ギリシャ神話じゃない!さそり座の物語2話

2020年7月4日

さそり座の神話と言えば、真っ先に思いつくのはギリシャ神話!狩人オリオンをどこまでも追いかけ、毒針で殺したエピソードはあまりにも有名。

ですが、当たり前ですが星座は世界中の空に見られますので、ギリシャ以外の星座の神話も存在します!南太平洋や日本では、さそり座の名前は「釣り針座」。

ここでは、南太平洋、日本に伝わるさそり座の神話、2つご紹介いたします!

南太平洋の神話。マウイの釣り針

昔、南太平洋ポリネシアに、五人の兄弟が年取ったおばあさんと暮らしていました。このおばあさん、なんと百を超えるご長寿!もう目も見えず、寝たきり状態。兄弟たちは毎日交代で、おばあさんの小屋まで食べ物を運んでくるのでした。

が、面倒くさくなった兄弟。

「もう死ぬばっかりの年寄りだ。食わせるだけもったいない」

と、食べ物を運ぶのをやめてしまったのでした!あわれ、おばあさんは飢え死に寸前……。

しかし、末っ子マウイだけは優しい少年だったので、自分の番の日にちゃんと食べ物を持ってきました。おばあさんは涙を流して

「おお、マウイや。お前だけがわしの孫だよ。わしが死んだら、あごの骨を外して釣り針を作りなさい。魔法の釣り針になるからね」

と、トンデモナイ遺言を残して死亡。マウイは泣きましたが、言われた通りおばあさんのあごの骨をバキッと外して、それで釣り針を作ったのでした。(本当に優しいのか?この少年)

さて、釣り針を作って、兄たちと釣りに出かけたマウイ。魔法の釣り針を投げると、ものすごい手ごたえ!

「これは大きいぞ!マウイ、離すなよ!」

兄たちも手伝って竿を引きます。すると、海面に出てきたのは、とてつもなく巨大な魚の形の大岩だったのでした!しかもビチビチと暴れまわります。

「兄さんたち、竿をちゃんと持っていてくれ。僕は縄を持ってくるから」

と、マウイは一方的に竿を兄たちに渡して、自分は陸地向かって泳いでいったのでした。――暴れまわる岩の魚を任された兄たち。魚に引っ張りまわされ、海に投げ出されて死んでしまったのでした。

マウイが来た時、兄たちは一人残らず海の藻屑。

「あーあ、みんな死んじゃったんだ」

と、マウイは岩の魚を縄で縛りつけ、グイッと引っ張り上げました。実はこの魚、岩ではなくて巨大な島、ニュージーランドだったのです。

かの魔法の釣り針は、引っ張り上げたときにスポーンと空に飛びあがって、そこに引っかかりました。これがさそり座(釣り針座)なのです。

日本の神話 天から下がった鎖の話

これは日本の瀬戸内海の話。

あるところに、三人の子供が母親と暮らしていました。兄、妹、それから赤ん坊でした。あるとき、母親は子供たちに留守番を頼みました。

「いいかい、お母さんはお仕事で、よその家に機織りに出かけるからね。鬼婆が来るかもしれないから、戸を開けるんじゃないよ」

それから夕ぐれになって、戸を叩く音がしました。

「お母さんだよ、子供たち。戸を開けておくれ」

でも妙にしわがれた声だったので、子供たちは用心しました。

「お母さんなら、手を見せろ」

すると、戸の隙間から覗いたのは、毛むくじゃらの真っ黒い手だったのです!

「お前は鬼婆だろう!お母さんは白い手なんだぞ」

しばらくすると、また戸を叩く音がします。子供たちはまた油断せずに、手を見せるように言いました。すると、今度は行ってきたのは白い手です。でもこれは、鬼婆が悪知恵を働かせて、芋がらを巻き付けた上に、白い粉をはたいた手だったのです。

「お母さんだ!

騙された子供たちは戸を開けてしまいました。鬼婆はパッと飛び込んで、凄まじい勢いで一番下の赤ん坊に飛びかかると、バリバリと音を立てて食べてしまいました。

「助けて!助けて!」

兄と妹は泣きながらおもてへ飛び出し、急いで大きな桃の木に登って隠れました。

「ええ、どこへ逃げたか。あと二人いたはずじゃ」

鬼婆は外へ出て二人を探します。と、井戸を覗き込むと、気の上の二人の姿が水に映りました。「おのれ、そこにおったか!」と木に飛びつく鬼婆。兄妹は天に向かって手を合わせ

「お天道様!わたしたちをお救い下さい!」

と叫びました。すると、不思議なことに天から鎖が一本降りてきました。二人がそれに取りすがると、鎖は天まで上がっていき、二人の兄妹はさそり座の尾の端に並ぶ二つの星になったのです。

さて、鬼婆も追いかけようと思って、兄妹の真似をして「お天道様、お救い下さい」と叫びました。でも降りてきたのは、ボロボロの縄だったのです。鬼婆は捕まった縄が切れて、落ちて死にました。

鬼婆が落ちたところはそば畑でした。そばの茎が赤いのは、そのときの血で染まったのだといわれています。

まとめ

ここまで読んで下さってお疲れ様です!

ギリシャでは、さそり座は恐ろしい毒虫ですが、日本や南太平洋では「天が助けてくれた兄妹」「魔法の釣り針」と、良いものとされていますね。

さそり座はアルファベットのjの字をしています。漁業が盛んな地域では、これが釣り針の形に見えたため、さそり座はおめでたい星座とされていたのです。

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