オデュッセウスは地中海一の冒険者!知恵と根性の英雄の生涯
オデュッセウスは、トロイア戦争でアキレウスとともに手柄を立てた二大英雄の一人ですね。
でも、実はその後の人生の方がはるかに苦難に満ち、大冒険に次ぐ大冒険だったってご存知ですか。
今回は、オデュッセウスの人生をざっくりと紹介します!
トロイア戦争でのオデュッセウス
オデュッセウスはまず、トロイア戦争で活躍します。ここでは戦争中の彼の人生を紹介します。
オデュッセウス、ヘレネに求婚する
オデュッセウスはイタカという小さな島の王です。貧乏な島で、オデュッセウス自身、全然財力はありませんでした。が、頭が最高にキレる男でした!
そんなオデュッセウス、世界一の美女ヘレネに憧れて求婚することに。……でも、ギリシャ中の英雄がライバル。みんなプレゼントの山を抱えてプロポーズしていました。
「俺はプレゼントなんて用意する金はないぞ……。ここは何とか知恵を使って近づかないと」
と考えたオデュッセウスは、ヘレネの父に接近します。
「求婚者が多すぎて、一人に決めたら戦争が起こりそうでお困りでしょう。わたしにいいアイディアがあります。みんなで取り決めを行うのです。誰がヘレネの夫になっても、ヘレネは全員のもの。ヘレネに危機が訪れたら、みんなで戦うこと。こう決めておけば争いは起こりません!」
立て板に水の弁論で、うまくヘレネの父を丸め込んだオデュッセウス!「おお!すごい!さすが知恵者のオデュッセウスだ!」と、そこにいた誰もが感心してくれましたが……。結局、ヘレネが選んだのはスパルタ王メネラオス。オデュッセウスは当てが外れて、
「しょうがないや。二番目候補のペネロペイアと結婚しよう……」
と、すごすごと引き下がったのでした。
バカのふりをしたオデュッセウス
「ヘレネに危機が訪れたら、みんなで戦う」という決まりを作ってしまったオデュッセウス……。すっかり忘れて幸せな結婚生活を送っていた時に、まさかのヘレネ誘拐事件!トロイアの王子パリスが、ヘレネをさらって行ったのです。
次々にメネラオスの元に集まる、もと求婚者たち。そして、言い出しっぺのオデュッセウスのところにも当然、「参戦してください」の迎えが来ます。
「ああ、あんなこと言わなけりゃよかった……。もうヘレネなんてどうでもいいし、子供が生まれたばっかりなのに、トロイアなんて訳の分からん外国に行きたくないなあ」
と、オデュッセウスは実に身勝手な嫌がりぶり。まさに「契約は計画的に」といった感じです。そしてここでもまた、「断るために、何かはかりごとを考えなければ!」と、知恵を絞ってピンチを逃れようとします。
お使いのパラメデスがやってくると、オデュッセウスはバカになったフリをして、「こんな状態だから戦争に行かれません」とアピール。ヘンな歌を歌いながら畑に塩をまき、それをザクザクと鋤(すき)で耕して見せたのです。しかしパラメデスも、こんなウソには騙されません。オデュッセウスの息子を鋤の前に放り出し、オデュッセウスが慌てて鋤を止めたのを見て、
「やっぱり演技だったんだな。さあ、約束通り参戦しろ!」
こうして、オデュッセウスはトロイアへ行くことになったのです。
オデュッセウスはこのことを深く恨んで、パラメデスをその後罠にはめて殺害してしまいます。偽のスパイを仕立てて、パラメデスがトロイア側に寝返ったという偽の書状を作成。さらにパラメデスのテントに大量の黄金を隠しておいて、「やっぱり、黄金を貰ってパラメデスはトロイアに寝返ったんだ」とみんなに思わせたのです。このせいで、パラメデスは死刑にされてしまいました。
トロイアの木馬
オデュッセウスと言えば、やっぱりこれ!「トロイアの木馬」大作戦でしょう!
