【ケルト神話】クーフーリンは赤枝の騎士団のリーダー!気になる生涯まとめ

2025年4月28日

ケルト神話の大英雄クーフーリン!ケルト人気の根強いヨーロッパでは、子供でも知っている人気者です。

日本でもむか~し、山岸涼子の漫画に出てきましたよ。

↓この表紙の人です。

おお……!何と言いますか、性を超越した二枚目ですね。どんな活躍をしたのか気になるところ……。

クーフーリンはケルト神話初期の、騎士団のリーダー。悪と戦うカッコいい騎士なんですが、でもケルト神話になじみのない日本では、あまり知られていませんよね。このページでは、クーフーリンの生涯をざっくりまとめてお伝えします!これを読めば、あなたもケルト通を名乗れること間違いなしです(^^)

クーフーリン誕生!でもいきなり死んじゃう。

昔、アイルランドが5つの国に分かれていたころ。アルスターの土地はコノール王が治めていました。このコノール王の妹がデヒテラ。美人です。ある時、王様と姫は「妖精の丘」と呼ばれる丘に出かけました。

そこには一軒の家があって、王と姫は一晩そこに泊まりました。ところがその晩、事件が!この家の奥さんは身重だったんですが、「わあ~っ!お産が始まる!」と、ヘルプを求めてきたのです。

デヒテラ姫は親切だったので「大丈夫よ!」とお産の手伝い。無事、男の子が生まれてホッと一息。

ところが次の朝、またしても怪事件が!王と姫が目を覚ましたら、家も夫婦も、煙のように消えてしまっていたのです!ギャンギャン泣いてる赤ん坊だけが姫の手元に残って、実の親はまさかの夜逃げ!(しかも家ごと)

捨ててくわけにもいかないので、デヒテラは男の子を自分の子として可愛がります。しかし、不幸なことにしばらくして男の子は死んじゃったのでした。

死んじゃったクーフーリン。でもすぐに復活!

子供に死なれた姫は悲しみ、一晩中泣き明かしました。泣きまくった姫はやがて「あー、のど渇いた」と、一杯の水を飲みました。

が、このとき、小さな虫がコップの中に入っていたんですね。しかも、生きたまんま。このことに姫は全く気づきませんでした。で、姫は知らないうちに虫を踊り食い(踊り飲み?)してしまったんです。

その夜、姫は夢を見ます。太陽の神ルーが、姫に語りかけました。

「デヒテラよ。そなたが可愛がっていた子供は、わたしの子だ。今、子供はお前の子宮の中にいる。やがて月満ちてお前は子供を産むだろう。産まれたら、セタンタと名付け、育てよ」

こうして生まれたのが、太陽神の子セタンタ彼は成長し、クーフーリンと呼ばれることになります。なんだか聖母マリアの処女懐胎みたいな話ですが、虫が絡んでるのがキリスト教と違うところ。姫もまさか、虫で妊娠するとは思ってもみなかったことでしょう……。

さて、セタンタが生まれたとき、ドルイド僧がやってきて予言を残しました。

「この子はやがて、人々の称賛を得るだろう。あらゆる戦士、あらゆる王、あらゆる聖者が、この子の行った良いことを語り継ぐだろう。この子はこの世の悪と戦い、人の起こす破壊や争いを解決に導くことだろう」

こうして一回死んで生まれ変わったクーフーリン。ケルト神話では「一度死んだけどよみがえった」「一度生まれたけれど、生まれる場所を間違えたので、正しいところに生まれ変わった」というエピソードはよくあるパターンです。

「生まれ変わった」というのは、「だからこそ、この人は特別なのだ」という証だったんですね。

クーフーリンと名付けられる

セタンタが少年になったころ、姫のお兄さんコノール王は、クランという金持ちの家で開かれる宴に出かけました。

王は「お前も一緒に楽しもうぜ!」とセタンタをお誘い。でもセタンタはちょうど友達とボール遊びしてたので、「試合が終わり次第、すぐに参ります」と答えました。

ところでこのパーティーの主催者、クラン家。庭に超狂暴な番犬を飼っていました。

この番犬、犬なのに大きさは子牛レベル。パワフルだけど頭は悪かったみたいで、お客とドロボーの区別がつかなくて、近づくものは片っぱしからかみ殺してしまうというヤベーやつです。

