【完全保存版!】アルゴー号の冒険あらすじまとめ

2020年7月19日

トロイア戦争、ヘラクレスの冒険に次いで、ギリシャ神話で名高い冒険譚「アルゴー号の冒険!」

と言っても、「え~、聞いたことない」って人が多いのでは?……それもそのはず、あなたのせいじゃありません。トロイア戦争の主役アキレウスや、誰もが知ってるヘラクレスに比べて、アルゴー号の主人公イアソン(聞いたことないでしょ)はヘタレなのです!

でも!主人公はヘタレでも、脇役はカッコいいのが目白押しです!ストーリーもなかなかにして突っ込見どころ満載。星座の話も盛りだくさん。

今回は、アルゴー号の冒険のあらすじを、どこよりも分かりやすく紹介します!

冒険はこうして始まった。イアソン、悪い王様にハメられる。

アルゴー号の冒険は、主人公イアソンと五十人の英雄たちが、アルゴー号という船で地の果てコルキスまで旅する物語です。まずは、どうして冒険が始まったのか、そのきっかけを紹介しましょう!

イアソン登場

昔、アイソンという弱々しい情けない王様がいました。彼には産まれたばかりのイアソンという息子がいたのですが、悪賢いぺリアスという弟に王座を乗っ取られてしまいます。よくある話です。

アイソンは自分では何もできないので、ケンタウロスの賢者ケイローンのところへ息子イアソンを連れて行って

「息子のイアソンを守ってください。イアソンがいつか大きくなったら、王座を取り返してくれるといいな」

と全部丸投げ。それでいいのかよ……、と思ってしまいますが、突っ込んではいけません。イアソンはちゃんと文武両道、礼儀正しく、しかも容貌にも恵まれた男に成長。ただし、性格だけはウジウジして煮え切りません。たぶん父親似です。

さて、成長したイアソンはさっそくぺリアスの元へ殴り込み。

「父アイソンから奪った王座を返してもらおう」

「ややッ……。父親はあんなに情けなかったのに、息子は全然似てないな……」

ぺリアスは想定外に一級品に成長したイアソンにビビりまくるも、いつかはこの日が来ると思っていたので、ちゃんと逃げ道を用意しておきました。

「いいとも、いいとも。ちゃんと王座は返すよ。しかしイアソンよ。王座に就くには、ちゃんと英雄としての証を立てなければならんよ」

「はあ……、そうですね。それはもう……」

「いいかね、イアソンよ。わしらの親戚にプリクソスとヘレという二人の兄妹がいてな。この二人は継母にいじめられて、それは辛い思いをしたそうだ。そこへ、神ヘルメスが王渾の羊を遣わし、二人が羊に乗ると、羊は空高くまい上がった」

「はあ……。何の話ですか?」

「まあまあ、最後まで聞きなさい。空の旅の途中、あわれ妹ヘレは海へ墜落。一方、兄のプリクソスは無事にコルキスの地まで飛んでいくことができた。今も、コルキスにはプリクソスを乗せた黄金の羊の皮が祀られているそうだ。もともとはわしらの親戚のものなのだから、イアソンよ、コルキスまで行って羊の皮を取ってきてくれ。そしたら王座を返そうじゃないか」

「はあ……。分かりました。取ってきます」

と、こんな感じで、イアソンは完全に悪い叔父さんに押し切られて、黄金の羊の川なんて訳の分かんないもんを取ってくることになっちゃったのでした。

集まれ!英雄たち!

さて、黄金の羊の皮がある、コルキスとはいずこにあるのでしょうか?

実は当のイアソンも「はい、取ってきます」と言ったくせに、全然知りませんでした。取りあえず周囲の人に聞いてみると、

「とんでもないことを約束したもんだね……。コルキスって、地中海を超えて、黒海を超えて、そのまた向こう……まあ、大体そのあたりだよ。太陽が一休みして昇ってくるところって噂だよ」

「ええッ。太陽が昇ってくるところ? つまり、この世界の東の果てってことじゃないか……そんな訳の分かんないところへ?ああ……、どうしよう。約束してしまったが、いったいどうやって大海を超えて行けばいいのか……。情けない。王座を取り戻しに来たというのに、父上に合わせる顔がない」

ぶっちゃけた話、イアソンは完全にハメられたわけです。やっと気づいたイアソンは完全に心が崩れてシクシク……。でも、話を聞いたその他大勢の英雄たちが、にこやかにイアソンを励まします。

