【ケルト神話】トリスタンとイゾルデ悲恋のストーリーまとめ

2019年12月1日

ワーグナーのオペラで有名な「トリスタンとイゾルデ」。

でも案外、このトリスタンがアーサー王の「円卓の騎士」の一人であることを知っている人は少ないのでは?

このページでは、二人の悲恋の物語を分かりやすく紹介します!

アーサー王の宮殿に吟遊詩人現われる

有名なアーサー王の「円卓の騎士」。この円卓には「危険な座」と呼ばれる特別席がありました。この席は、特別に勇気のある者しか座ってはならないルールがあって、まだ空席のままでした。

この席が空いていることが気になるアーサー王。「この席に座れる騎士はいないのかなあ」と悩んでいると、「コーンウォールのトリスタンだったら座れるかも」とその他の騎士。

その時、突如遠くから響いてくる竪琴の音楽。それが今まで耳にしたことがないほど悲しい音色だったので、その場にいた全員号泣。そして、竪琴を抱えた吟遊詩人が一人現れたのでした。

アーサー王、「吟遊詩人君、どこから来たのかね」

吟遊詩人「コーンウォールからです」

アーサー王「ではトリスタンの物語を聞かせてくれたまえ」

吟遊詩人「お安い御用です」

というわけで、トリスタンとイゾルデ物語スタート!

トリスタン、マルク王の騎士になる

昔、リオネスの王様が悪人モルガンによって謀殺。王の死を知って森に逃げたお妃は、そこで男の子を産み落とし、忠実な家臣に王子を託します。この王子がトリスタン(悲しみの子)なのです。

トリスタンは忠実な家臣に育てられ、賢く美しい青年に成長。しかし、ある日悪い商人に騙されて奴隷の身に!流れ着いた先はコーンウォール。でも何という運命のいたずら。このコーンウォールを治めていたのは、母親の兄(トリスタンのおじさん)マルク王だったのです。

忠実な家臣はトリスタンを探し回っていたので、このコーンウォールでトリスタンがマルク王の甥であることが分かり、トリスタンはマルク王の第一の騎士に取り立てられたのです。

トリスタン、大男の騎士と戦う

ある日、突如マルク王の王宮に現れたアイルランドの騎士モルオルト。

モルオルトは「15人の少年少女をくじ引きでアイルランドへ人質として送れ。そいつらは奴隷としてアイルランドで働かせる」と、力づくで無茶苦茶な要求。「オレと勝負して、俺が負けたら引き下がろう」と言いますが、この男、巨人レベルの大きさなので誰も立ち向かえません。

その時、「わたしが相手になろう」と立ち上がったトリスタン。彼は大男の騎士と必死の戦いを繰り広げて見事勝利。しかし、モルオルトは槍に毒を塗っており、トリスタンはその槍で足をざっくりと切られたので彼もまた瀕死の重傷を負うことに……。

一方、トリスタンに殺されたモルオルトの死体はアイルランドに運ばれました。モルオルトの頭から、トリスタンの剣の破片が出てきます。モルオルトの姪イゾルデは「この破片の持ち主が、おじさまを殺したのね」と涙ながらに破片をしまいます。(モルオルトはイゾルデの母親の弟です)モルオルトは巨人なのにイゾルデは可憐な美女。たぶんイゾルデはお父さん似なのです。

トリスタン、アイルランドに行く

モルオルトの毒槍で傷つけられたトリスタンは、どんな治療にも回復しませんでした。その傷口からは絶えず血が噴き出し、起き上がることすらままならぬありさま。(出血多量で死ぬだろうと思いますが、伝説の騎士なので問題ないのです)

ついに医師たちはトリスタンに宣言。

「アイルランドに行けば治してもらえます。この毒はアイルランドで作られましたから、解毒剤はそこにあるはず」

トリスタン、一縷の望みをかけて出港。海を渡り、ついにアイルランドへ!