トロイア戦争は十年も続いた大戦争。十年も続けば、もうみんな飽き飽きしてしまいます。そこで、オデュッセウスが奇抜な作戦を考案。以下、その作戦の内容を……
- 巨大木馬を作成して、その中に五十人のギリシャの精鋭が入る。
- 他の兵たちは船に乗って「もう故郷に帰りたくなった。さよなら~」と、退却するように見せかけて海へ出てしまう。(本当はぐるっと回って、別の入り江に行っただけ)
- ギリシャ勢が去ったと思い込んだ、大喜びのトロイア側。ギリシャ勢が置き去りにした木馬を見て「戦勝祝いだ。この木馬を街の真ん中に持って行って、今日はお祭りだ」と、木馬を城内に持っていく。
- その晩、トロイア人が祝い酒で眠り込むと、木馬から精鋭五十人が出る。内側から城門を開け、ギリシャ兵を引き入れる。
- 大勝利!
……という、実に大胆な作戦でありました。この間、木馬に入っていた精鋭たちはトイレをどうしてたのかな?と思うのはわたしだけでしょうか?
大航海のオデュッセウス
無事、トロイア戦争は終わって「さあ、イタカに帰るぞ!」と、分捕りものをエンヤコラと船に運び、いざ出港!
でも、ここからが苦難の始まりだったのでした……。
部下がほとんどボケる
船はいきなり暴風に会い、漂白。たどり着いたのはロドパゴイという土地でした。ここはロータス(ハスのこと)をむしゃむしゃ食べる人々が住んでいて、このロータスを食べると、何もかも忘れてハッピーな気分になり、のほほんとしてしまうのです。
部下たちはロータスを食べて「ずっとここにいるよ」と言い出し、「これはまずい」と思ったオデュッセウス、力ずくで彼らを船に乗せ、トンズラしました。
一つ目巨人に部下を食われる
次にたどり着いたのは一つ目巨人が住んでる土地。巨人の住んでる洞窟に迷い込んだ一行は、巨人に閉じこめられ、次々と食われてしまいます。
オデュッセウスはうまいこと言って巨人のご機嫌を取り、しぶとく生き残ります。あるとき「ワインをどうぞ」と酒を進め、酔っぱらって眠ったところを一気にグサリ。目を潰して逃走したのでした。
イタカを目の前に逆走
いろいろあって風の神アイアコスの島に寄ったオデュッセウス。お土産に風袋をもらいます。
「これには、途中で邪魔になる風が全部詰めてあるから、開けちゃダメだよ」
まるで浦島太郎の玉手箱……。船は追い風でぐんぐんとイタカへ向かい、あっという間に故郷は目の前に。
しかし、ここで何も知らない部下が「これは何かな?」と袋を開けてしまいます。すると!凄まじい大風があふれ出し、船はあっという間に見知らぬ海へ流されてしまったのでした……。
魔女キルケといい仲になる
当てもなくさまようオデュッセウス。たどり着いたのは魔女キルケが住んでる島でした。この魔女は、人間を魔術で動物に変えて愛でるという特殊な趣味の持ち主。
ところが、このキルケがなんとオデュッセウスに一目ぼれ。オデュッセウスもまんざらじゃないので、ぐずぐずと三日間もイチャイチャしていました。
しかし、この島の三日間は人間界の一年半に相当するのです。それを知ったオデュッセウス、真っ青になって「いかん!すぐ帰らなくちゃ」と、あわてて出港したのでした。
セイレーンの島
次にぶち当たったのがセイレーンの島。セイレーンは鳥の羽を持つ美しい女の姿をしていますが、誰も逆らえないほどの美しい声で歌い、その声に魅かれてやってくる船乗りを海に沈めてしまう妖怪なのです。
オデュッセウスは、部下全員にロウの耳栓をさせ、自分は「もう聞こえなくなったぞ」と確かめるため、耳栓なしでマストに身体を縛り付け、動けないようにしました。こうして、セイレーンの島をクリアしたのです。
部下全滅!ついに一人ぼっちになる
次に通らなければならないのはスキュラの島とカリュブディスの渦。スキュラは六つの頭を持ち、十二本の足で歩くという恐ろしい怪物で、近くを通る船があると、長い首を伸ばして水府を食べてしまいます。