「元気を出せ、王子!コルキスまで行くとは、歴史に残る大冒険じゃないか!この冒険に参加した者は、その名を永遠に語り継がれるだろう。力を貸すぞ。巨大な船を建造して、いっしょに船出しよう」

国を奪われた王子、前代未聞の大冒険のうわさを聞きつけて、我も我もと英雄たちが立ち上がります。その中には、有名なヘラクレス、オルフェウス、ふたご座の兄弟カストルとポルックスなど、誰もが一度は耳にしたことのある綺羅星が勢ぞろい。

集まった英雄たち、総勢五十人。彼らを乗せるために、名工アルゴスが腕を振るい、巨大な船を建造します。その船の名は、船大工の名を取ってアルゴー号。(この船に乗った人々は、その後アルゴナウタイと呼ばれます)五十人の乗組員を載せて、いざ出発!

いざ、コルキスへ!化け物大集合!

堂々と船出したアルゴー号。でも、行く手は苦難の連続です。全部紹介すると長すぎるので、ここでは代表的な冒険をいくつか……。

女だけの島に行く

うららかな日差しでポカポカ陽気。オルフェウスの竪琴で気分を盛り上げ、アルゴー号が最初に立ち寄った島はレムノス島。しかし……このレムノス島、とんでもない呪われた島だったのです。

この少し前、島の男たちはトラキアと戦争して、戦利品として若い女たちを連れて帰りました。男たちは妻を忘れて若い娘とじゃれ合う日々。妻たちは大激怒。「わたしという妻がありながら最低!天誅をくわえてやるわ!」と、一致団結して夫たちに酒を飲ませ、べろんべろんになったところを皆殺しに……。生き残った男たちもビビって逃亡。こうして、島は女たちだけになってしまったのでした。

女だけじゃ子どもが作れません。すっかり弱り果てていたところへ、降ってわいた幸運。筋骨隆々たる五十人の英雄たちが来たのです。女たちは狂喜乱舞でおもてなし。男たちも嬉しくないわけがない。子作りに励むこと、励むこと――何と一年にわたって乱交しまくったのでした。

一年たって、全員もれなく身籠った女たちの出産が始まります。その様子を見た英雄たち、

「俺たち、長くいすぎたかなあ……」

と、今更反省。唯一、男色家で女に溺れなかったヘラクレスが「ふざけんな!俺たちがアルゴー号に乗ったのは黄金の羊の皮を取りに行くためだろう。目を覚ませ!」と、それぞれの英雄たちが寝てる家のドアをバンバン叩いて回り、やっとアルゴー号は船出したのです。

ヘラクレス脱落する

レムノス島を出たアルゴー号は、その後苦しい航海を続けます。なんと十二日間も嵐にあい、さすがの英雄たちもヘトヘトに……。すっかり水がなくなってしまったので、彼らは水を求めてキオス島へとたどり着きます。

さて、このときヘレクレスはヒュラスという少年を溺愛していました(この男、冒険する先々で少年に手を出すとゆー性癖があります)。「島に上がって、さあ楽しもう!」と、ヒュラスと一緒に陸地に上がったヘラクレスでしたが、ここで思わぬ不幸が……。水を汲もうとして泉に行ったヒュラス。ところがこの泉の妖精たちが、ヒュラスに一目ぼれして、少年を水中深く引きずり込んでしまったのです!

ウキウキとヒュラスを待っていたヘラクレスは、少年が帰ってこないので大慌て。「ヒュラス、ヒュラス」と、まるで日露戦争の広瀬中佐のよーに(たとえが百年前ですみません)探し回ったのでした。

でも、見つかるはずもなく――とっくにアルゴー号に戻っていた乗組員たちは、いつまで待ってもヘラクレスが戻ってこないので「も~、待てないよ。出発しよう」と、先に行ってしまいました。

ヘラクレスはアルゴー号が行ってしまったのを見送りつつ、

「ヒュラスは見つからない。船も行っちゃったし……。もうギリシャに戻ろう」

と、一人帰っていったのでありました。

ポリュデウケス、ボクシングをする

一行はビテュニアという、訳の分かんない土地にたどり着きます。ここの王様は、海の神ポセイドンの息子アミュコス。この王様、大変な力自慢。メーワクこの上ないことに、この土地を通る旅人に必ずボクシングの試合を申し込み、負けたら殺すという最低な王様でした。