力尽きて浜辺で倒れていると、漁師たちがトリスタンを拾って王宮へ連れてってくれます。トリスタンがモルオルトを殺した騎士だとは知らない王様、お妃、王女イゾルデは「まあ、かわいそうに……」と同情。お妃が解毒剤をくれて傷を治してくれました。

トリスタンがたぐいまれな竪琴の盟主であると知った王様。トリスタンをイゾルデの竪琴の先生として採用。トリスタンは「タントリス」と偽名を使い、しばらくイゾルデの家庭教師をします。

イゾルデが上達したのを見計らい、トリスタンはそそくさとコーンウォールへ帰国しました。

黄金の髪の美女を探す旅

トリスタン、全快して帰国!でも、常にアンハッピーなこの騎士は休む暇がありません。またすぐに旅に出ることになります

マルク王、無茶苦茶な要求

トリスタンのおじさんマルク王、そろそろお妃を迎えなきゃならない年齢。そんなある日、ツバメが二羽、くちばしに黄金の長い髪をくわえて窓辺にやってきました。それを見たマルク王、いきなり何を思ったか

「わしの妻となる女は、この黄金の髪の持ち主の娘だ!わしはこの髪の持ち主のほかは一切気に入らない!」

と宣言。「えー」とドン引きの家臣たち。でもトリスタンだけは「ははあ、あの髪の毛はアイルランドのイゾルデの髪の毛だ」と、見覚えがありました。そこで

「分かりました。おじさん、その娘を連れてきますよ」と約束します。

竜と戦ってぶっ倒れるトリスタン

さて、そのころ、アイルランドでは竜が暴れ狂っていました。人々は日々竜に怯え、王様は「竜を倒したら娘イゾルデをやる」とお触れを出していました。

「よしっ。竜を倒してイゾルデゲットだぜ」

と、トリスタンは大張り切り。竜と一騎打ちの戦いをし、首尾よく倒して舌を切り取り、腰の袋の中へ。でも、竜に毒の息をかけられたので、めまいがしてぶっ倒れてしまいます。

王様からイゾルデをもらう

トリスタンが竜の隣で寝てるところへ、腹黒の家臣が一人やってきます。この家臣は、竜が死んでるのとトリスタンが死んでる(ように寝てる)のを発見。「やったあ。わしが竜を殺したと報告して、イゾルデゲットだぜ」と、竜の首を切って王宮に持っていきます。

イゾルデは泣いて拒否。「あんな家臣に竜が殺せるわけないわ」と、竜が死んでたところへ現場検証に行きます。現場にはまだ寝てるトリスタンが……。

「あっ。これは竪琴の先生タントリス。鎧と剣を持ってるし、多分この人が竜を殺したんだ」と確信。連れて帰って手当てします。やがて、息を吹き返したトリスタンは一切を告白。イゾルデはトリスタンの欠けた剣と、モルオルトの頭から出てきた破片が一致したことから「こいつがおじさんを殺した張本人だ」と気づきますが、背に腹は代えられません。

トリスタンは王様の前に、自分が切り落とした竜の舌と、家臣の持っていた舌のない竜の頭を並べて「自分こそ竜を殺した騎士」と宣言。イゾルデはコーンウォールのマルク王へお嫁入することになったのでした。

トリスタンとイゾルデ愛の媚薬を飲む

イゾルデ出港の日、イゾルデの母親は召使ブランジアンにワインの瓶を渡します。「これはワインに見えるけど惚れ薬よ。イゾルデとマルク王の結婚初夜にこれを飲ませなさい。そうすれば両想いになって万々歳よ」

召使ブランジアン、「分かりました!」と引き受けましたが、この人は超乗り物酔いしやすい体質。船に乗ったとたんゲロゲロになり、ぶっ倒れてしまいました。

一方トリスタンとイゾルデ、のどが渇いたので飲み物を戸棚の中で探していたら、例のワインの瓶を発見、喜んで二人で一滴残さず飲んでしまったのでした!

このシーンはなかなか劇的。

錯乱したように見つめ合う二人。

「いとしい人よ、あなたを苦しめるものは?」「あなたをいとおしと思うわたしの心です!」(岩波書店)

と語り合い、「さらば、死よ、来たれ!」と叫んで不倫の恋に飛び込むのでした!

トリスタン追放!運命に翻弄される二人

ブランジアンの船酔いのせいで、不倫の恋に陥ってしまった二人!イゾルデは泣く泣くマルク王に嫁ぎ、トリスタンはマルク王に仕える身でなすすべもなく、日々、ただおろおろと見つめ合うばかり……。

あっという間に二人の関係はその他大勢の家臣に露見!日頃、王に可愛がられているトリスタンを憎んでいる家臣たちがわなを仕掛けます。

トリスタン追放される!

