
結婚式を挙げる前から、アーサー王、王妃グウィネヴィア、騎士ランスロットは三角関係に陥ってしまったのでした!
集まれ!円卓の騎士!
さて、グウィネヴィアが嫁入り道具に持ってきた円卓。
この円卓は中華料理店にあるようなタダの円卓と訳が違います!魔力が宿ってるスーパー円卓なのです!エラく巨大で、何百人も座れる上、一つ一つの席には、そこに座るべき騎士の名前が自動的に金文字で浮き上がるという、スグレモノ。(この席に座れる人は、大昔から運命で決まってるという設定)
この円卓を手に入れたアーサー王は優れた騎士をどんどん集めて「円卓の騎士」に加えます。そして、その騎士たちがイングランド中に出かけていって様々な冒険を繰り広げていきます!
実は「アーサー王伝説」、アーサー自身の伝説はほとんどありません。ほとんどはこの円卓の騎士たちの冒険譚を集めたものなのです。アーサー王伝説のシリーズ本を買うと、「アーサーが出てくる巻」は最初と最後のちょこっとだけ。あとはオール円卓の騎士物語という、「アーサー王って……」というお話なんです。
では、気になる円卓の騎士レギュラーメンバーたちを紹介しましょう!
ランスロット
アーサー王の第一の騎士、ランスロット!
彼は「騎士の中の華」と呼ばれる、まさに最高の騎士です。腕前は円卓の騎士の中で最強。性格は大胆で勇気があり、困っているものや弱いものがいるとすぐに助けに行きます。
育ての親は「湖の姫」ヴィヴィアン(湖の妖精)。彼女の湖の城で育ち、一人前の騎士になりました。このことからランスロットは「湖の騎士」と呼ばれます。
成長し、アーサー王に仕えることになったランスロット。しかし、ここで最大の悲劇が……。アーサー王の妃グウィネヴィアが、ランスロットにあらぬ思いをかけてしまいます!
激情型のグウィネヴィア。夫がある身でありながら、部下の騎士にどんどんハマっていき、
「わたしがアーサー王の元に嫁いできた時は、まだ若くて世間知らずだっただけよ!わたしがこんなにあなたを愛してるのに、あなたはわたしを愛してないのね!」
と、ランスロットを責め立てまくり、追い詰めまくり、嫉妬の嵐!ランスロットはアーサー王への忠誠とグウィネヴィアへの愛で板挟み状態。「全部オレが悪いんだあ!」と、自分を責めて、一時ノイローゼから発狂状態に陥ったことまで。
数々の戦いで手柄を立てるランスロット。アーサー王のおぼえもめでたく、多くの騎士から慕われますが、このグウィネヴィアの横恋慕によって破滅します。二人の関係がバレて、心ならずもアーサー王と戦うことに。この戦いで、アーサー王も破滅することになります。
ガウェイン
ガウェインはアーサー王の姉の息子。つまりアーサー王の甥にあたります。ガウェインは三人兄弟の一番上なんですが、下の二人は殺されるだけの役なので、どうでもいいです。
アーサー王は王妃グウィネヴィアとの間に子供がいなかったので、よっぽどこの甥が可愛かったらしく、円卓に座るときは自分のすぐ横に座らせ、お祭りの時も傍らから離さなかったそうです。
その実力は、ランスロットと並んで円卓の騎士最強の腕前!でもこの二人、性格がかなり違います。ランスロットはかなりアクションが派手で俗っぽく、ごちそうもお酒も女も大好き!(だから王妃と不倫しちゃうんですね)シャバは超楽しいぜ!って感じの騎士なんですが、ガウェインは物静かで控えめ。騎士っていうより坊さんみたいな、とってもピュアな性格。清い精神の持ち主です。
普通、剣の実力がおんなじくらいで最強だったら、二人とも争って大変なことになっちゃいますが、ガウェインがこういう控えめで、争いを好まない人だったので、ガウェインとランスロットの関係はとてもうまくいきました。二人は親友同士になってとっても仲良し!のちに起こった、円卓の騎士最大の冒険、聖杯探求でも二人は一緒に旅に出ます。
長年兄弟みたいに仲の良かった二人でしたが、最後はランスロットがグウィネヴィアと不倫したせいで、涙ながらに敵味方に分かれてしまいます……。
トリスタン
トリスタンは「円卓の騎士」の中でも、かなり異色の存在。もともとアーサー王の騎士ではなくて、アーサー王に仕えるようになる前の物語が有名なのです。でも騎士としての実力はバッチリ!ランスロットに次ぐエリート君です。(でも映画キングアーサーでは果物の皮をむいてるだけの人)
アーサー王伝説でのトリスタン登場シーンは実に劇的!間違いなく「アーサー王伝説感動シーン、ベスト5」に入るでしょう!
