【北欧神話】ロキの3人の子供たち。その悲惨な運命!

2019年11月26日

北欧神話でおそらく一番人気者のロキ!彼(彼女?)には3人の子供たちがいます。

しかし、その子供たちはオーディンによって処分される無残な運命をたどるのです!今回は、その3人のかわいそうな人生を分かりやすくまとめてみました!

ロキと女巨人アングルボザ。3人の子供たち誕生

神々の国アースガルドで大活躍のロキ。しかし、ロキはもともと神ではなく、巨人族の出身です。

トールと一緒に何度も巨人の国ヨーツンヘイムに遠征に行ったロキは、だんだんホームシックになったらしく女巨人アングルボザといい仲になります。そして産まれたのが、フェンリル狼、ミッドガルド蛇、ヘルの3人。さすがロキの子!狼だの蛇だの、人型じゃないのばっかりです。

しかし、この3人が生まれると、大騒ぎしたのがアースガルドの神々。3人が見るからにぞっとする姿をしていたので、「こいつらは絶対大きくなったらヤバくなる」と不安になりました。そこで神々は全員で相談。3人の「運命の女神」ノルンに、彼らをどうするべきかを訪ねました。

ノルンの言うことには

「彼らの母親(アングルボザ)は悪い。だが彼らの父親(ロキ)はもっと悪い。彼らからは一番悪いこと以外の何も期待するな。あなた方を傷つけ、あなた方を危険にさらそうと思っているだけです」

そこで、オーディンはじめ神々はロキの3人の子供たちを捕まえて処分することに決めたのでした。

深夜、神々はアングルボザの家に押し入り。アングルボザを縛り上げ、さるぐつわをかませて、子供たちを拉致しました。

あわれ、子供たちの運命やいかに!

ミッドガルド蛇、海に捨てられる

兄妹の真ん中に当たるミッドガルド蛇(別名ヨルムンガンド)は大きな蛇でした。(オスかメスかがよく分かりません)

オーディンはこの蛇をひょいっとつかむと、いきなり迷うことなく海へポイっと投げ捨てます。ミッドガルド蛇はピューンと音を立てて飛んでいき、海へ真っ逆さま。そのまま海の底へブクブク……。

あわれミッドガルド蛇。ウミヘビになってしまった蛇は、そのまま深い海底で成長します。

このころ、世界はだいたい丸い形の大陸(ミッドガルド)が一つあって、その周りを海がぐるりと取り囲んでいました。ミッドガルド蛇は、大陸にそってどんどん育ち、とうとう大陸をぐるっと一周してしまいました(ミッドガルド蛇という名前はここからきています)。そして、自分のしっぽまで顔が届くようになったので、しっぽをハムハムするようになったのです。

ヘル、冥界に叩き落される

ヘルは3人兄弟の末っ子で、女の子です。彼女は上半身はフツーの人間と同じですが、下半身は腐り果てて、緑がかった黒い色をしています。表情はたいそう陰気(そんな姿だったら当たり前でしょう)だったそうです。

オーディンは、このヘルも迷うことなくアースガルドから投げ飛ばします。ヘルは真っ逆さまに地下世界(ニヴルヘイム、冥界のこと)に落ちていきながら、上から降ってくるオーディンの声を聴きました。

「これからニヴルヘイムに住め。お前のところに送られてくる死者、病気や年老いて死んだ者に食い物をやって世話をしろ」

こうして、冥界の女王になったヘル。彼女はここに大きな屋敷エリュードニルをもって、そこに住みました。巨大な壁で囲まれたこの屋敷は、「滅亡の坂」の向こう側にあります。

召使はガングレリとガングレト。使っている皿は「空腹」と呼ばれ、ナイフは「飢え」といいます。ベッドは「病床」、ベッドの天蓋は「不幸」です。

フェンリル狼、魔法の縄で縛りあげられる

オーディンはフェンリル狼に対しては油断していました。フェンリルは見た目は普通の狼と全然変わりがなかったからです。

しかし、フェンリルがどんどん大きく成長するにしたがって、神々は考えを変えました。また、ノルン(運命の女神たち)が「この狼がオーディンの命取りになるだろう」と予言したので、神々はこの狼を捕らえて縛り上げようという決断を下しました。(殺してアースガルドの聖域を血で染めることはできませんでした)

