中国史は龍だらけ!龍のエピソード4つ紹介!

2024年8月6日

こんにちは!坂口螢火(けいか)です。

三国志を読んでいると、「孔明は伏龍と呼ばれていた」とか「天子の龍顔を拝して」とか、とにかく龍って言葉がいたるところに出てきますよね?

中国人は昔っから、超が10個くらいつくほど、メチャクチャ龍が大好きです!中国史をひも解いてみると、どこもかしこも龍だらけ。これほど龍を愛しまくってる人種は他にいないでしょう。

今回は、中国人の龍LOVE度が分かるエピソードを4つ紹介します!

龍に乗って不老不死に!伝説のエンペラー黄帝

中国で最初に天子(皇帝)になった人は、史記によれば「黄帝(こうてい)」です!この人物、出生が謎すぎる人で

「母親が北斗七星の気を感じて妊娠した」

とか、

「ある日、稲妻がグルッと北斗七星の第一星を巡ってドドーンと落雷。それに気を感じて妊娠した」

など……。どういう「気」を感じたのか理解不能ですが、とにかく神秘体験をした結果、産まれたのが黄帝なんだとか。

この黄帝、色々な戦いに勝ちまくるとか、エライことをして帝王に上り詰めます。でも人間なので、そのうち年を取るんですが、この人はスーパーヒーローなので、フツーに死んだりしません!

ある時、黄帝は荊山(けいざん)という山に登って、封禅(ほうぜん)という儀式を行います。この儀式、「天と地の神を祭る」という、皇帝が行う大事な儀式。秦の始皇帝も漢の武帝も行ったという、けっこう有名な儀式です。

この儀式で、黄帝は青銅製の鼎(かなえ)(3つの脚があるナベみたいな奴)を製作。当時は石器時代がようやく終わって、とうとう金属器時代が到来したばっかりですから、ピカピカと金色に輝く青銅器はスペクタクルだったことでしょう。

と、その時!なんということでしょう!鼎が完成した瞬間、天空からイキナリ龍が降臨!黄帝に向かって

「迎えに来たよ。背中に乗ってね」

と、地面に降り立ったじゃありませんか!すると黄帝、何のためらいもなく

「いいの?じゃあ乗ろう!みんなも乗ろうよ!」

と、竜の背中にポーンと乗ったのです!そんで、そこにいた側近やら親族やら、数十人も「やったー!」とばかり同乗。そのままスーイスーイと空高く舞い上がったのでした。

この時、「俺も、俺も~」と、関係ない奴らも乗ろうとしたのですが、こいつらは置き去りにされたあげく、罰として髭が抜け落ちてしまったんだとか。

「白昼、黄帝が龍に乗って天に昇った」という話は、中国では有名すぎるほど有名なお話らしく、この場所は観光地にもなってます。日本で有名な唱歌「箱根八里」に出てくる「函谷関(かんこくかん)のすぐ近くです。

「龍に乗って昇天」は、日本人的には「死んで天に昇った」みたいに思えますが、中国では「フツーの人間を超越して、不老不死になる」と考えられています。神仙思想の一番古い例と言えそうですね。

「葉公、龍を好む」のに、逃げ出した葉公!

中国では「龍をデザインとして使っていいのは皇帝だけ!」と、皇帝の「龍、専有権」があったのですが……ぶっちゃけ、あんまり守られてなかったみたいです。

諸葛孔明は思いっきり「伏龍」とか呼ばれてるし、民話とか芝居とかにも龍が登場するし、龍大好きな人民たちは、皇帝を完全無視して龍を愛しまくってたのでした。

そんな龍LOVEな中国人の中でも、ピカイチで龍マニアな人物こそ「葉公(ようこう)」です!

この人、孔子と同じ時代な人で、孔子とも親交があったことで有名な政治家です。けっこう人格者で、とっても人望があったんだとか。

でも、この人にはさらに有名な特性が!

とにかく、ヤバいくらいの龍好きだったのです!家の中は龍だらけ。柱にも壁にも天井の梁(はり)にも、いたるところ龍をデザイン。龍が書いてあるものは絵でも書でもくだらないオモチャでも何でもかんでも集めまくり、毎日着ている服まで龍をあしらったもの……。

「ああ、龍カッコい~。こんなカッコいい生き物、他にいないぜ……」

と、日々龍を眺めてはウットリの葉公。

これを天から眺めてたのが、ホンモノの龍。……これほどラブラブに思われては、悪い気はしません。

「こんなにオレのことを好きでいてくれるなんて……。一度会いに行こう!」

と、ついに龍は表敬訪問することを決意!雲を従え、一陣の雨と共に、葉公の庭に降り立ったのでした!

