伝説の宝石とは?神話やファンタジーに登場する宝石と、その和名

2025年7月27日

星座や花にまつわる神話や伝説のエピソードって有名ですが、案外宝石のエピソードって知らないですよね。

ここでは、「この世に存在する宝石のエピソード」と、「ファンタジーにしか存在しない宝石のエピソード」とまとめました!お好きな宝石のエピソードを楽しんでください!

アダマント(ダイヤモンド)

和名:金剛石(こんごうせき)

アダマントとは、ダイヤモンドをはじめ、とにかく堅い金属、「征服されないもの」を意味するギリシャ語、アダマス(αδάμας)からきてきます。だから特にダイヤモンドだけを指しているわけではないのですが、ダイヤモンドが一番堅い宝石ですから、時代が下るにしたがって「アダマント=ダイヤモンド」みたいな感じになりました。ギリシア神話の中では、プロメテウスが縛られた鎖は「アダマントで作られていた」とされています。

ファンタジー作品では、アダマントはしばしば魔法の武器や鎧に使われ、その不屈の強さで知られています。ダイヤモンドとして描かれることも多く、その硬さと美しさが英雄たちに与えられる強大な力を象徴しています。

 アイオライト

和名:菫青石(きんせいせき)


すみれ色をした美しい宝石ですが、見る角度によって紫、青色、黄色(ほとんど透明?)に変化します。伝説によれば、昔のバイキングはこの多色性を利用して、アイオライトを太陽にかざして「青が鮮明に見える方角に船を進めた」と伝えられています。科学的根拠は全くないのですが、長い間バイキングの間では、この石を持っていれば嵐に遭わず、無事な航海ができると信じられていました。

現在ではアイオライトとよく似たタンザナイトが発見されて、「なんとなく紫っぽい石」はタンザナイトに取って代わられてしまい、市場に出回らなくなりましたが、長い伝説のある面白い石です。

サファイア

和名:青玉(せいぎょく)

天空のような青さを持つサファイアは、古来「英知を授かる石」として珍重され、世界中の神話に登場します!神話の多さはルビーに張りますね。

インドではサファイアを水に入れて飲めば、サソリの噛み傷に効くと信じられていました。ギリシャ・ローマでは「王者がこの石を身につけていれば、危害から守ってもらえる」とされていたし、中世では聖職者たちが「天国の象徴」として尊んでいました(天国は青い空の上にあるから)。

ファンタジー世界では、サファイアは知恵の象徴として描かれることが多く、魔法の杖や書物にセットされ、知識を深めるための力を持つとされています。魔法使いや賢者がこの石を持つことで、その力がさらに強化されるのです。青い天空の色を持つ石なので、「天の恵みを秘めた石」と思われてたんですね。

エメラルド

和名:緑玉(りょくぎょく)、翠玉(すいぎょく)

エメラルドは「緑の火」と呼ばれ、紀元前四千年前にはすでにメソポタミアで売買されていたことが分っており、その歴史は長いです!

聖書では、ソロモン王が神からエメラルドを授けられたと書かれており、あらゆる宝石の中でもトップクラスに位の高い石です。

ヘルメス・トリスメギストスが記したという錬金術の書は「エメラルド碑文」といい、十二の錬金術の扇が記されていると伝えられています。伝承によれば、平べったいエメラルドの板に描かれているんだとか。

ギリシャの博物学者プリニウスは「これより深い緑はない」と記しています。エメラルドには治癒能力があり、特に目のためにはいいと力説しています。「わたくしたちは緑色の草や葉をむさぼるように眺めるが,同じ緑色といっても,エメラルドに比すべき良質のものはどこにもないので、これ以上目にここちよい色はない」とのこと。職人たちが目が疲れた時、エメラルドを見ると良い、とされていました。カエサルも兵士たちを治癒するためにしきりにエメラルドを集めたんだとか。おそらくは、エメラルドの深い緑色が「癒しの力」のイメージを生み出したのでしょう。