まず、神々はレーティングという強力な鉄の鎖でフェンリルを捕縛。「お前は力が強いよな!この鎖を切れたらすごいぜ!」とおだて挙げて縛りました。しかし、フェンリルは鎖で巻かれても「ムム……ツ」と力を入れて筋肉を震わせると、バーン!と鎖を弾き飛ばしてしまいました。

ビビった神々は、今度はもっと太い鉄の鎖ドローミを用意。この鎖でフェンリルをぐるぐる巻きにしたのですが、今度もフェンリルは体を一ゆすりひただけで鎖をバラバラに……。

「これはヤバい!もう神々の力だけじゃどうにもならない!小人の力を借りようぜ!」という結論になり、フレイ(豊穣の神、フレイヤの兄)の召使スキールニルを地底の小人たちの国に派遣。派遣社員スキールニルは、小人たちに報酬として大量に黄金を上げることを約束して、フェンリルを縛るひもを作らせました。このひもが最終兵器「グラウプニル」です。

グラウプニルは見た目はタダの絹紐なのですが、材料はたいそう珍しいものです。

・猫の足音
・女のひげ
・山の根っこ
・クマの腱(アキレス腱)
・魚の息
・鳥のつばき

という品々。

グラウプニルは見た目はあまりにチャチかったので、神々はうたがいます。スキールニルはそんな神々に、「あなた方は、今までなぜ猫には足音がないのか、女にはひげがないのか考えたことがありますか?それがないということを、証明することができますか?確かなことは、ないように見える多くのものを小人たちが持っていたということですよ」と説得。そしてこのグラウプニルで、フェンリルを捕縛することにしたのでした。

フェンリルはこのあやしー紐を見るなり、「え~、こんなんで縛られるの嫌だ」と反発。「まあまあ、見た目よりは強いんだぜ。それとも何かい?こんな細いひもが怖いのか?」神々も必死にその気にさせようとします。でも、フェンリルもバカじゃありません。この紐に、なにか魔法が欠けられているんじゃないかと怪しんで

「では、私を縛る間、神々の一人がわたしの口の中に手を入れていなさい。嘘を感じたらその手を食いちぎってやる」

と条件を出したのでした。

そこで、戦いの神チュールがフェンリルの口の中に右手を差し込みました。

縛られたフェンリルは必死でもがいてグラウプニルを切ろうと頑張ります。しかし、ひもはますますきつく食い込み、どうしても切れません。歯を食いしばり、ついにチュールの右腕は食いちぎられてしまいました。

神々は笑い転げて、縛られたフェンリルにさらに鉄の鎖を取り付けて巨大な岩に固定。その上、フェンリルの上あごと下あごの間に剣を差し込んで、口が閉じられないようにしました。

3人の子供たち、ラグナロクで復讐する

さて、このように聞くも恐ろしい運命にさらされた子供たち。

ロキが最期に神々を裏切ったのも、子供たちをこんな目にあわされたら当然じゃないか?という気がしますね。

子供たちはそれぞれ海底、冥界、縄でぐるぐる巻きにされたまま、ラグナロクが訪れるその時まで拘束されています。そして、ついにその時が来ると、鎖は切れ、神々に襲い掛かるのです。

積もり積もった恨みつらみで、ついにぶち切れたフェンリルとミッドガルド蛇!まずこの二人(?)は海をザバザバと渡って、神々に襲い掛かります。そしてミッドガルド蛇はトールと一騎打ちして相打ち。フェンリルはオーディンをパクっと一飲み。ついにここに恨みを晴らしました!

ヘルは女性なのでもっとおとなしく……。彼女は死者の爪で作った船ナグルファルに乗って、ロキと一緒に(親子一緒だよ!)アースガルドへ攻め入るのです。

こうして、めでたく子供たちは虐待の復讐をするのでした!

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