家臣たち、マルク王に報告。

「トリスタンはお妃さまとけしからぬ仲ですぞ。あんな奴、追放するべきです!」

マルク王驚愕。この人、かなりのお人好しで全然気づいてなかったのです。

「ば、馬鹿な!そんなはずが……」

でも取りあえずトリスタンを追放。嘆くトリスタン、ひたすら城の周りをウロチョロ。イゾルデに合図を送り、庭で密会。

実はこの時、木の陰にマルク王や家臣たちが隠れて「密会してたら取り押さえるぞ」と見張っていたのですが、勘のいいトリスタンはすぐに察知。「お妃さま。なぜわたしが追放されたのか、理由が全然わかりません。なんとかお妃さまのお力でおとりなしを……」と、とっさの涙の演技。

これで疑いが晴れたトリスタン。また宮殿に返り咲くのでした。

トリスタン、またハメられる

でも、家臣たちにはバレバレだった、トリスタンとイゾルデの不倫。「今度は物的証拠を……」と、トリスタンのベッドとイゾルデのベッドの周りに、ひそかにパン粉がまかれます。トリスタンがイゾルデに深夜かよったら、足跡がつくはずです。トリスタンはすぐに気づいてパン粉の上をひとっ飛びしますが、狩りの時についた傷口から血が滴り、しっかり跡がついてしまったのです。

これでとうとうマルク王にもバレてしまったトリスタン。王の怒りは激しく、二人は火あぶりの刑にかけられることが決まります。

ついに火あぶりの刑に!土壇場で逃げるトリスタン

二人は縛られたまま、火刑台へ引き出されることになります。しかし、伝説の騎士はそう簡単に殺されません!

トリスタンは引き出される途上、段階から飛び降りて逃走。剣と鎖帷子を調達すると、真っ直ぐに火刑台の前に立つイゾルデに駆け寄り、彼女を抱えて逃げたのでした!

ここで有名な言葉

「御身ゆえに我は生き、御身ゆえに我は死ぬべし!」

漫画家、木原敏江が短編「月光城」で使った言葉ですが、このトリスタンとイゾルデが原典なんですよ~。漫画家って博識ですね!

駆け落ちのトリスタン

二人の恋人が落ち延びた先は、モロアの森。ここで二人は原始人のよーに獣を狩り、地べたで寝て日々を過ごします。

二人は割と幸せでしたが、ある日、楽園崩壊の時が……。

森番が二人が眠っている現場を見つけ、マルク王を報告。慌ててやって来たマルク王、二人を殺そうとしますが、二人が着衣のままで寝ているのを見て「あれ?二人は恋仲ではなかったのか」と勝手に勘違い。自分の剣を置いて帰っていきます。

イゾルデとの別れ

起きて王の剣を発見したトリスタン。一人で派手に嘆きます。

「ああ、王は自分を殺すこともできたのに、憐れに思って許したのだ。情け深い王様。顧みて私は何をしたか。彼女は王の元にいれば女王であったのに、わたしについてきたために奴隷女のような生活を強いられている。そうだ。イゾルデを王の元に返さなければならない」

こう考えたトリスタン。ついに逃亡生活に幕を下ろして、イゾルデを王の元に返し、自分は諸国放浪の旅に出たのです。

トリスタン、アーサー王の騎士になる

アーサー王と大勢の騎士、吟遊詩人の話を聞いて大号泣。

「ずいぶん詳しくトリスタンのことを知ってるね」

と言うと、「当然です。わたしがトリスタンですから」と激白。アーサー王は感激して、「そなたこそ、円卓の危険の座に座るべき人物!今日から君も円卓の騎士だ!」と、騎士に取り立てたのでした。

トリスタンの最期

トリスタンはアーサー王のためにいろいろ冒険を重ね、五年後に「白い手のイゾルデ」という名の姫と結婚。しかし、トリスタンはあくまでコーンウォールのイゾルデを忘れないので「白い手のイゾルデ」は大嫉妬。

あるとき、トリスタンは戦で毒槍に刺されて大怪我を負います。

「白い手のイゾルデ、コーンウォールのイゾルデを呼んできてくれ。彼女は母君から治療の技を受け継いでいる。彼女に助けてもらわなければ、わたしは死んでしまう」

知らせを聞いて、コーンウォールのイゾルデは即、船で駆けつけてきます。すでに起き上がれなくなっているトリスタンは

「妻よ、船の帆の色を教えてくれ。白だったら彼女がいる。黒だったらいないのだ」

船は白い帆でしたが、「白い手のイゾルデ」は嘘をつきます。

「あなた、黒い帆ですわ」

それを聞いたトリスタンはショック死。彼の死を聞いたコーンウォールのイゾルデも、後を追って死んだのでした。二人の墓の上には、赤と白の二本のバラが植えられます。二つの木は絡み合って、赤と白両方の花が咲く一本の木になったのでした。