この時、葉公は家の中にいたのですが、

「あれ?急に雨が……」

と思ったとたん、突然窓から

「葉公、会いに来たよ!」

と、ヌーッと巨大な龍が首を出したのです!これを見た葉公、腰を抜かさんばかりにビビりまくって、

「ギャーッ!食われる!助けてーッ!」

と、逃げ出してしまったのでした。龍は正直ショック。「オレが好きじゃなかったのかよ……」と、しょんぼりして帰っていったのでした。

龍の逆鱗ってどこにあるの?

「龍の逆鱗」ということわざがありますね。「目上の人に言ってはならないことを言って大激怒させる」という意味ですが、この「逆鱗」とは何でしょう?

この「逆鱗」について、詳しく記録してるのが韓非子(かんぴし)です!紀元前3世紀、戦国末期の思想家で、荀子(じゅんし)の愛弟子です。

では、さっそく韓非子の記録を読んでみましょう!

「龍という生き物は、うまく慣らせば、人がそれに乗れるほどおとなしい性格になる。ところが、龍ののどの下には直径一尺(23.09センチ)ほどの鱗が逆向きに生えている。もし、これに触れようものなら、たちまち龍にかみ殺されてしまう」

ということです!

なんで韓非子が龍について詳しく説明しているかというと、この人、政治の思想家で

「こういう風に、上司(君主)にもこういう「逆鱗」があるから気を付けてね。怒らせると殺されちゃうかもしれないから、進言する時にはよくよく注意するんだよ。そうすれば出世間違いなし!」(超絶意訳)

と、説明してるわけです。

でも、運の悪いことに、この後韓非子は殺されちゃいます……。韓非子は韓(かん)の国の人だったのですが、ここでは採用してもらえなくって、始皇帝の秦の国へ行くのですが、彼の才能を怖れた宰相に毒殺されちゃうんです!天才って苦労が多いですね。

絶対ウソだろう!画竜点睛の画家

5世紀から6世紀にかけての南北朝時代、張僧繇(ちょうようそう)という将軍がいました。この人、梁(りょう)の国のメチャクチャ身分の高い軍人(右軍将軍)でしたが、同時に高名な画家という超デキる人。「六朝の三大画家」に数えられます。
さて、この張僧繇、一番得意にしてたのが龍の絵。ある時、張は安楽寺の坊さんに頼まれて、寺の壁に四匹の龍を描きに行きました。
出来上がった絵は最高の出来栄え……!その場にいた人たちは「おお!生きてるみたいだぜ!」と感謝感激だったのですが、一つ気になる点が。
「張先生、この龍は四匹とも、睛(ひとみ)がないんですけど……。なんで?」
すると張僧繇、我が意を得たりとばかりニヤニヤして、
「フフフ、それがしの筆になる龍は、タダの龍じゃないのです。もしも睛を描き入れたら、たちまちこれらの龍は命を得て、壁を破って中なら抜け出し、天へ飛び去ってしまうでしょう」
これを聞いた周囲の人々、「ウヒャヒャヒャヒャ」と大爆笑!
「そりゃあ、うまい冗談ですね!絵の龍が天に昇るわけないでしょ!」
「張先生、大したホラ吹きですね!大概にして下さいよ!」
散々笑われた張僧繇、「じゃあ、見ててよ」と筆をとり、チョンチョンと二匹の龍に睛を描き入れます。
すると、たちまち!雷が鳴りだし、にわかにドシャーッと雨が降り出し、二匹の龍はムクムクと動き出して、ホントに壁から抜け出したのです!そして雲に乗ってスルーッと昇天してしまったのでした!
まだ睛を描いてなかった残りの二匹は、そのまま壁に残ってたそうですよ。

まとめ

いかがでしょう?ちょこっと探すだけで、こんなに龍のお話が!

中国人の龍への愛は大変なものがありますね。三国志で、皇帝や英雄や天才が龍にたとえられるのは、こうした背景があるからこそでしょう(^^)

 

お知らせ

三国志の新刊を出しました!

三国志に興味ある方、中国古代史が好きな方、物好きな方、読んでね(^^)

 

 

 

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