【三国志】閑話休題、三国志キャラの髪形について

2019年6月4日

ここまで真面目に読まれた方はお分かりのことと思うが、わたしは判官(はんがん)びいきならぬ、根っからの周瑜(しゅうゆ)びいきである。

優秀で美形、音楽好き、しかも不幸に見舞われて短命――と、彼は日本人の好みを一直線に走る人生を送っている。義経しかり、沖田聡司しかり、正しい日本人は美形の短命に弱いのだ。

初めて三国志の小説を読んだのは、多感で乙女な中学生の頃だった。周瑜が悲壮な死を遂げたとき、電車の中だったにも関わらず、わたしはボロボロ泣き出して「全部孔明(こうめい)のせい! こいつさえいなければ!」と孔明に無茶苦茶な八つ当たり。挙句、周瑜亡き後、続きを読む気になれず他の小説に浮気したのだった。

三つ子の魂百まで。あれから二十年近く過ぎたというのに、少女時代の刷り込みは全く色褪せない。中国のドラマで周瑜を見つけると、その役者が実に凛々しいことに狂喜乱舞。毎日テレビに釘付けになって大騒ぎした。そして例によって周瑜が死ぬと、「ああ、残ったのは見てても目の楽しくないオジサンばっかり……。華がなくてつまらない」と無礼極まりない愚痴をこぼすのだった。

ちなみにその周瑜の役者は、顔立ちがはっきりしていて、目じりがキツネのように吊り上がっているところが実に好みだった。わたしは「吊り上がった目が好き」という一風変わったな好みがあるので、一人で勝手に「周瑜は三国志の中で一番ハンサムだった。だからキツネ目だったに違いない」と決めつけているのだが、皆さんの意見やいかに?

ところでわたしが見たドラマでは、周瑜は見事な長髪で、それがわざとらしく風になびいている姿が絶妙にカッコよかった。

劉備(りゅうび)は頭のてっぺんできりりと髷を結っている。張飛(ちょうひ)はボサボサ。

ストーリーとは直接関係ない、けれども一度は気になる素朴な疑問。三国時代の彼らは、一体どんな髪形をしていたのだろうか?

実は、当時の髪形については、あまりにも昔過ぎて絵も史料もほとんど残っておらず、よく分かっていないのが現状だ。

しかし少ない情報から推測すれば、結構驚かされる実態が浮かんでくる。

先ほど周瑜の髪が長かったと書いたが、長いも長い。当時は「親からもらった体を傷つけてはならない」と考えられていたので、人々は男も女も髪を滅多なことで切らなかった。だから伸ばし放題。成人になると腰を超えるほど長くなっていた。

その長い髪を、頭のてっぺんで髷(まげ)にする。根元をひもでぐるぐる縛り、髷が崩れないようにかんざしを挿す。一般人は、その上から布をかぶせ、結んで出来上がり。役人の場合は、その上にさらに冠を乗せる。冠の色は青とか白とかがあって、それで位を分けていた。

つまり、「髷を結ってそれを包む」以外、バリエーションはなかったようで、実にシンプルに彼らは髪をまとめていたのだ。

なぜ髷を結うのかというと、当時の中国人は、「頭のてっぺんをさらすのは裸でうろうろするより恥ずかしい」と思っていたからだ。当時の医学では、頭のてっぺんとか髪の毛とかは、エネルギーが溜まる場所だった。だから髷を結ったり冠をかぶったりして守る必要があった。人前で冠を落としたり、しかもハゲでいたりしたら一大事。死ぬほど恥ずかしいことだった。ある役人は、ハゲがばれないように冠の下の布で必死に試行錯誤して隠していたと記録が残っている。涙ぐましいではないか。

さて、それほど大事にされていた三国時代の髪。そのお手入れも大変だった。


気になるお手入れ方法は内緒!出版を目指しています。どなたか、編集してくださる方、そういう人を紹介してくださる方、ご連絡ください!

問い合わせ先merucurius4869@gmail.com

【関連記事】 【三国志】五原の呂布
【三国志】傾国の貂蝉
【三国志】小覇王(しょうはおう)の孫策
【三国志】二つの顔の周瑜(しゅうゆ)

出版した本

山中鹿之介と十勇士より熱を込めて山中鹿之介と十勇士より熱を込めて
「我に七難八苦を与えたまえ」という名言で有名な、山中鹿之介。 本書では、「山中鹿之介の史実の人生」と、「鹿之介と十勇士たちの講談エピソード」をエッセイ調にまとめました。通勤時間に読める鹿之介入門書です!
平家物語より熱を込めて平家物語より熱を込めて
平家滅亡という、日本史を揺るがす大事件に巻き込まれた人々。平家物語に登場する、木曾義仲、文覚上人、平維盛、俊寛僧都など、一人一人の人物の人生を、ショートショートでまとめました。彼らの悲劇の人生を追いながら、平家物語全体のストーリーに迫ります。
曽我兄弟より熱を込めて曽我兄弟より熱を込めて
妖刀・膝丸の主としても注目の曽我十郎祐成・五郎時宗兄弟。 どんな困難にもめげず、父の仇討ちを果たして散った若き二人の物語が 講談調の語りと徹底した時代考証で鮮やかに蘇る! 鎌倉期の生活や文化に関する解説も満載の一冊。
忠臣蔵より熱を込めて忠臣蔵より熱を込めて
日本三大仇討ちの一つ、忠臣蔵。江戸時代に、主君浅野内匠頭【あさのたくみのかみ】の仇を討つために、四十七人の家臣たちが吉良上野介【きらこうずけのすけ】の屋敷に討ち入った、実際にあった大事件である。
あなたの星座の物語あなたの星座の物語
星占いで重要な、黄道十二星座。それぞれの星座にまつわる物語を詳しく紹介。有名なギリシャ神話から、メソポタミア、中国、ポリネシア、日本のアイヌ神話まで、世界中の星座の物語を集めました。