カリュブディスの渦とは、一日に三回海水を吸い込み、次に三回、凄まじい勢いで水を吐き出すという渦です。この渦に巻き込まれると難破してしまいます。
オデュッセウスはなんとか渦を乗り越えて進みましたが、スキュラに見つかって部下六人を失い、その後嵐にあって船が逆走。せっかく乗り越えたカリュブディスの渦に戻ってしまい、部下は全滅。船もバラバラになって、たった一人海に投げ出されてしまったのでした。
麗しのニンフ、カリュプソーとラブラブになる
たった一人で海を流され、オデュッセウスはオギュギア島にたどり着きます。ここは、美人すぎる海のニンフ、カリュプソーがたった一人で住んでいました。
美人のニンフと、花咲く島で二人きり。据え膳食わぬは男の恥。特に、オデュッセウスは抜け目のない男なので据え膳をがつがつと食っていきます。カリュプソーもオデュッセウスに夢中になって、「あなたを不死にしてあげるから、永遠に二人で楽しく暮らしましょう」と甘い誘惑。
でもオデュッセウスは「俺はやっぱり故郷に帰りたいんだ」と、島を後にしたのでした。
ジブリじゃないナウシカに助けてもらう
またもや嵐にあったオデュッセウス、船は木っ端みじん。パイアケス島という島に漂着。ボロボロオデュッセウスを助けてくれたのは、この島の王女ナウシカ。
そう!このナウシカ姫こそ、すべてのジブリファンの憧れ、「風の谷のナウシカ」のモデルなのです!
さすが、ナウシカのモデルのナウシカ(言い方が分かりづらくってすみません)。心優しく聡明、しかも美人。オデュッセウスに衣装を与えて宮殿に連れて帰り、心を込めて面倒を見てくれたのでした。行く先々で女に手を付けるオデュッセウスのですが、この姫だけは心惹かれるも、手出しはしませんでした。
オデュッセウスがトロイア戦争で活躍した英雄であることが判明すると、ナウシカの父王が「お国まで送ってあげましょう」と申し出。船を用意して、イタカへ送ってくれたのでした。
こうして、オデュッセウスの長い旅は終わりを告げたのでした!
ところで、オデュッセウスと別れた後のナウシカはどうしたか?彼女はオデュッセウスに恋していたのに、彼が遠く去ってしまったために、その後竪琴を片手に諸国をさすらい、オデュッセウスの冒険譚を歌いながら暮らしたと言います。世界で最初の女性吟遊詩人になったとか……。胸痛む話ですね……。
イタカへたどり着いたオデュッセウス
イタカへ無事につきましたが、そのころ、オデュッセウスの宮殿は大変なことになっていました。
王様のオデュッセウスがトロイアへ出かけてから二十年も留守なので、王座を狙う者が大勢詰めかけていたのです。オデュッセウスの奥さんペネロペイアの元に「オレと結婚しろ」「オデュッセウスはもう死んだに違いない。再婚しろ」と、二十人も求婚者が詰めかける始末でした。
キレたオデュッセウスは求婚者たちを全員弓矢で惨殺!ペネロペイアと二十年ぶりに再会して、めでたしめでたし。完!
オデュッセウスはこんな人!
二十年も旅を続け、ついに帰還したオデュッセウスは地中海の人気者。その人柄をまとめました。
誰にも負けない悪知恵
オデュッセウスは一言で言うと「知恵者」です。それも、学者みたいに「何でも知ってる」ではなくて、「危機を脱出するための才覚」に満ちた人なのです。悪知恵とはかりごと、舌先三寸、そして誰にも負けない根性で、どんなピンチでも切り抜けていくのです!
とにかく女にモテる!
エネルギッシュな男なので、どこに行ってもモテまくります。生涯でフラれた相手は、ヘレネくらいかな?
王様なので、けっこう威厳があったみたいですね。こんなフィギアがあるよ!
オデュッセイアの注意点!
オデュッセウスの航海をまとめた一大叙事詩があります!ホメロスが書いた「オデュッセイア」です。
これだよ
ところで、この本を読むうえで知っておかないと訳が分からなくなる点があります。
時系列順じゃないのです!
