妖精ってどんな種類があるの?村や町に出現する妖精一覧

ファンタジーや神話の世界に必ず出現する妖精や精霊ですが、ぶっちゃけ、どんな種類が存在するのか、あまり知らないですよね。

ここでは、主に村や町など人里に出現する妖精や精霊についてまとめてみました!これを読めば妖精オタクになれるかも⁈

ホブゴブリン

ロビン・グッドフェロー、あるいはパックと呼ばれる妖精です。一番有名なのは、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」に登場する「パック」でしょう。

ホブゴブリンはそのほとんどは民家、時には城跡や廃墟、古木に住む妖精で、その性格はとにかくいたずら好き!でも根は善良です。

子供に似ていますが、下半身がヤギだったり、長いしっぽを持っていたりします。ホウキを抱えていることもあり、その家の家事を知らない間に手伝ってくれます。

ミルクや食事を家のどこかに置いておくと、大喜びで受け取って、馬を洗っておいてくれたり、粉をひいてくれたり、薪を切っておいてくれたりします。(うらやましい……)

ただし、いつも仕事を親切に手伝ってくれるわけではありません!とんでもないいたずら好きなので、三脚に化けて人間をすっ転ばせたり、作ってる最中のバターを台無しにしたり、漬物をひっくり返したりと、その家の家族をからかい放題。

人間がうろたえてるのを見て、影に潜んでケラケラ笑っています。

あんまりいたずらが過ぎるホブゴブリンを追っ払うには、三つの方法があります。

① 着物(外套など)をプレゼントすると浮かれてどこかへ行ってしまう。

② 勝手に名前を付けると「俺にはちゃんと名前があるんだ」と怒ってどこかへ行ってしまう。

③ 神父さんにお願いしてお祓いしてしまう。

さて、一口にホブゴブリンといっても、地方によって種類は様々!ここではちょっと変わったものを三つ紹介しておきます。

ボガード

オカルトの世界でよくいうポルターガイストを引き起こす、くそ悪なホブゴブリンです。

ポルターガイストとは家の中の家具がガタガタ揺れたり、空中を飛び回ったり、勝手に窓が割れたりするという現象で、ドイツ語で「騒がしい幽霊」という意味ですが、これが起こるのは全部ボガードのせいです。

ボガードが一たび家に住み着くと、もう平和な時間はありません!ひっきりなしに引き出しが開いたりしまったり、瀬戸物が爆発したり、コップや瓶が踊り狂ったりします。夜になると家畜が恐れおののき、何かがすごいスピードで階段を駆け上がる音がし、誰もいない空き部屋で足音がして、おちおち寝ていられません。

強力な呪文を唱えなければボガードは追い払えないので、その家の家族は引っ越しするほかありません。でも、超特急で引っ越ししないと、引っ越しすることを知ったボガードは一緒についてきてしまうので要注意です。

ボギー

ボギー(ボーグルともいう)はちょっと不気味なホブゴブリンです。幽霊とよく間違えられますが、幽霊じゃありません。

ボギーには決まった姿がなく、なんとなくフワフワ舞い上がったホコリみたいな姿をしています。日本でいうススワタリみたいなかんじです。

だいたい暗いところにいて、滅多に開けられない戸棚とか宝箱などを住みかにしています。

夜になると家の中を歩き回りますが、よくでっぱりや階段などに引っかかって転ぶので、大きな音を立てます。ラップ音を立てることもよくあります。

ボギーはその家の人間の暮らしに好奇心旺盛なので、ひっきりなしに人間の後ろをついて回ります。誰もいないのに後ろに気配がしたり、勝手に布団がずり落ちたりするのは、ぜんぶボギーのせいです。

ボギーがいることを確かめる方法は、節穴や鍵穴のあるドアをいきなり閉め、そこから覗くことです。穴の向こうに光る眼が見えたら、それがボギーです。

プーカ

プーカはインキュバスの一種ともいわれるホブゴブリンです。このプーカがいる屋敷で寝ると、とんでもない悪夢にうなされます。

プーカはよく家事を手伝ってくれて、ミルクや食事を与えなくてもよく働いてくれるいい妖精ですが、一つ注意が必要です。

ホブゴブリンはすべて馬の姿になることができるのですが、プーカは特別で、常に子馬かロバの姿をしています。そして、人を乗せるのが大好きなので、一度またがってしまうと凄まじいスピードで駆け続け、一晩中下ろしてくれません!気が付くと全然知らない土地で放り出されていたということもしばしば……。

インキュバス

これはヒジョ~にエロい妖精です。日本語では夢魔といいます。

この妖精、オスはインキュバス、メスはサキュバスといいますが、登場する頻度は圧倒的にインキュバスが多いですね。

一説によれば、インキュバスは人間の女性への性的欲求のあまりに堕落した天使であるといわれ、とにかく女性を襲いまくります!インキュバスの語源は、ラテン語の「のしかかる。上に寝る」からきています。(サキュバスは「下に寝る」という意味……)

インキュバスは町や村、その周辺に出現し、「おお!イイ女がいる!」と目をつけると、その女に飽きるか、その女が死ぬまでつきまといます!

