【北欧神話のあらすじ】ロキ、小人にミョルニルとグングニルを作らせる

2025年5月30日

北欧神話の超有名な武器と言えば、トールが持っている百発百中のハンマー、ミョルニル。それからオーディンの槍グングニルで決まりでしょう!

ところで、このお宝、実はロキが小人たちに作らせたものなんです!ロキはこの二つだけでなく、他にも珍しいものをいろいろと神々の為に作らせました。

今回はその時のエピソードを紹介します!

北欧神話のあらすじ!どこよりも分かりやすい完全保存版!
ロキは北欧神話最大のスター!能力から武器まで徹底解説!

ロキがアース神の仲間入りをしたお話はこちら↓
【北欧神話のあらすじ】ロキ、アース神の仲間入りをする

主な登場人物

・ロキ
・トール
・シフ
・イーヴァルティの息子たち(小人)
・ブロックとエイトリ(小人)

ロキ、いたずらでシフを丸坊主にする

いたずら大好きのロキは、ある時トールの館に忍び込んで、トールの奥さんシフの寝室に入りました。

この奥さん、まるで金色の小麦畑のような見事な金髪を持っていたのですが、ロキは懐から小刀を取り出すと、その髪の毛をショリショリとそり落としてしまいました。

床に髪の毛が塊になって落ちたのを見届けると、ロキはニヤニヤ笑って満足気に退出。シフの頭は哀れ丸坊主に……。

翌朝、目を覚ましたシフは大号泣!

「ひどいわ!こんな恥ずかしい頭になるなんて!全部ロキのせいに決まってるわよ!」

頭にいろいろな飾りをつけてみても、ちっともマシにはなりません。奥さんがますます泣き悲しむのを見て、トールはマジギレ!

いきなりロキをひっ捕まえて怒鳴りつけました。

「この野郎、どういうつもりだ!ええい、どうしてくれる!」

締め上げられて宙ぶらりんになったロキは、「ただの冗談だよ」とヒイヒイ言いましたが、トールは容赦してくれません!

「それで一体、どうしてくれるつもりなんだ!元に戻せ!」

「分かったよ、元に戻すよ。必ず元通りの頭にするからさ。地面に下ろしてくれよ」

「よし、元に戻せよ。さもないと、俺はお前の体中の骨をこなごなにしてやるからな!」

言ったとたん、トールはロキを地面にポイッ。

やっと自由になったロキは、服装を整えると、突然いたずらっぽくトールにウインクして、風より早くアースガルドから黒妖精たちの国へ飛んでいきました。

トールってどんな神?ハンマーを持つ雷神を徹底解説!

ロキ、小人のイーヴァルティに髪の毛を作らせる

さて、まっすぐに黒妖精たちの国(小人が住んでる国)へやって来たロキ、仲良しのイーヴァルティの家にやってきました。イーヴァルティの息子たちは、大変な名工ぞろいなのです。

「君たち小人たちだけが、本当に素晴らしい金銀細工師だからね。それにきっと、シフの髪の毛をつむぐことができるのは、小人たちの中でもイーヴァルティの息子たちだけだろうからね」

と、ロキは小人たちをそれとな~くおだてまくり、その気にさせます。

小人たちはさっそく作業に取り掛かり、炉の中に薪を詰め込んで、黄金の髪の毛をつむぎ始めました。

ロキはその作業を目を丸くして見つめていましたが、彼が驚いているとき、その目は赤や緑色にきらめいていました。

小人たちはまたたくまにシフの為の髪の毛を作ってしまいます。この髪の毛は美しいだけでなく、魔法がかかっているので、肉に張り付いてちゃんと伸びるように作ってあるのです。

「このまま火を消してしまうのはもったいないな。せっかくだから、他のものも作ってみよう」

と、小人たちは仕事をやめずに、続けて船と槍を作りました。

この船はスキーズブラズニルといって、すべての神々を乗せるほど大きくなるし、必要のない時には布切れのように折りたたんで、財布の中に入れておくこともできるのです。

また槍はグングニルといって、百発百中、決して狙いを外すことはないのです。

「こりゃ、素晴らしいな」

と、ロキはこの三つの宝物を受け取って、十分にお礼を言うと、さっそうと外へ飛び出していきました。

ロキ、アブに化けて小人のブロックをいじめまくる

イーヴァルティの家を後にしたロキでしたが、真っ直ぐにアースガルドへ帰る気はありませんでした。

彼はこの近くに、ブロックとエイトリの館があることを思い出して、そちらへ足を向けたのです。

「やあ、ブロック、エイトリ、しばらくだったね。ところで、どうだね。今日俺が持っている宝物はさ。これほどの仕事を、君らは今まで見たことがあるかね?こんな完璧な名工の腕前をさ」

わざとイーヴァルティの仕事をほめちぎって、ロキはブロック兄弟の嫉妬心をあおりまくります!