でも、今回の旅人はただもんじゃありません。英雄の一人ポリュデウケスが立ち上がり、「わたしが勝負しましょう。御安心なさい。絶対負けませんよ」と、拳に牛の皮を巻き付けて

「さあ、来い!」

と挑みかかりました。その気迫、全身を漂うヤバそうなオーラを感じ取ったアミュコス、「しまったッ!負ける!」と慌てましたが、もう遅い。一撃でポリュデウケスの拳はアミュコスのあごの骨を叩き割り、次の拳が耳に命中。大勝利でアルゴー号はビテュニアを去ったのでした。

ハルピュイア(ハーピー)と戦う

次にアルゴー号がたどり着いたのは、とっても不幸な王様、ピネウスの住むトラキア。この王様、盲目だったために神様に予言の力を授かったのですが、この力で「あんまり人々に未来を告げすぎる」と怒りを買い、王座を追われて険しい岸辺に住むようになった挙句、ハルピュイアという怪鳥を送られてしまいました。

ハルピュイアとは、顔が女で体が鳥。ピネウスが何か食べようとすると、あっという間に食べ物を片っ端から奪い、しかも臭すぎるフンをピネウスにかけていくのです。あわれピネウスは全身フンまみれになり、しかも神様から長寿を授かったために、何年も何も食べず、何も飲まないまま生き続けなければならないのです。

「気の毒すぎる!なんとか助けよう!」

アルゴー号の英雄たち、ピネウス救出作戦に打って出ます。背に翼を盛った英雄、カライスとゼテスが空に飛びあがり、ハルピュイアを追い払いました。

「さあ、食べなさい。もう大丈夫ですよ!」

感涙にむせんで、何年振りかの食事にパクつくピネウス。

「ああ!どんなに感謝しても足りない!これからの旅で気を付けることを、全部予言してあげましょう」

と、これからの注意点を教えてくれたのでした。

ボスポラス海峡の巨石を通り抜ける

ピネウス王が予言してくれたのは、「ボスポラス海峡を守る巨石を通り抜ける方法」でした。

この頃、ボスポラス海峡(今のトルコだよ。分かんなかったら世界地図を見よう!)には、二つの巨石がありました。ここを通り抜けようとすると、この巨石が磁石みたいにバシーンとくっついて、船をバラバラにしてしまうのです。ピネウスはこの恐ろしすぎる海峡を突破するために、知恵を授けます。

  • 巨石の近くに来たら鳩を飛ばしなさい。
  • 鳩が通り抜けようとしたら、巨石は閉じる。
  • 鳩がくぐり抜けたら、巨石はまた開く。
  • 開いて、また閉じるには少し時間がかかる。その隙に急いで通り抜けなさい。

アルゴー号はこの言葉通りにして、急いで海峡を通り抜けます。船尾が少し挟まって破損しましたが、無事に成功。このとき、巨石はあんまり勢いよくぶつかり合ったので、くっついて一つの岩になってしまったと伝えられます。

ついにコルキスへ!イアソン、王女メディアをゲット

とうとう、目的地コルキスへたどり着いたアルゴー号。ここで、イアソンに運命の出会いが……。王女メディアと出会って、黄金の羊の皮ゲットも近いです。

ついにコルキスへ!美女の姫、登場!

こうして、幾多の苦難をくぐりり抜け、ついにコルキスへたどり着いたアルゴー号!黄金の羊の皮を持っているアイエテス王の宮殿へ入ります。

「王様!黄金の羊の皮をください」

頼みますが、断られます。当たり前です……。黄金の羊の皮はコルキスにとっても国宝。何しろ、神様の羊の皮です。実は!この黄金の羊、天に輝くおひつじ座です。元はヘルメスがかわいそーな兄妹を救うために天から下されたスーパー羊なのですが、兄妹を救った後は天に昇っておひつじ座に。毛皮はコルキスの国宝になっていたのでした。

こういうスペシャルな毛皮ですから、王様もそうたやすく手放しません。イアソンたちに無理難題を押し付けます。

  • わが国には火を吐く牛がいて、畑を焼く尽くして困る。この牛を飼いならして畑を耕せ。
  • さらに我が国に住んでる竜を退治してこの竜の歯を畑にまけ。
  • そーしたらその竜の歯が兵士になるから、その兵士を全部退治しろ。
  • 合格!羊の皮をプレゼントするよ。

と、ムチャクチャややこしい問題。

「えー、マジで?」

とドン引きのイアソンでしたが、皆さん、覚えておいででしょうか。彼、イアソンは性格はヘタレですが、顔は素晴らしく美形なのです!美しい金髪。輝く顔立ち。秀でた骨柄。何と、王様の娘メディア王女が、このイアソンに一目ぼれ。

「ああ、なんて素晴らしい男……。わたしには、この人しかいないわ!」

と、魂を抜かれてしまったのでした!

