【アーサー王あらすじ】ガウェインと緑の騎士
ガウェインと緑の騎士
アーサー王の甥で、ランスロットの親友でもあるガウェイン!ガウェインが一人で行った冒険の中で、最も有名なのが「緑の騎士」です。
主な登場人物
・ガウェイン
・謎の緑の騎士
・親切な城主
・やたら迫ってくる奥さん
全身緑の騎士がやって来る
ある年、アーサー王はキャメロットに円卓の騎士全員集めて、クリスマスのお祝いをしました。
みんな楽しく騒いでいたのですが、突然!ものすごい大男が呼ばれてもいないのに広間にドカドカ入って来たのです!
フツーの大男だったら誰も驚きませんが、この大男はタダもんじゃありません。
服も緑、髪の毛もあごひげも緑、顔も両手も緑。馬も緑という、オール緑色で光合成してるみたいな緑男だったのです!
さて、この大男
「アーサー王、こんばんは。わしはあんたたちと肝試ししにきた」
と言います。ところが、この肝試しとやらが、トンデモナイ内容だったのです!
「わしはここに大斧を持ってきた。まず、あんたたちのうちの一人が、これでわしを斬る。そのかわり、今から一年後には、わしがその男を同じように斬る。どうだね?」
これを聞いて、みんなシーンとしてしちゃいました。フツーに戦うならいいけど、黙って斬られなきゃならないなんて、誰だってイヤです。
すると、この緑男、
「ワッハッハ!噂に高いアーサー王の騎士たちは臆病者揃いだな!」
と、超笑ってきたのです!
ガウェイン、緑の騎士を思いっきり斬る
これを聞いたガウェインが、
「わたしがやろう!」
と、立ち上がりました。
「円卓の騎士が臆病者と笑われて、黙っているわけにいきません。王様、わたしが引き受けます。」
みんなビビってるのに、一人だけ名乗り出たガウェイン。イイ男ぶりです!
さてガウェイン、緑の騎士に自分の名を名乗ると、緑色の大斧を受け取りました。
緑の騎士はちゃんとしゃがんで、
「よーし、用意はいいぞー」
と、余裕しゃくしゃく。ガウェインが「エイッ」と、思いっきり斧を振り下ろすと、緑の頭はコロコロッと床に転がっていきました。
ところが!
なんと緑の騎士、頭のなくなった体がすたすたと歩いて行って、転がってる頭をヒョイッと拾い上げ、何事もなかったかのように馬にまたがったじゃありませんか!そして手でくるっと頭をガウェインの方に向けると、
「わしは緑の礼拝堂の騎士じゃ。ウェールズ中を捜して、来年の今夜来るんだぞ。じゃあ、待ってるからね~」
と言って、パカパカ走り去ってしまったのでした!
ガウェイン、わざわざ殺されに行く
緑男は頭を叩き落とされても生きてるからいいですが、ガウェインはフツーの人間ですから、首斬られたら死ぬに決まってます。
決まってるのですが……それでも約束を果たしに行くのが中世の騎士道!ガウェインはちゃんと一年後、愛馬グリンガレットに乗って、五芒星を描いた盾を持って、ウェールズに向けて出発しました!
ウェールズをあちこち捜し回って、やがて深い谷間に面した、美しい城にたどり着きました。
「もしもし、わたしはアーサー王の家来でガウェインです。緑色の騎士を捜してます」
と相談すると、「ようこそ、ようこそ」と、城主がニコニコしながら出てきました。
この城主、髪は赤くひげも赤く、とても長身。とっても親切で、
「緑の騎士がいる『緑の礼拝堂』は、ここからわずか2時間ですよ!約束の日まで、ここに泊まってくださいよ!」
と、大歓迎。宴会を開いて大いにもてなしてくれたのでした。
ガウェイン、城主とヘンな約束をする
緑の騎士と約束した日まで、あと三日です。城主はこの三日間は狩りに行く予定だと言いました。
「でも、ガウェイン卿は今までさんざん旅をしてお疲れでしょうから、この城で妻がおもてなししますよ。
ところで、今はクリスマスシーズンですから、一つ愉快な遊びをしましょう。わたしは狩りで手に入れた獲物は、すべてあなたにプレゼントします。そのかわり、あなたはこの城の中で手に入れたものをすべてわたしに下さい」
城の中のものって、そもそもぜんぶ城主のでしょ?って感じですが、ガウェインは
「ああ、面白い取り決めですね。分かりました。なんでも差し上げると誓いましょう」
と、約束したのでした。
奥さん、やたら迫ってくる
さて、約束通り城主は早朝からさっさと狩りに出かけました。でも、ガウェインは疲れ切ってるのでベッドでグーグー寝てます。
すると!男が一人で寝てるというのに、そこへ城主の奥さんがイキナリ侵入。
これだけでもヤバいですが、この後の奥さんのセリフはさらにヤバいです!
「主人はいないわ。今日一日愛し合ったってかまわないじゃない?」
と、ストレートすぎる求愛!
ガウェインは「ダメです」「旦那がいるでしょ」と断り続けますが、奥さんは諦めません!何時間も口説きまくったあげく、
「こんなに長い時間話してたんだから、騎士として婦人に別れ際のキスぐらいしてよ!」
……騎士のマナーは守らなきゃならないので、ガウェインはしぶしぶキス。
その後、城主が帰って来て大量の獲物を
「お約束のプレゼントですよ」
と差し出してきました。
ガウェインは長い間城にいて、やったことといえば奥さんの誘惑を断り続けて、最後にキスしただけですから、
「わたしが手に入れたのはこれだけです」
と、バカ正直に城主にキス。
城主は「これって誰からもらったキスなの?」と不信そうでしたが、ガウェインは「あんたの奥さんです」と言うわけにはいかないので
「それは取り決めの中に入ってないですから」
と、お茶を濁しました。
奥さん、すごい勢いで迫ってくる!
さて、次の日の奥さんはさらにエスカレート!城主が狩りに出かけるなり、ガウェインを捕まえて、マシンガンのように口説きまくります!
ガウェインは必死に断り続け、その日の晩も城主は獲物を、ガウェインは別れ際のキスを城主と交換したのでした。
三日目もまた同じ。
「あなたって冷たいわ!」
「明日になったら殺されに行くんでしょ?だったら最後の思い出を作ったっていいじゃない!」
「主人が戻って来るまで抱いてよ!」
と、言いたい放題。
ガウェインは
「だから旦那がいるんだからダメです!旦那と仲良くしなさい!」
と、一歩も譲らず。奥さんの涙ながらの訴えにも負けません。……というより、ここまでしつこかったら逆に萎えるかも?中世人だったら違うのかな?
ガウェイン、こっそり緑の帯をちょうだいする
さて、いかなる誘惑も一切受け付けないガウェイン!
奥さんはついに根負けして、
「じゃあ、せめてこれだけ受け取ってよ」
と、緑色の帯を差し出します。
「イヤです。いりません。誓い合った婦人以外から贈り物をもらうわけにはいきませんからね」
「でも、これは魔法の帯なのよ。この帯をつけていれば、相手がどんな魔法を使っても殺されることはないのよ?どう?欲しくない?」
……これにはグラグラッと心が揺れたガウェイン。ちょっと迷ったんですが、結局
「じゃー、もらいます」
と、ちゃっかりいただき。
その晩、城主が帰って来て獲物のキツネをくれた時、ガウェインは緑の帯のことは隠して、いつも通りキスだけ城主にあげたのでした。