乙女座の乙女って誰?実は2パターンある!

2020年7月4日

黄道十二星座の中でも、かなり巨大な乙女座。ものすご~く頑張っても、全然乙女に見えない形……。

ところで、この乙女座の「乙女」っていったい誰なのか、気になるところですよね。

実はハッキリした神話が残ってないので、かなり昔から「乙女って誰だよ?」と議論が交わされ続けていました。その長い議論の結果、「たぶん、この人!」という説が二つあります。

このページでは、その二つの説と、乙女座にまつわるエピソードをいくつかご紹介します!

乙女座は農耕の女神だ!

一番オーソドックスな説は、ギリシャ神話で「農耕の女神デメテルである」というものです。ここではデメテルの神話で一番有名なものを。

いきなり娘をさらわれる

農耕の女神デメテルは世界中に豊かな恵みをもたらす神で、あらゆる作物、穀物を守護していました。ですから彼女のシンボルは麦で、いつも片手に麦を抱えてます。乙女座のクラシックな図柄を見ると、片手に麦の穂、もう一方の手にナツメヤシを抱えてます。

さて、この女神には一人娘のコレーがいて、女神はこの娘を溺愛していました。女神の娘ですから超絶美少女。しかし!あたら美少女を他の男神が見逃すはずがなく、ある日、コレーが一人で花摘みをしてる最中、いきなり地面がぱっかり開いて、冥界の王ハデスが出現。嫌がるコレーを無理矢理おそって、地の底へ引きずり込んでしまったのでした!

デメテル、ストライキをする

さて、コレー誘拐事件を一部始終見ていた神がいました。太陽の神ヘリオスです。彼は親切なので、母親のデメテルに

「コレーは冥界にさらわれたよ」

と教えてあげます。

デメテルは農耕の神で、あらゆる作物を生かすための神。死の国へは入っていけません。娘を助けに行けないと知ったデメテルは怒り心頭。

「世界中が泣いたって、娘を失ったわたしの悲しみには及ばない。こんな世界滅びてしまえばいい!」

と、神としての役目を全部放棄。農耕の女神がストライキに入ったので、世界は記録的な飢饉に陥ります。すべての植物は枯れ果て、あらゆる生き物は冥界への道をたどったのです。

神々、デメテルをなだめる

神々はこの事態を放っておけず、デメテルに山のような贈り物をして「機嫌を直して……」とおだてますが、デメテルは完全無視。

「こうなったら、ハデスを説得してコレーを母の元に戻すしかない」

と閣議決定したのでした。

ハデス、コレーを騙して妃にする

即刻、冥界に使者が送られ、コレーを返すように伝えれます。これを知ったハデスはガッカリ。コレーは狂喜乱舞。

しかし、ハデスは世界の始まりから生きてる神ですから、一筋縄ではいかない。喜んでるコレーの隙をついて、ザクロの実を四粒食べさせたのです。

冥界の食べ物を口にしたら、もう二度と冥界から出ることを許されません。コレーはまた冥界に戻らなけらばならない身となったのです。

この世に春と冬ができる

そんなことは知らないコレーとデメテルは喜びの再会。娘が母の元に戻ったとたん、世界は緑と花に満ち、この世に実りが蘇りました。

しかし、コレーはザクロを四粒食べてしまっています。それを知った神々の王ゼウスは、一年の十二か月を四つに分けて、三分の一の四か月を、コレーは冥界で過ごすように決めたのです。

以来、デメテル娘を失って悲しむ四か月は、実りのない冬となり、娘が戻ってくると春が蘇るようになったのです。

このデメテルが「乙女座」。つまり世界に春と実りをもたらす、ありがたい女神なのです。

乙女座は無邪気の女神だ!

「乙女座は農耕の女神デメテル」という説に反論するのがこれ。「乙女座は無邪気の女神アストライアである」というものです。

とゆーのも、デメテルは子持ちの母親なので、どう考えても「乙女」じゃないからです。

乙女座の隣にはてんびん座があります。これは「真実のはかり」といって、真実と嘘をはかる黄金の天秤なのですが、乙女座はこの天秤の持ち主、女神アストライアではないか、という説です。

人間たち、心が穢れる

ギリシャ神話では、「人間の歴史は四つに分かれている」とされています。

  1. 「黄金時代」一年中春で食べ物に困らず、人間たちは穢れのないピュアな存在だった。
  2. 「銀の時代」四季ができて、人間は農耕をするようになる。すると土地を争って争うようになった。
  3. 「青銅の時代」人間は武器を作って、戦争するようになる。
  4. 「鉄の時代」地面の下まで掘り返して、鉄を使うようになる。戦争激化。人間は騙し合い、殺し合い、も~救いようがなくなる。

何か、古代に作られた神話なのに当たってますね。

神々、人間を見捨てる

こうして、どんどんココロが穢れちゃった人間たち。神々は

「もう人間たちには、真実も正義も愛も期待できない。地上に行くのはもうやめよう」

と、次々に人間を見捨てて天へ帰ってしまいました。

唯一、人間から離れなかったのは無邪気の女神アストライア。彼女はうたがうことを知らないので、いつかきっと人間たちが真実に目覚めるはずだと、必死に人間たちを説得し続けるのです。

しかし、鉄の時代もだいぶ過ぎ、とうとうアストライアも泣き泣き天に昇り、彼女は乙女座に、彼女の天秤はてんびん座になったのでした。

乙女座のスピカは収穫のしるし!

乙女座は春の星座で、一等星のスピカが輝いています。

このスピカは、古代ギリシャでは「麦の星」と呼ばれていました。この星が明るく輝く時期になると、ちょうど麦が収穫できるからです。「乙女座」が「農耕の女神デメテル」と繋がったのも、このためだと考えられます。

日本ではスピカは何て呼ばれたの?

もちろん、日本でもスピカが見えます。スピカの和名は「真珠星」。

日本は海に囲まれた国で、星に海関係の名前をよく付けます。スピカは青白く光る星なので、ちょうど真珠のような色に見えたのです。

乙女座はもともと二つの星座だった

世界で最初に星座を作ったのは、古代メソポタミアです。

メソポタミアで作られた星座は、その後ギリシャに伝わりました。ギリシャ人は自分たちの神話をメソポタミアの星座に当てはめていったため、今の星座が存在するのです。

さて、乙女座はメソポタミアでは「ナツメヤシ座」と「はっぱ座」の二つの星座でした。これがギリシャに伝わったのですが、ギリシャにはナツメヤシが生えてません。そこで、

「ナツメヤシも葉っぱもどーでもいいよ。くっつけて乙女座にしちゃえ」

と、勝手にくっつけちゃったのでした!

まとめ

乙女座は正体不明の星座なので、いろいろロマンがありますね。

黄道十二星座については、Amazonキンドルから出版した「あなたの星座の物語」に詳しく語ってあります。十二星座すべての神話、エピソードが載ってるので、ぜひ読んでね!

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