王女メディア、イアソンを助けまくる

実は、この王女メディア、ただの王女じゃありません。あらゆる薬草に通じ、魔術の天才。イアソンに恋い焦がれる彼女は、

「このままでは、イアソンが殺されてしまう。助けなければ」

いたたまれず、秘密の箱から「プロメテウスの草」という謎の薬草を取り出します。この薬草、身体に塗りつければ、なんと火に焼かれても、剣で突かれても全然ケガしないというすごすぎる薬草なのです!

彼女はとっておきの薬草を、ひそかにイアソンに手渡し、イアソンはこの助けで見事に火を吐く牛をクリア。やけどしない身体になったイアソンは、鉄をも溶かす炎を吐く牛をものともせず、がっきと受け止め、とうとう言うことを聞かせて鋤(すき)をはめ、畑を耕してしまいます。

イアソンは耕した畑に王から受け取った竜の歯を蒔き、そこから生えてきた兵士たちも全滅させてしまいました。(メディアに教わった方法で)

こうして、王の試練を全部終わらせることができたのです(^^♪

メディア、イアソンと駆け落ちする

王様のアイエテスはすっかり仏頂面に……。

「まさか、あの無茶苦茶な注文が成功するなんて……。ムム、約束はしたが、国宝の黄金の羊の皮を渡すわけにはいかん。そうだ、アルゴー号の連中を殺してしまおう」

よこしまな考えを巡らす王でしたが、娘のメディアの目はごまかせません。

「父上がイアソンを殺す前に、あの人を助けよう」

と、すぐさまイアソンの元へ。

「黄金の羊の皮は、森の中で竜が守っています。わたしが魔術で竜を眠らせますから、あなたはすぐに羊の皮を取って、そのままこの国を出るのです。でもお願いがあります。あなたに手を貸したからには、わたしもこの国にはいられません。わたしを連れていって、その後も決して見捨てないと誓ってください」

メディアは美人だし、手伝ってくれるのですから、イアソンは即、承諾。メディアと共に夜の森の中へ……。そこには、木に引っ掛けてある光り輝く羊の皮。そして、その前には巨大な竜がうなり声をあげていました。

イアソンは竜を見るなりビビって尻込みしましたが、メディアは平然と呪文を唱え、竜を眠らせてしまいます。これでイアソンは「よかった~」と羊の皮を取りに行き、意気揚々とアルゴー号へ戻っていきます。

明け方、アルゴー号へたどり着いた二人。英雄たちは燦然(さんぜん)と輝く羊の皮に目を見張り、「ちょっと触らせろよ」と引っ張り合い、イアソンはやっと彼らを制して毛皮をしまいます。やがて剣でともづなを切り、帰国の途へついたのでした。

魔女メディアと駆け落ち。アルゴー号、ギリシャへ帰る。

とうとう黄金の羊の皮をゲットしたアルゴナウタイ。でも、帰り道も苦難の連続です。またしてもメディアは大活躍します。

メディアの弟バラバラ事件

帰国の喜びに沸き立つアルゴー号でしたが、そうは問屋がおろしません。アイエテス王は、すぐさまメディアがいないこと、黄金の羊の皮が取られたことに気付いて、おびただしい軍船を差し向けました。

あっという間に四方八方囲まれてしまったアルゴー号。乗組員たちはビビって、すぐさま降参することにします。

「もう駄目だ!メディアを渡して、許してもらう他ない」

恩を仇で返すとはまさにこのこと!あれだけ世話になっといて、この態度。これにはメディアも激怒します。

「ついさっき、決してわたしを見捨てないと誓ったくせに!許せないわ。わたしは魔術が使えると言ったでしょう。この船を焼き払い、その炎でわたしも死ぬわ!」

この言葉に恐れをなした英雄たち。「怖すぎる……。魔女を怒らせたらヤバい」と、必死になだめすかします。

「いや、向こうの軍船の中には、君の弟のアプシュルトスもいる。激戦になったら、君の弟を殺すことになってしまうだろう。それを怖れたのだ」

と、心にもないことをペラペラと……。なだめられ、おだてられて、メディアはようやく気を静めて、言います。

「いいわ。ではこうしましょう。わたしを渡すと、嘘の使者を立てて、弟をおびき出してください。その後はわたしが何とかします」

こうして、彼らは言われた通り使者を立て、弟アプシュルトスをまんまとおびき出します。何も知らないアプシュルトス少年(メディアの弟だからまだ小さい)、「姉上、いっしょに帰りましょう」と寄ってきました。すると突然!メディアは弟を捕まえて短刀で突き刺し、その身体をバラバラにして海に投げ捨てたのです!