このお話は、オデュッセウスが最後に立ち寄った島、パイアケス島から始まります。ナウシカに親切にされ、ある日、宴会の最中に吟遊詩人の歌を聞いたオデュッセウス。その歌は、トロイア戦争での出来事を歌ったものでした。
トロイア戦争で失った多くの戦友を思い出し(アキレウスとか)、思わず涙を流したオデュッセウスを見て、ナウシカの父王が「客人、なぜ泣くのか」と尋ねます。
このとき、オデュッセウスが「実はわたしは、トロイア戦争に参戦したオデュッセウスなのです」と言い、今までのことを語った話が、「オデュッセイア」本編なのです。
ですから、「オデュッセイア」はすべてオデュッセウス本人が語ったストーリーということなんです。
オデュッセウスの持ち物!
オデュッセウスの持ち物として有名なのは、
- 紫のマント
- 鹿のモチーフのブローチ(これでマントを留めている)
- アキレウスの武具(遺品としてゲットした)
です!でも、これらは全部航海中に失ってしまいました。ナウシカの島にたどり着いたときは素っ裸だったそうです。
オデュッセウス関係者
いろんなところに行ったので、関係者は星の数ほど!ここでは代表選手を何人か。
家族
まずは家族から紹介します。
<h4両親< h4=””> </h4両親<>
父、ラエルテス。母アンティクレイア。
ひたすら息子を待ってる間に母は死んじゃいました。
ペネロペイア
奥さん。非常に美人。でも頭が良すぎて、オデュッセウス以外とはうまくいかないタイプ。
テレマコス
息子。父が全然帰ってこないので探しに行くけど、嵐にあって挫折。けっこうあきらめの早いタイプかも?
トロイア戦争関係
戦友から殺した人まで!
アガメムノン
ワガママな総大将。この人のせいでオデュッセウスはけっこう忙しい。
アキレウス
ギリシャの最強戦士。アガメムノンと喧嘩しまくって、オデュッセウスは全然関係ないのに仲介役に。頑張って説得するも、どうにもならなかったよ。
ヘレネ
トロイア戦争の火付け役。世界一の美女。オデュッセウスの若き日の憧れの人。
パラメデス
オデュッセウスを戦争に駆り出した人。そのことを恨んで、殺しちゃたよ。
大航海関係
航海の最中、覚えておかなきゃならない人はこれだ!
一つ目巨人
キュクロプスとゆー名前があるよ。オデュッセウスの部下をむしゃむしゃ。目を潰されちゃったよ。
アイアコス
風の神様。せっかくオデュッセウスのために邪魔な風を袋詰めにしてくれたのに、役に立たなかったよ。
キルケ
魔女。オデュッセウスといい仲に。
セイレーン
歌のうまい妖怪。
スキュラ
すごい化け物
カリュプソー
美人のニンフ。オデュッセウスといい仲に。
ナウシカ
パイアケス島でオデュッセウスの世話をした王女。
ナウシカの父、パイアケス王
オデュッセウスをイタカに連れてってくれたよ。
オデュッセウスの本、映画
オデュッセウスが出てくる作品はいくつかあります。ここでは一押しをいくつか。
映画「トロイ」
この映画の主人公はアキレウスなので、オデュッセウスはハッキリ言って脇役。でもかなりおいしいポジションで、いい味出してます。
マンガギリシア神話
里中満智子のマンガです。オデュッセウスの航海を、よくまあここまで短くまとめたな……。と、読み返すたび感動です。
ギリシア神話を知っていますか
阿刀田高のエッセイです。エッセイですが、そんじょそこらの専門書より読みやすくて詳しいです。ギリシャ神話の有名エピソードを、いくつかの章にまとめていて、最後の章が「オデュッセイア」のあらすじをまとめてます。エッセイストならではの視点で、オデュッセウスが生き生きと生身の人間として浮かんできます。
まとめ
長々とお疲れ様です!
オデュッセウスはギリシア神話の中でも、「神話によく出てくる清廉潔白な英雄」とは違って、悪知恵に満ちていて、人を騙したり、しつこく恨んで殺しちゃったりと、人間味あふれる人物ですね。ずるさとたくましさを持ち合わせているところが、オデュッセウスの最大の魅力でしょう。
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