アーサー王の円卓には一つ、特別な席がありました。「危険な席」といい、「ここに座る人はただ一人、世界で最も心正しく、気高い騎士でなければならない」と決まっていて、その定められた人以外の者が腰を下ろしたら、イキナリ人体発火したうえ、一瞬で大地に飲み込まれるという、危険極まりない席なのです!(実際これで一名犠牲に……)
この「危険な席」、未だに座るべき人が現れないので空席のまんまなのですが、この「危険な席」ふくむ左右二つずつの席、合計五つの席は、アーサー王が治めるログレス王国の中で最も優れた五人の騎士たちのものと決まっていました。
「危険な席」の右側二席は、すでにランスロットとガウェインが座っています。でも、まだ左側二つの席は空いたままでした。アーサー王はこのことがずっと気にかかっていました。
そんなある日!ふらりとアーサー王の宮廷に一人の吟遊詩人が訪れ、アーサー王から
「ほう、そなたはコーンウォールから来たのか。かの地にはトリスタンという優れた騎士がいると聞く。一つ、その騎士のことを語ってくれまいか」
と注文されます。そこで吟遊詩人が素晴らしい歌声で語ったことには……。
トリスタンはコーンウォールのマルク王に仕える騎士でした。しかし、とんでもない悲劇が!あるとき、トリスタンはマルク王と結婚が決まったイゾルデ姫を船で迎えに行ったのですが、その船の中で、姫とトリスタンはそれと知らず、愛の秘薬入りのワインを飲み干してしまったのです!
この愛の秘薬、マルク王と姫が生涯深い愛で結ばれて幸せになれるように、結婚初夜に二人に飲ませるつもりで母親が姫の召使に持たせたものだったのですが、予定が外れて、姫とトリスタンは激しい不倫の恋に苦しむように!
真面目な性格の二人は死ぬほどの苦しみを味わいますが、薬の効き目は絶対!二人の関係はついに王に知られることになり、トリスタンは追放。以来当てもなく旅をしていますが、身を焼く恋からは逃げられません……。
ここまで吟遊詩人が話したところで、アーサーは「なぜ、二人の秘密をそんなに詳しく知っているのかね?」
「はい。わたくしがトリスタンですから」
「円卓に迎えられるべき気高い騎士よ。そこはあなたの席だ」
と、こういういきさつで、トリスタンは円卓の騎士となり、「危険な席」の栄光の左側に!
しかし、どんな栄光も名誉も、トリスタンの恋の傷を癒すことはできません。イゾルデがいなくては生きるかいもなく、トリスタンは最後に病気になって死んでしまうのです(T_T)
パーシヴァル
パーシヴァルの出生はいまいちよく分かっていませんが、一説によるとペリノア王の息子で、王の死後母親が森の中でパーシヴァルを育てたとされています。
成長して騎士になったパーシヴァルはアーサー王に仕えることに。彼の最大の冒険は「聖杯探求の旅」です。
聖杯探求については後で詳解説しますが、この探求の旅に成功したのがパーシヴァルとあと数人。彼は騎士として強かったかどうかはかなり怪しく、ひたすら「素直」で「ピュア」な人だったと推測されます。
パーシヴァルはとにかく強運の持ち主で、旅の途中に暴漢に襲われても、どこからともなく助っ人が現れて救済。悪魔に勧誘されて、しかも騙されるという危機に陥っても、偶然十字を切ったことで難なくスルー。(しかも二回も)
こういうラッキーが重なり、無事に聖杯をゲット。しかし、ここで一生分の不運が襲い掛かります。一緒に旅をした親友ガラハットが、神様の意志で突然昇天。パーシヴァルはガラハッドの最期を伝えるため、とりあえずはアーサー王の元へ帰りますが、悲しみのあまり長生きできませんでした。
ガラハット
ガラハットはランスロットの息子として産まれました。その産まれは少々複雑。ランスロットの本命は王妃グウィネヴィアなのですが、ランスロットと一晩だけでも寝たいとヤバいくらい熱望してる娘がいて、あろうことかランスロットに催眠術を!そして頭がレロレロになっているランスロットのベッドに入って、「あなた!わたしグウィネヴィアよ!」と騙して襲ったのです!