それを見たアイエテス王、「ああ!アプシュルトス!何とか身体を集めてくれ!もしかしたら何とかなるかも……」(いや、何ともならないと思いますが……)と泣き叫びます。

一方メディアは、あまりの出来事に蒼白になっている英雄たちを叱り飛ばし、「父上の軍船が弟を集めている間に逃げるのよ。早く!」と、アルゴー号を進ませたのでした。

キルケに何とかしてもらう

無事に逃げたアルゴー号でしたが、今度はいきなり大嵐に遭います。先ほどのバラバラ事件でドン引きした英雄たち、

「この嵐はメディアのせいだ!お前が罪もない人の血で海を汚したから、神がお怒りなんだ!」

と、メディアを殺して海に投げ込もうとします。と、その時、いきなり船の選手に飾ってあった女神像がペラペラとしゃべりだします。

「メディアを殺すのはやめなさい。メディアはすぐ近くにあるアイアイエ島へ行って、そこの魔女キルケに罪を清めてもらえばいい」

とのこと。この船、ドトナの木という神木で作ったので、ただもんの船じゃなかったのです。

船の言う通り、メディアはキルケの元へ行ってお祓いしてもらいます。すると、突如空は晴れ渡り、また無事の航海を続けることができたのでした。

キルケは「オデュッセウスの冒険」にも出てきます。気になる人はこちらから↓
オデュッセウスは地中海一の冒険者!知恵と根性の英雄の生涯

セイレーン登場!がんばれオルフェウス!

先を急ぐアルゴー号、でもギリシャは遠い……。途中、恐ろしい場所も通ります。その一つがセイレーンの島。

セイレーンは英語でサイレン。パトカーとか消防車のサイレンの語源ですね。顔は美しい女で、下半身は鳥とか魚。人魚伝説のご先祖様です。岩の上で得(え)も言われぬ美しい声で歌い、その歌声を聞いた船乗りは魂を奪われて、もっと近くで聞きたくて居てもたってもいられなくなり、ついには海へ引きずり込まれてしまうという魔性の女です。

さしものアルゴー号の船員たちも、この歌声を聞いた途端、正気を失ってしまいます。次々に船べりへ走って行き、海へ飛び込もうとする彼ら。すると、これに危機を覚えたオルフェウスが

「みんなしっかりしろ。わたしの歌を聞け」

と、竪琴鳴らして歌い出しました。オルフェウスは歌の神アポロンの息子。音楽の天才で、彼が歌うと動物も耳を傾け、雲も川も流れるのをやめるという伝説の持ち主。あっというまにセイレーンの歌声も蹴散らし、英雄たちは正気を取り戻したのでした。

青銅の巨人、タロスを退治する

いろいろあって、クレタ島を通ったアルゴー号。クレタ島には、タロスというとんでもない巨人が住んでいました。

この巨人、クレタ島の王、ミノス王の家来。全身青銅でできていて不死身。どんな敵が襲ってきても踏みつぶしてしまい、船が来ると巨石をぶん投げて静めてしまうという厄介者。一日に数回、島中見回って、敵が来ないか見張っているのです。まるで、鉄人二十八号みたいな超合金ロボットです。(いちいち例えが古くてすみません)

超合金ロボにおたおたとうろたえるイアソンでしたが、ここでまたメディアが大活躍。

「大丈夫よ、まかせて!タロスは全身青銅だけど、かかとだけ血が通っていて栓がハマっているのよ」

と、コルクみたいな栓をポンッと抜いてしまいます。とたんにタロスはピューッと血が抜けてしまって、死んでしまいました。

その後も様々な土地を巡って、妖怪、お化け、難所、迷子になる……など、いろいろあったアルゴー号ですが、とうとう故郷ギリシャへたどり着きます!

故郷を出て四年。ついにアルゴー号は黄金の羊の皮を持って、帰ってきたのでした!

