アイネイアスはトロイア戦争の勝ち組!実はローマを作った人だった
トロイア戦争の英雄、アイネイアス!……って言っても、ハッキリ言って「誰それ」って印象。聞いたことも食べたこともないって感じですよね。ぶっちゃけた話、アイネイアスの名前を知っていたら、あなたは「ギリシャ神話変態レベル」です。
それもそのはず。アイネイアスは、トロイア戦争では全然活躍してないのです!彼の活躍は、トロイア陥落後。燃え盛るトロイア城から脱出し、その後、アイネイアスの波乱万丈の人生が始まるのです!
まさに、「トロイア戦争、その後」!実は勝ち組のアイネイアス物語を紹介します。
アイネイアスはパリスの従兄弟
アイネイアスはトロイアの王子、パリスの従兄弟です。(パリスは絶世の美女ヘレネをスパルタ王メネラオスからパクったため、トロイア戦争が起こってしまうとゆー、最低最悪な王子)つまり、アイネイアスはトロイアの王族の一人。非常に身分の高い人なのです。しかも、父は王族のアンキセス、母は美の女神アフロディテ。半分神様。超がつくほど美形です。当たり前ですが……。
腕っぷしもいい。王子ヘクトル(パリスの兄)の次に強かったそうです。そのわりにトロイア戦争で活躍してないのは、ヘクトルが強すぎて影が薄かったのか――サボってたのか――そのあたりは突っ込み禁止です。
アイネイアス初登場!でも影が薄いよ
アイネイアスが初めて神話に登場するのは、パリスがトロイアへ船出するときです。パリスが父王に「スパルタにいるわしの姉を訪ねて来てくれ」と言われて出発した時、アイネイアスも同じ船に乗っていました。
ところがこのパリス、なんとトロイアの王妃ヘレネと恋に落ち、彼女をさらった挙句、財宝までドロボーするという悪行をしでかします。アイネイアス、帰りの船でヘレネと財宝を発見して顔面蒼白。
「ええッ!王妃をさらったんですか!しかも財宝まで!いったい、何てことを!」
大いに心配しますが、結局何もしないアイネイアス……。「何とかしろよ」って感じですが、まあ、ヘレネは美の女神アフロディテがパリスに上げると約束した美女ですから、彼も神の御意思には逆らえなかったのでしょう。(トロイア戦争は起きなきゃならない戦争ですから、ストーリーの展開上、ね)
アイネイアス、トロイアを脱出!ローマを建国す
さて、ここからが本題。アイネイアスの人生の始まりです。
トロイアを脱出。母なる地を目指す
十年にわたる戦争の末、ギリシャ人についに敗北したトロイア。燃え上がる街の中を、アイネイアスは家族を引き連れて必死に逃げます。しかし、黒煙の中を逃げる途中、後ろを走っていた妻がはぐれてしまいました。慌てて、血眼になって妻を探し回るアイネイアス……。するとしばらくして、妻の亡霊が現れてアイネイアスに告げます。
「わたしに構わないで……。お父様を連れて、早く逃げて下さい」
それっきり、すうっと消えてしまった妻。アイネイアスはむせび泣きつつ、老父を背に追って逃げるのでした。
そしてアイネイアスは、トロイアから脱出した民衆、そして父や子を連れて、海岸から船に乗り、当てもなく逃げていったのでした。
途中、トラキアを経て、デロス島へたどり着いたアイネイアス。そこで、アポロン神殿を詣でて、
「神アポロンよ。トロイアを再興するには、どこへ行けばいいでしょう」
と神託を乞います。神様が言うには
「お前たちの母なる地へ行くがよい。そこが永遠の国になるだろう」
とのこと。……神様のお告げだの、占いだのは、いつの時代も具体的じゃありません。「母なる地ってどこ?もっとはっきり地名を教えてくれりゃいいのに」と、アイネイアス困ってしまいます。しょうがないので、また旅に出ることに……。
ハルピュイアに襲われる
その後もあっちこっちをさまよい、嵐にあったりして、たどり着いたのはストロバデスとゆー訳の分からない島。ここで食事をしようとした一行、いきなりハルピュイアという、顔は女で体は鳥という気持ち悪い怪鳥が群れをなして飛んできて、アイネイアスたちの食事をドロボーします。
アイネイアスは剣を抜いてハルピュイアを追い払おうとしますが、ハルピュイアたちは鋼鉄より硬い身体を持っているので、一向平気。食事を腹いっぱい食うだけ食って、
「お前たちはテーブルを食うほど飢えなければ、目的地にたどり着けない!」
と最低な予言だけ残してトンズラしたのでした。
このハルピュイアにショックを受けたためかどうか分かりませんが、アイネイアスの父アンキセスはここでぽっくり死んでしまいます。
カルタゴの女王に惚れられる
アイネイアスたちが次にたどり着いたのはカルタゴの地。今のアフリカ、リビアのあたり。ここの女王ディドが、アイネイアスに一目ぼれ。さすがは美の女神の息子。美男は得です。女王は毎日大宴会を開いてトロイアの人々を歓迎。アイネイアスも、据え膳食わぬは男の恥。女王と蜜月の日々を送ったのですが……。アイネイアスの息子アスカニオスが意見します。(息子、ここ以外出番はありません)
「父上!ここは神々のお告げの母なる地ではありません。女に溺れて、トロイアの再興を忘れてはなりませんぞ」
この一言で正気に返ったアイネアス。ディドに別れを告げ、船出するのでした。ああ、乱れる黒髪。飽かぬ情けの悲しさ……。
ディドはアイネイアスを失った悲しみに耐えきれず、火葬台を築いて、アイネイアスの衣装を抱いたまま、「せめて、わたしを焼く火の煙だけでも、あの人の目に留まりたい」と、その中に身を投じてしまいます。
黄泉の国の父に会う
いろいろあって、ついにイタリア半島へたどり着いたアイネイアス一行。ここでアイネイアスは、父の霊に会うために黄泉の国へ降ります。父アンキセスが「わしは死の国に行って、お前たちがこの後どんな国を作るのか話すから、必ず死の国に来てわしの話を聞きに来いよ」と遺言していたためです。ずいぶん、厄介な遺言です。
女予言者シュビレに頼んで、黄泉の国へと降りていくアイネイアス。途中、かのカルタゴ女王ディドにも会います。死人たちが大勢浮遊する、三途の川の向こうへ渡って、ついに父の亡霊に出会います。
父の亡霊は人間の魂がどうやって肉体に入って、またどうやって黄泉の国へ行くのかとか、どーでもいい話を長々としゃべった後、
「お前たちは巨大な国を作って、その国は永遠の栄光をつかむだろう」
と予言。これを聞いて安心したアイネイアス、地上へ戻るのでした。
母の地へ到着!
また旅を続けて、食料もほとんどなく、食器までなく、貧乏のどん底になった一行。麦のパンを皿代わりにして食事をとったのですが、おかずが足りなくて麦パンもムシャムシャ……。
このとき、アイネイアスは「テーブルを食べるほど飢えなくては、目的地にたどり着けない」と言ったハルピュイアの予言を思い出します。
「あ……っ。あの予言は、このことだ!では、このティベレ川のほとりが、我らの母なる地だ!」
こうして、ついに母なる地へたどり着いたアイネイアス。ここに家を建て、畑を作ります。
このアイネイアスの子孫が、ロムルスとレムスという双子。この双子がローマの建国者となります。つまり、アイネイアスこそ、ローマ建国の礎となったのでした。
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