アガメムノンはトロイア戦争の悪!惨殺されたのは天罰!
映画「トロイ」でも、ギリシャ最強の戦士アキレウスをいじめまくったアガメムノン。
トロイア戦争におけるギリシャの総大将であり、ミュケナイの堂々たる王……のはずですが、実はとっても嫌われ者。いつも威張り散らしてるし、戦利品は分捕る。アキレウスをいじめる。そして最後は奥さんに殺される!という、最悪なキャラ。
イメージとしては、時代劇で「越後屋、そちも悪よのう」と言ってる悪代官あたりでしょうか。
今回は、ギリシャ神話の「悪」、アガメムノンの生涯を紹介します!
アガメムノンってこんな人
トロイア戦争のきっかけは、トロイアの王子パリスが、ギリシャのスパルタ王メネラオスから奥さんのヘレネを寝取ったのが始まり。この寝取られた男のお兄さんがアガメムノンです。
「兄さん、妻をかっぱらわれました。取り戻しに行くから手伝ってください」と泣きつくメネラオス。
「よし!オレに任せろ!」
というわけで、アガメムノンはギリシャ全土に召集をかけ、軍勢率いて弟と一緒にトロイアへ旅立ったのでした。
ところが!アガメムノンはせっかく来てくれたギリシャ第一の戦士アキレウスの女をパクって大喧嘩。アキレウスは「あんたのためには、もう働かない!」とストライキ。このせいでギリシャはボロ負けに次ぐボロ負けを喫します。
いろいろあってアキレウスは復帰。オデュッセウスが木馬の奇策をたて、ギリシャは勝利して、国へ帰還することになります。
しかし!ここでまさかの悲劇が……。アガメムノンの奥さん、クリュタイムネストラはアガメムノンを長年恨んでいたので、トロイア戦争の間に従兄弟と浮気していました。その浮気男と共謀して、やっと帰ってきたアガメムノンを風呂場で斬殺したのです。
以上、アガメムノンのトホホな生涯でした!
アガメムノンはこういう性格
偉大な王でギリシャの総大将……のはずですが、アガメムノンはとにかく欲が深くて、しかもこれでもか!ってくらい女好きです。
自分はろくに手柄を立てて泣くくせに、いつも戦利品を「オレが総大将だから」と一番多くどっちゃりと持っていく。
部下の女を分捕る。
ついには神様も「ふざけんな!」とキレてギリシャ軍の中に疫病をはやらせる。(ここで死んだ人が可哀想すぎ)
サイッテーな男だったのです!ここまで最低だと、逆にウケますね。
アガメムノンの最低行動、3選!
アガメムノンの犠牲者はムチャクチャいっぱいいますが、ここでは代表選手三人の事件を紹介します。
あわれイピゲネイア、父のせいで生贄に
ギリシャからトロイアへ船出するときのことです。船旅の無事を祈るために、鹿を生贄にして祭壇に捧げました。ところが!ここでアガメムノンは調子に乗って
「立派な鹿だろう。わたしが仕留めたのだ。これほどの鹿は狩りの女神アルテミス様でも仕留められまい」
と自慢。これで怒ったアルテミス。「神に祈りを捧げるくせに、神を馬鹿にするとは許せぬ!」と、嵐を引き起こし、全然船が出せなくなってしまいました。これではトロイアへ行けない……。
「アルテミスの怒りを鎮めるには、御息女のイピゲネイア様を生贄にしなければなりません」との神託。アガメムノンは自分の腕前を自慢したため、娘のイピゲネイアを生贄にしたのでした。
これに怒り狂ったのは、奥さんのクリュタイムネストラ。娘を生贄にされたので当たり前です。「あなたの問題発言のせいで娘が死んだのよ!絶対許さないわ!」と号泣。アガメムノンが戦争から帰還したとき、「思い知れ!」と風呂場で襲いかかり、ナイフでグサグサ……。娘の仇をとったのでした。
アキレウス、女をとられる
アガメムノンは女好きです。あるとき、クリュセイスという美人を手に入れましたが、この娘はアポロン神殿に仕える神官の娘でした。……なのに、神殿に返さないアガメムノン。アポロンは怒って疫病をはやらせます。
「疫病を鎮めるためにクリュセイスを帰すべきだ!」と部下たちが大騒ぎしたので、しぶしぶ帰すことに決めますが――なんと!アガメムノンは自分が女を失うのが我慢ならなかったので、代わりにアキレウスの女を分捕ったのです!