さて、このクラン家の宴で楽しんでたコノール王。歌って踊って、お酒が回ってイイ感じになった頃、突然庭から、犬のけたたましい叫び声が聞こえてきました。

「アッ!ヤバい!セタンタが後から来るのを忘れてた!もしや、犬に食べられちゃったのでは?」

と、真っ青になって外に飛び出しました。すると、そこには元気いっぱいのセタンタ。足元にはズタボロになった犬の死骸が転がっていたのです。

「番犬を殺してしまって申し訳ない。この犬の子を、わたしが預かって立派に育てましょう。犬が育つまでは、わたしが犬の代わりにこの家の番をつとめましょう」

と、セタンタはクランに謝罪。コノール王をはじめ、人々は「おお!まだ子供なのに、あの犬を殺すなんて超人だぜ!」と感激。そして以後、セタンタはクーフーリン(クランの猛犬)と呼ばれるようになったのです。(つまりクランの犬男くんって意味ですね)

クーフーリン、影の国で武者修行。赤枝の騎士団のリーダーになる

立派な青年に成長したクーフーリンは、一人前の戦士となるために「影の国」というこの世の果ての土地へ旅立ちます。そこには女戦士スカサハの城があり、彼女の弟子となれば、武術と魔術を学ぶことができるのです。つまり武者修行ですね。

いくつもの危機を乗り越え、クーフーリンは女戦士の城へ出発!城の周りには、首の刺さった柵がいくつもズラリ。全部、スカサハの弟子になろうとして失敗した若者たちの首でした。実は古代ケルトには首狩りの習慣があり、戦いの勝者は負けた者の首を取り、家の前に飾っていたというから恐ろしいですね……。

クーフーリンが城へ足を運ぶと、無数の怪物たちが現れて、クーフーリンに突撃!しかし、クーフーリンはビビりません!バッサバッサと怪物を斬り倒し、どうどうとスカサハの元へ。この若者の勇気に驚いたスカサハは、ついに弟子入りを許可したのでした。

それから数年。クーフーリンは武術と魔術の修行に励み、すべての技を習得。スカサハは、かわいい弟子に「免許皆伝じゃ!最後にこれを授ける!」と、魔法の槍ゲイ・ボルグを彼に渡しました。これは投げると槍先から無数の矢が放たれるという不思議な武器で、その後クーフーリンの愛用の武器になったのでした。

立派な英雄となったクーフーリン。帰国するとコノール王の護衛を務める「赤枝の騎士団」のリーダーとして迎えられます。それからのクーフーリンは、騎士団を率いての数々の戦いに勝ち抜いていくことになるのです!

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赤枝の騎士団と魔女メイヴ。戦いの幕開け

赤枝の騎士団のリーダーとなったクーフーリン。美しい妻をもらって幸福に暮らしていましたが、平和は長続きしません。あるとき、アルスターの地に原因不明の疫病が流行り出しました。クーフーリンの部下たちも次々に倒れ、クーフーリンは心を痛めます。

弱り目にたたり目。よりにもよってこんな時に、隣国の女王メイヴがアルスターに攻め込んできます。なんでいきなり攻め込んできたかというと、アルスターにいる美しい一頭の牛が欲しかったから」だそうで。……現代人の感覚からすると、「なんで牛一頭のために……」と思ってしまいますが、古代人の感覚では真剣に欲しいので仕方ありません。

メイヴ女王は、7人の恐ろしい息子たちの母であり、強力な魔女でもありました。その姿は、波打つ黄金の蓬髪。金の大きなブローチで緑のマントを留め、戦車に乗って戦場をかけるという、ジャンヌダルクのようないでたち。魔女メイヴは、自分の軍勢と息子たちの軍勢、その上巨人たちまで引き連れて、クーフーリンの赤枝の騎士団目がけて進軍します!

クーフーリンは疫病による劣勢の中、知恵を絞って戦うことに。赤枝の騎士団は数が少なくなってますから、ゲリラ戦を繰り返すことに決定。騎士たちは物陰に隠れ、メイヴ軍が来るのを待って、投石機で無数の岩を降らせたのです。

空から降ってくる岩につぶされて、メイヴ軍は1日に100人もの死者を出しました。クーフーリン、この時まだ17歳だったというから驚き!メイヴはこの賢く雄々しい若者に心底恐れおののき、また強く心を惹かれました。

女たちが誘惑しまくり。でも突っぱねるクーフーリン。

クーフーリンの強さに目を付けたメイヴ、何とか自分に寝返らせたいと願い、様々な誘いをかけます。黄金や領土、およそあらゆるものをエサにリクルートの嵐!しかし、どんな条件を出されても、クーフーリンはガン無視。ことごとく誘惑をはねつけて、コノール王への忠誠を守り通します。