アルゴー号の冒険、後日談。メディア、壮絶な復讐をする

さて、ついに帰ってきたアルゴー号。でもまだ、イアソンの王位継承の件が残ってますよね。イアソンの父から王位を奪ったぺリアスが、

「黄金の羊の皮を持って帰ったら、王位を返す」

と約束していました。ここからは、その事件の結末をまとめて紹介します。

ぺリアス王、釜ゆで事件

やっと故郷へ帰ってきたイアソンでしたが、もともとぺリアス王は、イアソンに王位を返す気なんてこれっぽっちもなかったのです。イアソンが「さあ、王位を返せ」と言っても知らん顔。しかも、彼の家族は大変なことになっていました。

イアソンが去った後、彼の父はぺリアスの嫌がらせに耐えかねて死亡。母親は首をつって死んでいました。

あまりのことに、呆然自失のイアソン。これを知ったメディアは、悲しみのあまり何もできない夫のために、復讐を決意します。

「イアソンをこんな目に遭わせたぺリアスを許しておけないわ。両親を死に追いやったぺリアスも、死をもって償わせなければ」

策略を巡らしたメディア、ぺリアス王の前で、秘術を見せます。薬草を煮た大なべに年取った羊を入れ、呪文を唱えると、羊はすっかり若返って鍋から飛び出してきました。

「若返りの術です、王様。いかがですか」

年を取ったぺリアスは大喜び。意を決して鍋に飛び込みます。しかし……当然ながら、メディアは呪文を唱えません。鍋の中で、ぺリアスはすっかりぐつぐつ煮えて死んじゃったのでした。

イアソン、まさかの浮気。メディア、女を焼き殺す!

こんな壮絶な復讐をしたら、国にはいられません。イアソンはぺリアスの息子に王位を譲って、メディアを連れて他国へ逃れました。

でも、この頃になるとイアソンは、メディアの激しい性格について行けなかったようです……。イアソンはもともとヘタレでうじうじと弱気な性格なので、メディアが散々助けてくれたことも忘れて、彼女の魔女としての恐ろしい面ばっかり目についていました。

なんと、逃亡先のティリンスで、イアソンはそこの王女グラウケに浮気してしまいます。グラウケの父も、「アルゴー号の英雄が婿になってくれるなら、王位はお前に譲るぞ」と言い出しました。

大人しいフツーの王女が手に入る上、王位までプレゼントと聞いて、イアソンはとうとうメディアを捨てることを決意。イアソンとメディアの間には、二人の男の子もいたのですが、イアソンはこの二人の子供をメディアから取り上げて、離婚を宣言します。

「魔女のお前とは、もう一緒に暮らせない。子供はオレが引き取る。お前はこの国から出ていってくれ」

メディアは衝撃を受けます。あまりの裏切りに、彼女は恐ろしい復讐を誓いました。

大人しく身を引くと見せかけたメディアは、まず夫を盗んだ王女グラウケに絢爛な衣装を贈ります。グラウケは美しい衣装を見て、喜んで身にまといましたが、実はこの衣装、毒薬を仕込んであったのです。突如衣装は燃え上がり、グラウケは炎に包まれて死んでしまいます。娘を助けようとした王様も、火が燃え移って焼け死にました。

「何ということだ!魔女め、許せない、殺してやる!」

急いでメディアの元へ走ったイアソン。そこで彼が目にしたものは……メディアの足元で死んでいる、二人の息子の無残な姿でした。

「何もかもあなたのせいよ。わたしが国を捨ててあなたについて行ったとき、生涯決して見捨てないと誓ったのに。簡単に殺しはしないわ。死ぬより恐ろしい罰を、あなたは受けるべきなのよ」

むせび泣きつつ、メディアは子供の死体を竜の退く車に乗せて、そのまま夜空へ消えていったのでした。

何もかも失ったイアソンは、そのまま魂が抜けたようになって、年取って死んでしまったのだそうです。

お勧め作品

このマンガはお勧めです。アルゴー号の冒険から、メディアの復讐譚まで全部分かりやすくマンガで読めますよ!

まとめ

長々と失礼しました。(書いてても疲れました……)

アルゴー号の冒険は、きらびやかな英雄たちの活躍が盛りだくさんですが、ラストはあまりにも後味が悪いというか……悲惨な結末ですね。

ギリシャ神話は総じて「無惨なラスト」ばっかりです。ハッピーエンドで終わる話は99パーセントありません。哲学の国ギリシャは、「人生とは、あまりにも理不尽なことが多すぎる」ということを知り尽くしていたのかもしれませんね。

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