【日本神話】初めての男と女。イザナキとイザナミの結婚。

2019年4月14日

オノゴロジマに降り立ったイザナキとイザナミ

海の上にできた新しい島の上に降り立った二人。イザナキとイザナミはそこに「天の御柱(アメノミハシラ)」という巨大な柱を立てます。これは世界各地の神話に共通する行為で、大地は生命を生み出す女神、その上に広がる天は男神と考えられています。その女神の身体に、天(男神)から柱(男性器)を突き立てる。つまり、結婚、これから生命を生み出す行為そのものを指しているのです。日本を含め、世界には「巨大な柱を立てる」という遺跡が無数に存在します。これらはすべて大地の女神に豊穣を願って建てられたものなのです。

「天の御柱」を建てた二人は、その柱を回って結婚することにします。イザナキは右から、イザナミは左から。柱を回って出会った二人は、お互いを見て「あなにやし、えをとこを(まあ、なんて素敵な人)」「あなにやし、えをとめを(おお、なんと美しい乙女)」と叫びます。

イザナキはこのとき、「女が先に言うのはよくない」と言いました。このエピソードは「男尊女卑の始まり」と非難されていますが、実際のところは違います。日本には古来、大地の女神を敬う風習がありました。「国誉め」という習わしで、これは歴代の天皇も繰り返し行っています。高い山や丘の上から「素晴らしい土地だ」と大地の女神をほめたたえ、豊穣を祈願するのです。大地の女神の恩恵を受け、古代から農業を営んできた日本。イザナキの言葉は、男尊女卑ではなく、何よりも女性を優先していたと捉えるべきでしょう。

ところで、当たり前のことですが、イザナキとイザナミは世界で最初の男女。当然、結婚の方法を知りません。そこでイザナキはイザナミに聞きます。
「「汝(な)が身はいかに成れる(あなたの身体はどのようにできているのか)」
イザナミは答えます。
「吾(わ)が身は成り成りて、成り合はぬところ一處(ひとところ)あり(わたしの身体は、閉じていないところが一か所あります)」
するとイザナキは
「我が身は成り成りて、成り餘(あま)れるところ一處(ところ)あり。故(かれ)この吾が身の成り餘れる處を、汝が身の成り合はぬ處に刺し塞(ふた)ぎて、國土(くに)生み成さむと思ほすはいかに(わたしの身体は余っているところが一か所ある。これをあなたの身体の閉じていないところに差し込み、ふさいで、国を産もうと思うがどうだろうか?)」

何とも直接的でエロい会話。大真面目に語っていると逆にものすごくエロチックなのはなぜでしょうか。とにかくイザナミはこのセリフに「いいですね」とニコニコ答えて、二人は世界で初めの結婚をしたのでした。

初めの結婚の失敗。骨のない子供ヒルコ

二人は結婚し、子どもが生まれましたが、なんとこの子供は骨が全くない、ヒルのような子供「ヒルコ」でした。二人は恐れおののき、涙に暮れてこの子を葦船にのせて海に流してしまいます。

二人が天の神にお伺いを立てると、「女が先にしゃべったのがよくない」とのこと。そこでもう一度やり直し。今度はうまくいきました。

しかし、これにはもう一つ別の説も。なぜ最初に産まれたのが奇形児であったか?それは、この二人が兄と妹であったから、とも言われているのです。天の世界で同時に産まれた二人。当然、彼らは兄妹でした。世界に立った二人しかいない男女だったので、やむを得ないことだったのですが、この結婚は禁じられた近親相姦でした。そのため、その罪の結果が奇形児「ヒルコ」だったのです。

次々と生み出される神。そしてイザナミの死

近親相姦を乗り越え、次々と子を生み出すイザナミ。最初に産まれたのは淡路島。そして四国、隠岐の島、九州、壱岐島、対馬、佐渡島、本州。日本は島国ですから、無数の島々が生まれていきます。

そしてその島に住む無数の生命。海、川、山。そして風、木、草。世界は徐々に形を整えていきました。

そして、最後にイザナミが生んだのが火の神ホノカグツチだったのです。この神はその性質から、母であるイザナミを焼き、致命的なやけどを負わせながら産まれてきました。イザナミは病床に臥し、苦しみながら息絶えます。これが、世界で最初の「死」だったのです。

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