クーフーリンはケルト神話の中で、ピカイチの強さ、賢さ、魔術の巧みさを持っていますが、彼の最大の特徴は、この潔癖なまでの騎士道精神です!どんなに誘惑されても、絶対に悪に靡きません。どんなに忠実な騎士でも、美女に誘われると靡くことがありますが、クーフーリンはどんな女の誘いも突っぱねる、鉄の心臓の持ち主なのです(まだ十代なのに)。

メイヴが最後に出した条件、「1日に、両軍1人だけの戦士を出して戦う」という一騎打ちの提案のみ、クーフーリンは承諾します。そして、その戦いはすべてクーフーリンの勝利となるのでした。この勝負は全部クーフーリンが出たし、メイヴ軍の中に、クーフーリンにかなう戦士がいなかったからですね。

さて、クーフーリンに夢中になった女は、メイヴだけではありません。女神までが彼に心惹かれます。

死と破壊の女神モリグー。彼女はクーフーリンの戦いぶりに心奪われ、彼に「力を貸そう」と言い寄ります。しかし根が潔癖なクーフーリン、女神の誘惑をきっぱりと断るのでした(相手は死神なのに、怖くなかったんでしょうか……)。

可愛さ余って憎さ100倍。女神の愛は憎悪に変わり、様々な手を使ってクーフーリンの妨害活動に打って出ます。

・牛に変身してクーフーリンに突進
・ウナギに変身、足に巻き付く。
・狼に変身、襲い掛かる。

と、のべつ幕無しに起こる、ヤバすぎる戦術!

最後にモリグーは病気の老婆に変身して、クーフーリンにからみます。するとクーフーリン、これまでの態度が一変。心優しいので、汚い病気の老婆を決して見捨てず、手厚く看護するのでした。この優しさがモリグーの心臓にドストライク古今東西、人間、人外問わず、女性は心優しい男性にヨワイんですね。以後、見返りを求めずクーフーリンの味方になってくれたのでした。

……それにしてもクーフーリン、クセのありすぎる女にばっかり持てたみたいですね。

戦いの果てに……。立ったまま死んだクーフーリン

魔女メイヴとの戦いは7年に及びました(7年もたったら、メイヴが欲しかった牛は死んじゃったのでは?)。メイヴの予想とは裏腹に、クーフーリンの軍勢はメイヴを追い詰めていきます。そしてついに、メイヴを生け捕りにしたのです!

メイヴは「もはやこれまで」と覚悟を決めますが、クーフーリンは彼女を逃がします。

「女性を殺すわけにはいかない。いかなる女性も尊ばねばならない」

と、持ち前の騎士の精神を崩さなかったのです。

しかし、この気高い精神が、彼の命取りとなります。邪悪な心を持つメイヴに、彼のやさしさは通用しなかったのです。一度生け捕りにされた屈辱だけで凝り固まったメイヴは、クーフーリンに恨みを持つ男たちを集め、蛇のように執念深く、クーフーリン暗殺をたくらみます。そしてあるとき、ひねくれた一本の槍が、戦車に乗るクーフーリンの脇腹をグサッと貫いてしまったのです!

はらわたが戦車の中に飛び散り、血がとめどなく流れました。クーフーリンは死を覚悟しましたが、この後のクーフーリンの行動がかなり衝撃!

何とクーフーリン、戦車の中にボタボタと落っこちたはらわたを一つ残らずかき集め、それをかかえたまま、テクテクと湖まで歩いていきました。それからはらわたを洗濯物みたいにザブザブと洗い、丁寧に腹に戻したのです!

はらわたを残らず戻したクーフーリン、「私は立ったまま死にたい」と言って、もたれかかるのに適当な場所を探しました。すると手ごろな岩があったので、ロープを用意すると、自分で体を岩にしっかりと固定。それから高らかに笑い、笑いながら息を引き取ったのです。

まとめ

お疲れ様でした!

ケルト神話にはいろいろな英雄が登場しますが、クーフーリンの魅力は何といっても「どんな女の誘惑にも靡かない!」というところでしょうか。この潔癖な性格、マンガの「妖精王」にそのまま描かれていますよ。かなり名作。興味あったら読んでね。

↓他にもいろいろ本を紹介してるページもあるので、詳しく知りたい方はこちら。

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