そしてその女が夜中にベッドで寝ると、おもむろに美しい男に化けて、その女の上にのしかかり、目を覚まさないようにみだらな夢を見せながら目的達成するのです。

あまり例のないことですが、インキュバスに襲われて子供を妊娠、出産した女性もいます。その中で一番有名なのは、アーサー王に登場する魔法使いマーリンです。マーリンが素晴らしい魔法の力を持っていたのは、このインキュバスの血をひいていたからでしょう(^-^)

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インキュバスはだいたい若い男に化けますが、ヤギに化けることも、女の姿になることもあります。なので神話に滅多に登場しないサキュバスは、

「最初っからメスだったんじゃなくて、女に化けたインキュバスがサキュバスの正体だ」

とも言われています。

よく悪魔のお祭り(ドイツのヴァルプルギスの祭りとか)で、魔女が二本足で歩くヤギと踊っている場面が描かれていることがありますが、このヤギはインキュバスです。美しい魔女と戯れてるんですね。

あと、人に夢を見せる悪魔として有名な「ナイトメア」がインキュバスと混合されることがありますが、この二つはちょっと性格が違います。

インキュバスはエロい夢しか見せませんが、ナイトメアが見せるのはとにかく怖すぎる夢です。英語では悪夢自体が「ナイトメア」といいますね。

バンシー

主にイギリス、スコットランドに伝わる女の霊です。近い未来、死者の出ることを予言して泣き声をあげると言われています。(予言するだけで、死を運んでくるわけではないです)

その泣き声は、静かなすすり泣きの場合もあれば、飛ぶ鳥が落ちるほどの凄まじい大音響のことも。

バンシーは特定の家につく妖精で、特に死者が出ることのない普段はおとなしくしてます。子供のゆりかごを揺らしたり、主人がチェスをしているのを後ろから覗き込んで、神の一手を教えてくれることも。

姿は地方によって様々です。「女で赤い目」は共通してますが、美少女であることもあれば、老婆だったり、乳房をむき出しにしていたり、鼻の穴が一つしかない、ということも。

古代ヨーロッパには、その家につく「守護女神(フュルギエ)」の信仰があったので、おそらくバンシーはそこから派生して、

「その家に死者が出ると守護女神が悲しんで泣く」

という風に信じられたのでしょう(^-^)

ドュラハーン

「首なし騎士」と呼ばれる妖精です。全身を鎧で固めて、馬に乗って街に現れます。首はそもそもないか、小脇に抱えています。(この首はだいたい兜をかぶっていて、顔は分かりません)

この妖精の役目は「死の予言」と「その執行」で、夜間、馬に乗って街を徘徊し、死ぬ運命のものの元を訪れ殺していくのです。

やって来る時は鎧と馬が凄まじい金属音を立てます。まるで「世界中の鉄の皿がいっせいに鳴り出したような」音だそうです。この音にびっくりして、家から顔を出すと、ドュラハーンは桶一杯の血を浴びせかけてきます。ドュラハーンは自分の姿を見られることを、極端に嫌うのです。持っているムチで、目を潰されることもあります。

死を執行しに来たドュラハーンからは、滅多に逃れることはできませんが、2つだけ逃れる手段があります。

一つはドュラハーンの剣と勝負して倒すことで、もう一つは水の中に逃げることです。ドュラハーンの馬は水の中に入れないので、川の中へ逃げ込めば安全なのです。

このドュラハーン、一説によればアーサー王伝説に登場する「緑の騎士」から派生した妖精だそうです。

【アーサー王あらすじ】ガウェインと緑の騎士

アーサー王の宮殿に登場した「緑の騎士」は、円卓の騎士ガウェインから首を叩き落とされても生きていて、その首を小脇に抱えて宮殿から去っていきます。

この伝説が、後にドュラハーンに変化したのではないか?というのです。

まとめ

長々とお疲れ様です!

いや~、ヨーロッパの町は妖精だらけですね。どこにでも妖精がいるって感じです。

死を予言するような怖いのはイヤですが、家事を手伝ってくれるのはうらやましいですね。ちょっと日本の座敷わらしと似てるかもしれません。

ケルト神話の本や映画のまとめページはこちら↓
ケルト神話のお勧めの本!入門書からマニア向けまで
アーサー王や円卓の騎士でおすすめの映画、2本紹介!

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