スキュラはもともと美少女。ヘンな薬で怪物に!
オデュッセウスの冒険や、アルゴー号の冒険や、ヘラクレスの冒険に登場するグロい怪物スキュラ。
いずれの冒険譚も怪物があまりにも出すぎるので、イマイチ影の薄い存在ですが、よくよく調べてみるとすごいインパクトの怪物です!このページでは、彼女の姿かたち、怪物になってしまったエピソードを紹介します。
スキュラってこんな怪物
スキュラの姿は超グロいです。
上半身は美女ですが、下半身は六つの犬の首がニョキニョキと生えてます。しかもその犬の首、ろくろ首みたいにえらく長くて、歯はサメの歯みたいに三列になっているとか……。
スキュラはシチリア沿岸の海峡に住んでいて、普段は薄暗い洞窟に身を隠しています。しかし、その海峡を船が通ろうとすると、「エサが来た!」とばかり飛び出していって、六つの犬の首がザーッと伸びていき、船乗りたちを頭っからバリバリと食べてしまうのです!何という恐怖!
これだけでも十分この海峡は怖いですが、恐ろしさはそれだけにとどまりません。この海峡の反対側には、カリュブディスの大渦とゆー、これまたやっかいな渦が巻いているのです。この渦に巻き込まれたら、どんな船でも木っ端みじんになってしまいます。
まさしく前門の虎、後門の狼……。こっちに寄ればスキュラに食われ、あっちに行けば渦に飲まれるとゆー、最悪の海峡だったわけです。
スキュラに出会った英雄たち、苦労譚
スキュラのおかげで散々な目に遭った英雄はたくさんいます!
オデュッセウス
嵐のせいで船は難破し、あっちこっちの海をさまよった苦労人オデュッセウス。彼もスキュラのいる恐怖海峡を通った一人。
うま~くこの海峡の真ん中を通って、食われないようにしようと思ったのですが、失敗してしまったのですね……。船が通るなり、すぐさま気づいたスキュラ!「エサが来たよ!」と洞窟を出て、オデュッセウスの船に襲い掛かります!たちまち何人かがスキュラの犬の頭に餌食に……。
慌ててスキュラの洞窟から船を離したオデュッセウス。しかし今度は渦に巻き込まれ……。とうとう船はバラバラ、部下たちは全滅。オデュッセウスは一人ぼっちになてしまったのでした。
ヘラクレス
ヘラクレスは十二の冒険に出かけて、様々な怪物を退治した英雄。
このヘラクレスがゲリュオンの牛を大量捕獲して、この海を通ったときのことです。例によってスキュラが「エサが来た!」と飛び出して、牛の一頭をパクっと食べてしまいます。
しかし、今度ばかりはスキュラも失敗。相手はヘラクレスです!「オレの牛をよくも食べたな!」と、強弓をサッと構えるや、スキュラを射殺してしまったのでした。
いきなり殺されちゃったスキュラ、この後、なんとお父さんに生き返らせてもらったとか……(スキュラのお父さんは神様です)
何で怪物になったの?スキュラの踏んだり蹴ったり人生
こんな恐ろしー怪物のスキュラ。しかし驚くなかれ、実はもともとはちゃんと人型。しかも絶世の美少女でありました。
そのスキュラがどうして怪物になったのかと言いますと……それには深いワケが。
オヴィディウスの「変身譚」とゆー、ギリシャ神話の古典によれば、美少女だったスキュラ、呑気に海辺で遊んでたのですが――。この彼女の美貌にノックアウトされてしまった海神グラウコスが「愛してるんだ!ヤらせてくれ!」と猛アタック。
ところがこのグラウコス、海神ですが見た目はかなりヤバめ。髪の毛はドギツイ緑。全身ウロコが生えてるとゆー、いわば半魚人だったのです。当然ビビったスキュラは「冗談じゃないわ!」と即、お断り。逃げ回りましたが、グラウコスはかなりのストーカー気質。嫌がるスキュラを散々追い掛け回し、それでもダメとなると、今度は魔法使いのところにお願いに行ったのでした。
この魔法使いが、少女漫画の「王家の紋章」にも登場した(ビミョーに古くてごめんね)怪しさ全開の魔女キルケー。「お願いだ!スキュラがオレに惚れるように、魔法で何とかしてくれ!」と、グラウコス必死に頼みます。
が、ここで問題が……。このキルケーは化け物フェチだったらしく、グラウコスに惚れてたんですね。嫉妬でムカついたキルケー、「あんな女、地獄に落としてやるわ」と、スキュラがいつも水浴びしている池に毒薬を……。何も知らないスキュラ、生けに入った瞬間、水に触れた下半身が六つの犬に変わってしまったのでした!
なんと悲惨な運命――。さて、グラウコスはどうしたのか?
怪物化したスキュラに愛想をつかして逃げたみたいですよ。最後までサイテーな男です!
スキュラの親は誰?
イマイチ不明なのですが、こんな説があります。
ラミアという美しい女性がいて、大神ゼウスが彼女と大量の子供を作りました。しかし、このことを知ったゼウスの妻ヘラが大激怒。ラミアの子供たちを大量虐殺したのでした。これに発狂したラミアは下半身が蛇の怪物に変身。次々と子供に襲い掛かっては生き血を吸って、自分の子を失った悲しみを晴らすという行為を繰り返すのでした。
このラミアの唯一残った子供がスキュラだと言われています。