【日本神話】オノゴロジマの誕生
天地の始まり
「天地初めて別れし時、高天原に成れる神の名は……」これが、日本神話の最初の言葉です。遠い昔、宇宙はどろどろとした、卵の中身のような状態であったと言います。「卵の中身」、つまり、今はどろどろと形の定まらない状態であるけれども、生命力に満ち、果てしないエネルギーで、新たな何かを創造する「卵」であったということです。
ここから最初に産まれた神は、アメノミナカヌシ(天之御中主)の神。次にタカミムスビ(高御産巣日)の神。カムムスヒ(神産巣日)の神。
どうでもいいことですが、日本神話の神々は、みんな馬鹿みたいに名前が長いのであしからず。神様の性格とか特徴を無理やり名前の中に押し込むので、訳が分からないほど長い名前になるのです。
この3柱(日本語で神様は1柱、2柱と数えます)の神は「ひとりがみ」でした。つまり、男でも女でもない。萌え出ずる生命力そのものであったということです。「ムスヒ」とは漢字で「産す霊」と書きます。この3柱の神々は、一番最初に堂々と出てきたくせに、登場シーンはここだけ。後は出てきません。それもそのはずで、彼らは宇宙の「生命エネルギー」そのものなのですから、人格をもって活躍するわけではないのです。
「ひとりがみ」の後、陰陽二つに分かれた存在が現れます。この頃、下界は一面の原初の海が広がり、その中にクラゲのように原初の大地が漂っていました。そこに美しい葦(あし)の芽が生じます。そこから生まれた神が、クニノトコタチ(国之常立)の尊(みこと)。そしてウマシアシカビヒコヂ(宇摩志阿斯訶備比古遅)の尊。
古代の言葉で「トコ」は土。「アシカビ」は生命。この神々は「土と生命」という、原始的な二つの存在を表しているのです。葦は日本神話で神聖視される植物。日本の古代における名は「葦原の中つ国」。葦の生い茂る国、という意味なのです。
この後も次々とわけのわからない神々が生まれ続けるのですが、そこは面倒くさいのでカットします。最後に、いよいよ最初の男と女。イザナキ(伊邪那岐)とイザナミ(伊邪那美)が産まれるのです。
イザナキとイザナミがオノゴロジマを創る
初めに「生命エネルギー」、次に「土と生命」、最後に「男と女」。世界は徐々に形作られて、あらゆるものを生み出す準備ができたのでした。
天の神々(これが誰だかよく分からないのですが)が、イザナキとイザナミにアメノヌボコという矛を渡して、「これを使って、下の世界を完成させるように」と、極めて大雑把な命令をします。
2人は矛を受け取って、これまたいつの間にできたのか分かりませんが、「天の浮橋」という橋の上に立って、原初の海に矛を差し込み、コオロコオロと音を立てながらかき回しました。おそらく、「天の浮橋」とは虹のことなのでしょう。この天と地をつなぐ不思議な橋は、多くの神話に登場します。播磨の国には、昔、天に届く石の橋があったとか。百人一首に出てくる「天の橋立」も、この橋のことなのです。
さて、イザナキとイザナミが矛で海をかき回し、矛を水の上に引き抜くと、その先から塩がぽとぽとと落ちて固まり、島になりました。これが「オノゴロジマ」。日本の最初の国土なのです。