当然ですがランスロットは「もうこんなヤベー女イヤだ」と、二度とこの娘のところに来ませんでした……。
ところが、このたった一晩で、娘は見事に大当たり!すごい的中率で、ガラハッドを産んだのでした!
こんなサイアクないきさつがあるのですが、ガラハット自身は実に美しくて心のきれいな騎士でした。彼こそは「危険な席」に座るべく定められた運命の騎士!彼は聖杯を見つけ出すべく神様に選ばれた人物で、超ラッキーマンのパーシヴァルと一緒に探しに出かけます。
いろいろあって、ついに聖杯探しに成功。めでたしめでたしかと思ったのですが、聖杯を見つけてお祈りをささげたとたん、ピカッとまぶしい光が差し込み、天使が出現。
「お前を迎えに来たよ、ガラハット」
と天使たちは恐ろしいことをこともなげに言いつつ、訳もなく突然、ガラハットは昇天させられてしまったのでした。
さよならマーリン。君を忘れない……
アーサー王の最大のパートナーとも言うべき、魔法使いマーリン。この人は案外馬鹿馬鹿しい退場をします。
マーリンは大変優れた魔法使いで、何でもできる男でしたが、女性には弱かったようです。美人の妖精ヴィヴィアン(ランスロットを育てた妖精)にベタぼれし、何でもいいなりになってしまいます。マーリン、アーサー王がグウィネヴィアにハマった時には「あの女はやめた方がいいよ」とアドバイスしてたのに……。自分のことになるとどうにもならないんですね。
ヴィヴィアンにはめられて、言われるままに魔術を教えてしまい、ある晩、寝てる隙に「霞の塔」という魔法をかけられてしまいます。魔法使いのくせに魔法陣に閉じこめられ、永遠に逃げ出せなくなってしまったのでした。
いつの世も、頭のいい美女は怖いですね。
聖杯を探せ!でもガラハッド死んじゃう!
アーサー王の宮殿キャメロットには次々に素晴らしい騎士が集まり、ついに絶頂期を迎えます。
ある日、アーサー王が円卓の騎士と座って満足げに笑っていたら、突如、円卓の上に一条の光が!そしてどこからともなく光り輝く聖杯が出現して、円卓の上に空中浮遊。でも次の瞬間、聖杯は忽然と姿を消してしまいました。すると騎士たちは全員、「聖杯を探しに行きます!」と王に宣言。
ここがキリスト教になじみのない日本人にはよく分からないところですが、つまりこういうことです。
・聖杯は世界で一番すごいアイテム。
・この聖杯がある国は超繁栄する。
・でも、聖杯はずっと行方不明だった。
・ここに奇跡が!円卓の上に出現!
・ということは、この国のどこかにあるかも。
・よし、捜しに行くぜ!
まあ、だいたいこんな感じです。この「聖杯探求の旅」に、円卓の騎士たち全員が参加!その中で、ついに聖杯にたどり着いたのはガラハッド、ボールズ、パーシヴァルの三人。
三人はピュアな精神と神のご加護のラッキーですべて乗り越え、カーボネック城という魔法の城で聖杯をゲット!さらに、聖杯を何千年も守る使命を負わされてた可哀想すぎる司祭とか、呪いをかけられてたカーボネック城を開放することに成功。
しかし、ここでガラハッドは突然現れた天使によって「お前の使命は終わったよ」と天国へ昇天。聖杯はガラハットの命とともにお空へ吸い込まれてしまいました。
魔女モルガンの暗躍。エクスカリバー盗難事件
アーサー王には、何人か兄弟がいますが、そのうちの一人が強大な力を持つ魔女、モルガン・ル・フェイでした。彼女はアーサーの異母姉にあたります。
彼女はランスロットを罠にはめたり、数いちどはアーサーの命をとろうとしたりと、数々の悪事を働きますが、その中で最も大きなダメージとなったのが「エクスカリバー盗難事件」です!