この仕打ちに怒り狂ったアキレウス。「何て奴だ!俺が命がけで戦ってきた手柄も忘れて!もういい!もう俺は戦に出ないからな!」とストライキしてしまったのでした。
小アイアス、彼も女をとられる
トロイアが落城し、「さあ、故郷へ凱旋だ!」という喜びの場面。
小アイアスはトロイアの王女カッサンドラを戦利品として連れて帰ることにしました。美人のカッサンドラを得てウキウキの小アイアス……だったのですが。ここでまたもやアガメムノンが女を横取り!「トロイアの王女なんだから、総大将のオレがもらうのが当然だ」と連れてってしまったのでした。
このカッサンドラ、アガメムノンが風呂場で殺されたときに、目撃者として一緒に殺されてしまいます。アガメムノンのせいで、罪もない被害者がウジャウジャと増えるのでした。
アキレウス、もっと言え!悪代官アガメムノンへの大抗議
アガメムノンは総大将なので、どんなに不満があってもみんな遠慮して何も言いませんが、アキレウス一人は「最強の戦士」で、しかも「自分は短命で死ぬ」と分かっているので全然遠慮しません。
このアキレウスがアガメムノンへ面と向かって文句を言いまくるのですが、その言葉が立て板に水の大熱弁。ここではアガメムノンが「アキレウスの女をオレによこせ」と駄々をこねたときのセリフを紹介します。
「ああ、なんたる厚顔、なんたる強欲なお人か。そもそもわたしがこの地に兵を進めたのは、トロイア人に恨みあってのことではない。あなたの意に従うため、つまりはメネラオスと、犬にも似た厚顔無恥のあなたのために、トロイア人から償いを得るためであった。
ところがあなたはそのことを全く考えようとせず、気にも留めておられぬ。今もわたしの分け前を奪うと脅す。ギリシャがトロイアの町を攻め落とすたびに、わたしがあなたと堂々の分け前にあずかったことはなかった。
その働きの大方はわたしの腕が果たしているのに、分配の段になると、いつもあなたが格段に多量の分け前をとる。わたしはわずかな分け前を後生大事に抱きつつ、戦いに疲れた足を引きずりながら陣屋へ帰っていくのだ」
そうとう怒ってますね。これに対してアガメムノンは「おお、おお、そなたなどにいてくれと頼みはせぬ。わしを大事にしてくれるものは他にも大勢いる」と開き直り。
これでアキレウス、完全にキレます。
「酔いどれめ。面の皮の厚さは犬に劣らぬが、肝の太さは鹿なみのお人よ。あなたは自ら鎧を着て戦場に立ったり、大将たちとともに敵を待ち伏せするほどの勇気を示したこともなかった。あなたは民を食い物にする王だ。
ここでわたしは誓いを立てる。よいか、必ずやいつの日か、ここにいる全ての人の胸に、アキレウスの不在を嘆くときが来るだろう。数知れぬ味方の将が討ち死にするだろう。
そのとき、あなたはいかに心を痛めても何の役にも立たない。ギリシャきっての勇士を敬わずに辱めたことを、ほぞをかんで悔やむに違いない」
アキレウス、腕も立つけど、頭も相当いいですね。どれほど腹を立てても、これほどペラペラと文句を言うことってなかなか難しいですよ。
アガメムノンの関係者
アガメムノンはミュケナイの王で、総大将ですから、けっこう関係者(被害者?)がいます。
クリュタイムネストラ
奥さん。アガメムノンを殺したよ。
アイギストス
クリュタイムネストラの間男。アガメムノンを殺したよ。
イピゲネイア
アガメムノンの娘。生贄にされちゃったよ。
エレクトラ
アガメムノンの娘。
オレステス
アガメムノンの息子。
メネラオス
アガメムノンの弟。奥さんをパクられたよ。
アキレウス
最強の戦士。キレてストライキしてるよ。
オデュッセウス
最高の頭脳。
小アイアス
女を横取りされたよ。
プリアモス王
トロイアの王様だよ。
ヘクトル
トロイアの王子ですごい戦士。
パリス
メネラオスの奥さんをパクったよ。ハッキリ言ってカス。
まとめ
長々とご精読ありがとうございました!
トロイア戦争は十年も続いた戦争だけあって、登場人物が「覚えられない!」ってくらい大勢います。その人たちはみんながみんな英雄ではなくて、悪者もチラホラと見えます。トロイア側ではカスのパリス。ギリシャ側ではアガメムノンがその筆頭ですね。
こういう「悪」がいるからこそ、アキレウスやオデュッセウス、ヘクトルなどの英雄のカッコよさが引き立ちます。「悪」がいればこそ、「善」が分かるというところでしょうか。ギリシャ神話は奥深いですね!
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