また中世ヨーロッパでは、エメラルドを魔よけのために使いました。「エメラルドを左の腕につけておくと、悪魔の魔力に迷わされることがない」とされ、また逆の使い方もあって、「エメラルドを下の上に乗せると、悪魔を呼び出すことができるし、悪魔と会話することができる」とも言われていました。

ペリドット

和名:橄欖石(かんらんせき)

この石は、ちょっと面白い歴史があります。

古代エジプト王朝では、この石は「太陽神ラーの輝きを持つ石」として珍重されてました。……ここまでは、まあフツーなんですが、問題はその後!

実はこの石、もともと「トパーズ」と呼ばれていました。この石を産出した紅海のセント・ジョン島は年中霧が深く、鹿もたくさん似たような島があるので、人々が必死になって島を捜したことから、「探し求める」というの意味のギリシャ語topaziosが当てられてんだとか。

ところが!その後、現在よく知られているトパーズに取って代わられ、「ペリドット」になったんだとか。いつ、どうやって変名したのかは謎です。

ペリドットはフツーに河原でも拾えるほどありふれた石なので、あちこちの神話に登場します。聖書では「火の石」として、モーゼが神様から授けられているし、ハワイではペリドットが火山の噴火によってよく産出されることから、火の女神ペレの涙が固まってできた石と言われています。

エジプトの女王クレオパトラはエメラルドが好きで、大量にエメラルドを集めていたそうですが、そのコレクションの大部分はペリドットだったらしいです。というのも、クレオパトラ鉱山から産出するペリドットが、エメラルドにも比する緑色をしていたからなんですよ!

ルビー

和名:紅玉

ルビーはスリランカをはじめ、東洋で多く産出します。東洋では古来「太陽の宝石」、インドでは「宝石の王」と呼ばれていました。

ルビーは血の色をしているため、ビルマ(ミャンマー)では古来、兵士がこの石を身につけていれば、命を守られると信じられてきました。またインド神話の「ラーマーヤナ」では、羅刹の王ラーヴァナが殺された時、流れた血が石を赤く染め、それがルビーになったといいます。

スリランカでは多くスタールビーが産出されるのですが、このスタールビー、白い光の線が三本交差する形をしているので、ヨーロッパではこの白い光を「三つの剣」と呼び、護符として珍重しました。この石を身につけていれば、邪悪を追い払い、幸運を運び、良き伴侶を見つけることができると言われています。

また、中世ヨーロッパの古い言い伝えでは、

「ドラゴンの額のまんなかには赤味を帯びた一個の目があって,〈カルブンクルスcarbunculus〉(ラテン語で〈小さな炭火〉の意)と呼ばれている。カルブンクルスはどんな宝石よりも赤い燃えるような光を放っていて、いかなる闇をもってしても、この晃(こう)々たる光を消すことはできない」

と言われています。このカルブンクルス、ルビーのことを示していたのですが、当時は赤い宝石を種類別に分ける化学技術がなかったので、赤い宝石はルビーやガーネットもスピネルもみんなひっくるめて「ルビー」と呼んでいました。

 オパール

和名:蛋白石(たんぱくせき)

オパールは、「中に虹を宿らせた宝石」とされ、ギリシャ・ローマの時代から特別視されていました。ギリシャではオパールを「洞察力と予言の力を持つ石」とし、ローマでは虹を持っていることから「希望と純粋さの象徴」としていました。

アラブでは「天から降ってきた稲妻が、地面で石化したもの」と信じていました。そのため、オパールには超自然的な力が宿っており、好ましくないことから身を守り、望めば持ち主の姿を消してくれるという言い伝えもあります。

ところで、オパールの産地として最も有名なのはオーストラリアで、世界でぶっちぎりの産出量を誇ります!