ある晩、ぐっすり眠っているアーサー王の寝室に忍び込んだモルガン。彼女はやすやすとエクスカリバーの鞘を盗み出します。この鞘は、実は剣そのものよりもずっと優れもので、この鞘を身に着けていると怪我を負わないのです。
この鞘を失ったことで、アーサー王は不死の力を失い、その後大怪我を負って破滅することになったのでした。
道ならぬ恋……。ランスロットとグウィネヴィア。裏切られたアーサー王
いよいよアーサー王の破滅の時が訪れます!その原因は、あろうことか奥さんの浮気(しかも嫁入り当初から裏切られてる……)。
アーサー王の妃グウィネヴィアと、円卓の騎士の一人ランスロットは、かなり長きにわたって不倫を続けていました。アーサー王は薄々感づいていたようですが、ランスロットを愛していたので何も言いませんでした。
こうしたアーサー王の態度に、図に乗ったグウィネヴィア。根がサイテーな女なので、どんどん行動がエスカレート!
ランスロットが馬上試合で優勝すると、真横にアーサー王がいるのに、挨拶に来たランスロットに「今夜来てちょうだい」と耳打ちしたり、宮廷内にほかの騎士たちがウヨウヨしてるのに中庭で逢引き。しかも、ランスロットが「もうヤベー、バレそう」と思って距離を置こうとすると、
「わたしを愛してないのね!」
と、ヒステリーを起こすし、ランスロットが騎士としてピンチの貴婦人を救おうとすると
「わたしを置いていくつもりなのね!」
と嘆く始末。ぶっちゃけた話、ランスロットがどうしてグウィネヴィアを好きだったのか謎です。
さて、こんな状態で不倫がばれない方がどうかしてます!ある日、騎士モルドレッド(アーサー王が姉との間に作っちゃった息子)が、ランスロットとグヴィネヴィアのあいびきを目撃。
実はモルドレッド、以前からある野心を持ってました。
アーサー王は魔力によって守られてるので、信じられないくらいの御長寿。まったく死ぬ気配がありません。モルドレッドはアーサー王の息子なので、「跡を継ぐのは自分だ」と思ってますが……このままじゃアーサーの方が自分より長生きするかも?
そこで、モルドレッドはついにクーデターを起こすことを決意!まずは王妃の不倫をばらして、アーサーとランスロットを戦わせようと画策。親戚の騎士アグラウェインと一緒に、アーサー王に告げ口します。こうして、ランスロットとグヴィネヴィアの罪は一気に明るみに出てしまったのです。
アーサー王の最期
モルドレッドによって追い詰められたランスロット、アグラウェインを始めとする何人かの騎士を殺害して、グウィネヴィアを連れてフランスに逃亡。アーサー王もランスロット討伐のためにフランスへ追っていきます。
しかし!ここでアーサーはモルドレッドの罠にはまってしまいました!アーサー王がいない間に、モルドレッドはイングランドを乗っ取ってしまったのです。王があせって軍を引き返すと、モルドレッドはこれを迎え撃ち、アーサー王は重傷を負います。
もうエクスカリバーの鞘はありません。鞘さえあれば、けがを負っても血を流すことはなかったのですが、今はどんどん血が流れて弱っていくばかりです。
心にも体にも傷を負ったアーサー。「妖精の国アヴァロンで傷を治してくる」と言い残し、その昔エクスカリバーを手に入れた湖に行き、小舟に乗って妖精たちの国へ旅立っていったのです。
グウィネヴィアと浮気していたランスロットは、アーサーの危機を知って助けに参じたのですが、時はもう遅し。すでにアーサーはアヴァロンへ行ってしまった後でした。激しく後悔したランスロットは、悲しみに打ちひしがれて死んでしまったのです。
まとめ
長々とここまで読んでくださってありがとうございました(^^♪
アーサー王って、高貴で偉大な王というイメージが強いですが、最後はかなり可哀想ですね。
イギリスでは今も、「アーサーはいつか帰ってくる」と言われているそうです。もし帰ってきたら、こんどこそ幸福な人生を歩んでほしいですね!
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