「そんなことないさ。俺たちはもっといい仕事ができるね」

「へえ!これに負けないくらい?」

「いや、もっと見事なやつさ」

「まさか!そりゃ無理だね。無理な方に、ぼくは自分の頭を賭けたっていいね」

「よし!じゃあ作って見せようじゃないか!俺たちが勝った時にはロキ、お前の頭をもらうぞ」

こうして妙な賭けをしたロキとブロック兄弟。ロキは隅っこに座り込み、ブロックたちはどたばたと仕事を始めました。

ブロックは必死に火を起こして、ふいごを押しまくります。エイトリは黄金を槌で叩き始めました。

「ブロック!ふいごを押すんだ。何があっても、この黄金を加熱炉から引き出すまではふいごを止めるなよ!」

ロキは後ろの方でにやにやしながらこの様子を見ていましたが、ふいに一匹のアブに姿を変えると、ブロックの手をいやというほど刺しました。

ロキは始めっから、この兄弟を失敗させるつもりだったのです!ちょこっと失敗させて、多少きずものになったお宝をもらおうという魂胆。頭をやる気もありません。超ずるい奴です!

でも、ブロックは無理矢理やせ我慢してふいごを止めませんでした。

兄弟は一つ目のお宝、黄金のイノシシを作って、二つ目のお宝に取り掛かります。

再びブロックはふいごを押し始めましたが、ロキもまたアブに変身して、今度はブロックの首筋をグサッと刺しました。

ブロックは「ギャア!」と悲鳴を上げますが、さすがは名工!手を止めることはしませんでした。

こうして二つ目のお宝、魔法の腕輪ドラウプニルが出来上がります。

ブロック兄弟はいよいよ三つ目のお宝に取り掛かりました。ブロックは必死にふいごを押し続けます。

が、またもやロキは邪魔にかかって、今度はブロックの両目のまぶたをいやというほど刺したのです。

目の上に血が流れたので、さすがのブロックも血をぬぐうためにふいごから手を放しました。

が!エイトリは超一流の名工だったので、ちゃんと三つ目のお宝を作り上げました。これがハンマーのミョルニルです。

ただ、ちょっとの間ふいごが止まったために、ミョルニルの柄の部分は少しだけ短くなってしまったのです。

……ロキから散々邪魔されたにもかかわらず、三つのお宝を見事に作り上げた兄弟。職人魂とはこのことです!

「よし、できたぞ!これを持ってアースガルドに行って、お宝鑑定してもらおう!そしてロキの頭をもらうんだ!」

ロキはとっくにアブから元の姿に戻っていて、「ああ、できたのかい?」と、のんびり聞きました。

お宝判定!勝つのはどっちだ!

ロキとズタボロになったブロックはお宝を持って、アースガルドへ行きました。神々は全員集まって、驚いてお宝を見つめましたが、判定者はオーディン、フレイ、トールの三人に決まりました。

まず、ロキがシフの髪の毛、黄金の船、グングニルの槍を見せました。

髪の毛はシフに、黄金の船はフレイに、グングニルの槍はオーディンに手渡されます。

次にブロックが、ドラウプニルの腕輪をオーディンに、黄金のイノシシをフレイに、ミョルニルをトールに渡しました。

どれもこれも驚くべき魔法を駆使したお宝でしたが、でも「一番素晴らしい」と判定が降ったのはミョルニルでした。

巨人たちとの戦いで、最も役に立つに違いないのは、このミョルニルだったからです。

「君だ、ブロック。君が勝ったぞ」

と、オーディンが判定を下すと、ブロックは狂喜乱舞!

「よし!オレが勝った!さあ、ロキ、その頭をよこせ!」

「え!ちょっと待ってくれ!ぼくの頭を手に入れて、何の役に立つんだい!何にもなりゃしないぜ!代わりに同じ重さの金をやるよ」

ロキはうろたえまくって叫びましたが、ブロックはすでにナイフを抜いて、

「そんなもんはいらんね。俺はあんたの頭が欲しいだけさ」

神々は、さしものいたずら者が困り果てているのを見てバカ受け!ゲラゲラ笑ってます。ロキは進退窮まって、

「それじゃ……そんなに言うなら、この俺を捕まえてみろ!」

と叫んで、「空飛ぶ靴」で矢のように走り去ってしまいました。

ロキ、ブロックに拷問される

頭を切り取ろうとしたのに、目の前でロキに逃げられたブロック、

「何とかしてくれよ!ロキの頭はオレのものだ!トール、捕まえてきてくれよ!」

と、キイキイ声をあげてトールに泣きつきます。

トールもミョルニルをもらった手前、ブロックに恥をかかせちゃいけません。すぐさま追いかけて行って、ロキを小脇に抱えて戻ってきました。

「よ~し、さあ、ロキの首を斬るぞ!」

ナイフをピカピカさせて近寄るブロック。でもロキは「ちょっと待った!」と、片手をあげて、

「そうさ、確かに約束したから、頭はお前さんのものさ。だが、首は違うぞ!首は俺のものだ。君は俺の首をちょっとだって取ってはいけないんだからな!」

この言葉に、「ええ!」と驚くブロック。

神々は、はなからロキを死なせる気はなかったので、ニヤニヤしながら聞いています。

「くそっ、畜生!」

ブロックはまんまとロキにハメられたことを知って、悔しがりましたが、やがてロキをにらみつけて、

「よし、あんたの頭はオレのものだな?じゃあ、せめてお前の調子のいいおしゃべりをやめさせてやろう。針を使って、その唇を縫い合わせてやるからな」

ロキはぎょっとしましたが、小人はマジです!