このオーストラリアの先住民の神話では、オパールは神々が天から降りてきた証として神聖視されてきました。「造物主は虹に乗って地上に降り立った。造物主が地上を歩くと、その歩いたあとの石に命が宿り、虹色に輝きだした」これがオパールであり、虹の力で持ち主に幸運を授けると言われています。

 

 

ここから下は、この世に存在しない、ファンタジーだけの宝石です!

ドラゴナイト

中世ヨーロッパ

ドラゴナイトとは、生きているドラゴンの額に輝く宝石のことです。暗闇でも光り輝く美しい赤色で、魔法の力を持つとされます。ルビーやガーネットがこの石だと信じられていました。

鹽盈珠(しおみちのたま)・鹽乾珠(しおひのたま)

日本神話

古事記の「海幸・山幸」の物語に登場する宝石です。

主人公、山幸彦は実の兄海幸彦の釣り針をなくしてしまい、海の底に取りに行くことに。釣り針を無事ゲットして、再び地上に戻るとき、海神から「鹽盈珠(しおみちのたま)・鹽乾珠(しおひのたま)」というスーパーアイテムをもらいます!

「この釣針を兄に返す時、『この針は、おぼ針、すす針、貧針、うる針(憂鬱になる針、心が落ち着かなくなる針、貧しくなる針、愚かになる針)』と言いながら、手を後に回して渡しなさい。兄が高い土地に田を作ったらあなたは低い土地に、兄が低い土地に田を作ったらあなたは高い土地に田を作りなさい。兄が攻めて来たら鹽盈珠で溺れさせ、苦しんで許しを請うてきたら鹽乾珠で命を助けなさい」

と、海神はとんでもないアドバイス!つまり、鹽盈珠(しおみちのたま)・鹽乾珠(しおひのたま)は水を満ちさせたり干上がらせたりを自在にできる玉だったのです。山幸彦はこの通りにして、兄貴をさんざん水攻めにして苦しめ、兄貴下僕化計画に成功したのでした!

人魚の涙

中世ヨーロッパ

ある時、人間の船乗りに人魚が恋をしてしまいましたが、海の神ポセイドンはこれを許さず、二度と人魚が船乗りに遭えないように閉じ込めてしまいます。人魚は船乗りを思ってとめどなく涙を流し、これが「人魚石」になったと言われています。

その後、船乗りは浜辺で光り輝く宝石を見つけ、その後航海に出る時にお守りにして身につけたところ、信じられないほどの勇気が湧いたことから、人魚石はその後船乗りのお守りとして珍重されることになったんだとか。

この「人魚石」、この世に存在しない石ではありますが、アクアマリンや真珠がその石であるとも言われています。

リンギュリウム

中世ヨーロッパ

古来、中世ヨーロッパでは山の奥に潜む大ヤマネコは「すべてを見通す目」を持っていると言われています。どんな山や大岩をも貫き、遥か彼方まで見通す目。その上、その内部まで透かして見ることができるという、レントゲンのような視力です。ですから大ヤマネコは「あらゆる噓を見抜く」「真実の眼」の象徴でもありました。

さて、この大ヤマネコは目以外にも特別なものを持っていまして、彼らの尿は「赤い宝石になる」と信じられていました。

大ヤマネコは尿をするとき、山奥に穴を掘って、そこに排尿します。すると尿は透き通った美しい赤い宝石となるのです。しかし、大ヤマネコは尿をするとその上から土を書けてしまうので、熟練した探索者でなければ、この石を見つけることはできません。

リンギュリウムの最も古い記録はギリシャで、おそらくこのリンギュリウムの正体は、ギリシャでは採掘されないトルマリンではないかと言われています。

スヤマンタカ

ヒンドゥー教

ヒンドゥー教の主神ヴィシュヌが手首につけている宝石です。持ち主が善人ならばその人を良く守護し、悪人ならば亡ぼしてしまうと言われています。

 

 

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