【北欧神話 第1話】北欧神話の宇宙って?世界樹の周りの世界
神話の物語に入る前に
簡単な世界構成と、登場人物をおさえておくと読みやすいでしょう。
ここでは北欧神話の、複雑怪奇な宇宙をごくシンプルにご説明いたします。
「独特な宇宙。まるでラピュタな世界樹」
北欧神話が、他の神話と大きく違っている点。
それは世界樹を中心に、宇宙のすべてが動いている、という不思議な世界観です。
樹の名はユグドラシル、トネリコの樹です。
「万物の宿り」「永遠の樹」。その枝は美しい葉を茂らせ、この宇宙を緑で覆っています。
しかし、宇宙の生命そのものであるこの樹は、身をよじって泣いています。
樹の周りには、巨大な竜、蛇、鹿、リスなど貪欲な生き物たちが群がっていて、ユグドラシルの葉や皮や根を、ばくばくとむさぼっているのです。
「永遠なるもの」「しっかりと根を張ったもの」ユグドラシル。
永遠と思われるこの樹は、いつも欲に満ちた者たちに食い荒らされ、苦しんでいるのです。
この樹の姿は、破壊が進む私たちの地球を連想させてやみません。
世界樹の根。 神々と巨人のすみか
ユグドラシルの根は三つに分かれています。
一つは冥界「ニヴルヘイム」に。そこには死の女王ヘルが洞窟のような館で暮らしています。
二つ目は神々の住まい、アースガルドを取り巻いています。
ここには神々の王、オーディンが多くの神々と暮らしているのです。
アースガルドで忘れてはならないのが、「ウルドの泉」。
泉には運命の三人の女神「ノルン」が立っています。
ノルンの名は「運命」「存在」「必然」です。
このノルンたちが、人間の「誕生」「人生」「死」を決めるのです。
三つ目の根は巨人族の住まい、ヨーツンヘイムに届いています。
神々が「昼」なら巨人は「夜」。
彼らは世界の初めから対立しています。
異なる根の端で、両者は常ににらみ合っているのです。
ミッドガルド 人間たちのすみか
ところで三つの根を語ったのに、まだ出てこないのが人間です。
人間たちはどこに住んでいたのか?
先ほど少し触れましたが、神々と巨人は不俱戴天の仇でした。
そこで神々は、ムカつく顔を見なくていいように、アースガルドとヨーツンヘイムの間に「ミッドガルド」という広い垣根を作ったのです。
ミッドガルドを作ったちょうどそのころ、ある日のできごと。
海辺をお散歩中のオーディン。彼はニレとトネリコの流木を見つけました。
なぜかは知りませんが、オーディンは面白半分にその流木を彫刻。
神様の作品なので彫刻は命をもってひょこひょこ動き出しました。
これが人間のご先祖なのです。
「そう言えば人間はまだすみかがないな。ちょうどいい。ミッドガルドに住め」
こうしたわけで、ミッドガルドに人間が満ち溢れるようになりました。
話のついでにもう一言。人間の原材料、ニレとトネリコについて。
この二つの木は、槍と盾の材料、つまり武器の材料なのです。
だから人間は、生まれたときから戦いに明け暮れているのです。
ユグドラシルとその周り
ちょっと長くなりましたが、北欧神話の世界はだいたいこの通りです。
世界の中心ユグドラシル。
その周りに、アースガルド、ヨーツンヘイム、ミッドガルド。
細かく見れば他にもいろいろな場所があるのですが、この四点を覚えておけば、北欧神話は問題なく読めるでしょう。