嫌がるロキを無理矢理押さえつけ、霧で唇に穴をあけ、革ひもでしっかりと唇を縫い合わせてしまいました!

ロキは館から走り出ると、必死に革ひもを抜き取りましたが、あまりの激痛に悲鳴を上げたということです。

いろいろ本も紹介してます。見てね↓
北欧神話関連マンガ!これさえ読めば神話の70%は分かる!リスト作成中
北欧神話についての本!これを読めば北欧神話マニアになれる!

【関連記事】
オーディンは北欧神話の王!片目の理由や武器まで徹底解説!
北欧神話のあらすじ!どこよりも分かりやすい完全保存版!
【北欧神話】ラグナロクのあらすじ!結末や生き残りがこれで分かる!
ヴァルキューレはオーディンのパシリ!忙しい女神の仕事を詳しく解説
トールってどんな神?ハンマーを持つ雷神を徹底解説!
ロキは北欧神話最大のスター!能力から武器まで徹底解説!
フレイヤってどんな女神なの?猫と首飾りがシンボル!
【北欧神話】ヘイムダルは神々の番人!実は人類の祖先でもある

【北欧神話のあらすじ】神々の王オーディン、世界を創造する
【北欧神話のあらすじ】ロキ、アース神の仲間入りをする
【北欧神話のあらすじ】アース神VSヴァン神!勝つのはどっちだ!
【北欧神話のあらすじ】アースガルドの城壁づくり。ロキ大活躍!
【北欧神話のあらすじ】フレイヤとブリーシングの首飾り
【北欧神話のあらすじ】フレイが勝利の魔剣を失ったわけ
【北欧神話のあらすじ】ロキ、小人にミョルニルとグングニルを作らせる
【北欧神話のあらすじ】ヘイムダルが人間に階級を作る
【北欧神話のあらすじ】トールがミョルニルを紛失!必死に助けるロキ
【北欧神話のあらすじ】ロキの3人の子供たち。その悲惨な運命!
【北欧神話のあらすじ】ロキ、バルドルを殺害する
【北欧神話のあらすじ】ロキの口論

出版した本

三国志の影 脇役たちの物語三国志の影 脇役たちの物語
劉備玄徳が登場し、彼が死ぬまでの間に活躍した、三国志の名脇役たちを集めたシリーズ、全10巻。第1巻は「劉備登場編」。劉備の故郷琢県(たくけん)に伝わる、「演義」とは全く異なる劉備の逸話。西遊記と劉備の共通点とは?――以来100年の治乱興亡のドラマが、ここから始まる。
山中鹿之介と十勇士より熱を込めて山中鹿之介と十勇士より熱を込めて
「我に七難八苦を与えたまえ」という名言で有名な、山中鹿之介。 本書では、「山中鹿之介の史実の人生」と、「鹿之介と十勇士たちの講談エピソード」をエッセイ調にまとめました。通勤時間に読める鹿之介入門書です!
平家物語より熱を込めて平家物語より熱を込めて
平家滅亡という、日本史を揺るがす大事件に巻き込まれた人々。平家物語に登場する、木曾義仲、文覚上人、平維盛、俊寛僧都など、一人一人の人物の人生を、ショートショートでまとめました。彼らの悲劇の人生を追いながら、平家物語全体のストーリーに迫ります。
曽我兄弟より熱を込めて曽我兄弟より熱を込めて
妖刀・膝丸の主としても注目の曽我十郎祐成・五郎時宗兄弟。 どんな困難にもめげず、父の仇討ちを果たして散った若き二人の物語が 講談調の語りと徹底した時代考証で鮮やかに蘇る! 鎌倉期の生活や文化に関する解説も満載の一冊。
忠臣蔵より熱を込めて忠臣蔵より熱を込めて
日本三大仇討ちの一つ、忠臣蔵。江戸時代に、主君浅野内匠頭【あさのたくみのかみ】の仇を討つために、四十七人の家臣たちが吉良上野介【きらこうずけのすけ】の屋敷に討ち入った、実際にあった大事件である。
あなたの星座の物語あなたの星座の物語
星占いで重要な、黄道十二星座。それぞれの星座にまつわる物語を詳しく紹介。有名なギリシャ神話から、メソポタミア、中国、ポリネシア、日本のアイヌ神話まで、世界中の星座の物語を集めました。