【北欧神話 第1話】北欧神話の宇宙って?世界樹の周りの世界

2019年5月23日

神話の物語に入る前に

簡単な世界構成と、登場人物をおさえておくと読みやすいでしょう。

ここでは北欧神話の、複雑怪奇な宇宙をごくシンプルにご説明いたします。

「独特な宇宙。まるでラピュタな世界樹」

北欧神話が、他の神話と大きく違っている点。

それは世界樹を中心に、宇宙のすべてが動いている、という不思議な世界観です。

樹の名はユグドラシル、トネリコの樹です。

「万物の宿り」「永遠の樹」。その枝は美しい葉を茂らせ、この宇宙を緑で覆っています。

しかし、宇宙の生命そのものであるこの樹は、身をよじって泣いています。

樹の周りには、巨大な竜、蛇、鹿、リスなど貪欲な生き物たちが群がっていて、ユグドラシルの葉や皮や根を、ばくばくとむさぼっているのです。

「永遠なるもの」「しっかりと根を張ったもの」ユグドラシル。

永遠と思われるこの樹は、いつも欲に満ちた者たちに食い荒らされ、苦しんでいるのです。

この樹の姿は、破壊が進む私たちの地球を連想させてやみません。

世界樹の根。 神々と巨人のすみか

ユグドラシルの根は三つに分かれています。

一つは冥界「ニヴルヘイム」に。そこには死の女王ヘルが洞窟のような館で暮らしています。

二つ目は神々の住まい、アースガルドを取り巻いています。

ここには神々の王、オーディンが多くの神々と暮らしているのです。

アースガルドで忘れてはならないのが、「ウルドの泉」。

泉には運命の三人の女神「ノルン」が立っています。

ノルンの名は「運命」「存在」「必然」です。

このノルンたちが、人間の「誕生」「人生」「死」を決めるのです。

三つ目の根は巨人族の住まい、ヨーツンヘイムに届いています。

神々が「昼」なら巨人は「夜」。

彼らは世界の初めから対立しています。

異なる根の端で、両者は常ににらみ合っているのです。

ミッドガルド 人間たちのすみか

ところで三つの根を語ったのに、まだ出てこないのが人間です。

人間たちはどこに住んでいたのか?

先ほど少し触れましたが、神々と巨人は不俱戴天の仇でした。

そこで神々は、ムカつく顔を見なくていいように、アースガルドとヨーツンヘイムの間に「ミッドガルド」という広い垣根を作ったのです。

ミッドガルドを作ったちょうどそのころ、ある日のできごと。

海辺をお散歩中のオーディン。彼はニレとトネリコの流木を見つけました。

なぜかは知りませんが、オーディンは面白半分にその流木を彫刻。

神様の作品なので彫刻は命をもってひょこひょこ動き出しました。

これが人間のご先祖なのです。

「そう言えば人間はまだすみかがないな。ちょうどいい。ミッドガルドに住め」

こうしたわけで、ミッドガルドに人間が満ち溢れるようになりました。

話のついでにもう一言。人間の原材料、ニレとトネリコについて。

この二つの木は、槍と盾の材料、つまり武器の材料なのです。

だから人間は、生まれたときから戦いに明け暮れているのです。

ユグドラシルとその周り

ちょっと長くなりましたが、北欧神話の世界はだいたいこの通りです。

世界の中心ユグドラシル。

その周りに、アースガルド、ヨーツンヘイム、ミッドガルド。

細かく見れば他にもいろいろな場所があるのですが、この四点を覚えておけば、北欧神話は問題なく読めるでしょう。

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