【ギリシャ神話】美女と野獣の原点は?実はいろんなバージョンがある!

ディズニーで有名な「美女と野獣」!名曲「ビューティーアンドザビースト」と共に、知っている方も多いことでしょう。

ところで、この「美女と野獣」、原作はギリシャ神話だったってご存知ですか?

今回は、原作のギリシャ神話と、その後ヨーロッパに伝わって「美女と野獣」という名で広まった二つのお話をご紹介します。

ギリシャ神話の「美女と野獣」

ギリシャ神話の原作は、「エロスとプシュケ」というお話です。ルーブルに大変美しい彫刻がありますよ。

実はドジなエロス

エロスは愛欲の神で、英語ではキューピッドと言います。この名の方が一般的でしょう。彼は背に金の矢と鉛の矢を持っているのですが――金の矢で射られた人間は、最初に見た異性に恋に落ち、鉛の矢で射られた人間は、最初に見た人を徹底的に嫌うようになります。

ところが、このトンデモナイ武器を持っているエロス、大変ないたずら小僧の上に、全然考えなしで、分別のかけらも持っていません。いつもテキトーにあちこちに矢をばらまいておりました。我々人類が報われぬ恋になくことに多いのは、全部こいつのせいなのです。

ところでこのエロス、母親で美の女神のアフロディテには頭が上がりませんでした(男は大概そうですがね)。そのアフロディテが、ある日エロスにこう言ったのです。

「エロスや、プシュケという王女を、世界で一番不幸にしてほしいのよ。力を貸しておくれ」

ある国に三人の王女がおり、末娘がプシュケだったのですが、このプシュケは大変美しく「アフロディテより美しい」と評判だったのです。そのため、アフロディテは怒って、この王女を誰からも見向きもされないようにしてやろうと思ったのでした。

実に、神様とは思えないほど、とんでもないたくらみでしたが……何しろエロスは考えなし。

「いいですとも、母上。おまかせあれ」

と一目散にプシュケの寝室へ……。エロスは「全ての人に嫌われる」という最悪な薬をプシュケにかけてやるつもりだったのですが、この時、神様のくせにうっかりつまづいたエロス。背中から金の矢が滑り落ちて、エロスにグサリ。

この金の矢の効き目は絶大。エロスは目の前で眠るプシュケに一目ぼれしてしまったのでした。

見えない夫

「世界で一番不幸にしろ」と母親から言われたエロスですが、あろうことか運命の恋に陥ってしまいました。

恋は盲目とはまさにこのこと!エロスは愛するプシュケを自分の城へ誘拐。そこを愛の巣として、蜜月の日々を過ごします。物には一切不自由させず、言えば何でも出てくる。宝石も服もご馳走も音楽も無尽蔵。……ただし、神様である自分の正体がバレては問題だと考え、昼間は声だけ。夜は真っ暗闇の中で愛し合っておりました。

どんなに贅沢な毎日でも、これではプシュケも疑惑に囚われます。

「わたしの夫は、いったい何者なのかしら。いちども姿を見せてくれないけれど、もし化け物だったらどうしよう……」

夫の顔を見たいと思い詰めたプシュケは、ある夜、夫が隣でぐっすり眠ってしまったことを確かめて、明かりをつけてしまいます。

「アッ」

ろうそくの光に見たその姿。真珠色の翼、黄金の巻き毛。一目見てエロスであることをプシュケは悟ります。

しかし、ろうそくのロウが垂れて、目を覚ましたエロスは、プシュケが約束を破って自分の姿を見たことを知り、「もうおしまいだ」と去ってしまいました。

プシュケ、エロスと結婚する

エロスに置いてけぼりにされたプシュケは、必死に歩いてオリンポスへ行きます。彼女はそこでアフロディテに遭遇。

アフロディテはもともと、「プシュケを不幸にしてやりたい」と考えていたので、いつのまにかエロスといい仲になっていたことを知って大激怒します。そこでプシュケに

「部屋いっぱいの穀物を全部種類別にえり分けろ」

「化け物みたいに狂暴な金の羊の毛を取ってこい」

「竜が住んでいる滝の水を汲んでこい」

「冥界へ行って、冥界の女王ペルセポネから美しさを分けてもらってこい」

など、無理難題を次々と吹っ掛けます。しかし!プシュケは愛の力と陰ながら魔法で手伝ってくれるエロスのおかげで、全部やすやすとクリアするのでした。

そしてついに、神々の王ゼウスもプシュケを認めて、彼女を神様に格上げし、エロスと結婚させてくれたのでした。めでたし、めでたし。

ベッリンダと化け物

これはイタリアの昔話です。王子様が化け物の姿をしているあたり、内容は結構ディズニーに近いですよ。

バラと引き換えにされたベッリンダ

昔、ある商人がいました。商人には娘が三人いて、末娘がベッリンダです。あるとき仕事に出るとき、商人は

「お土産に何が欲しいかね」

長女「わたしはドレスよ」

次女「わたしは真珠と宝石」

ベッリンダ「バラが一輪ほしいわ」

商人は旅に出かけ、お土産を買って帰路につきます。ところが森の中で日が暮れてしまい、辺りに宿はありません。困った商人は大きなお屋敷を見つけました。

お屋敷には誰もいませんでしたが、食卓には食事の支度がしてあり、ふかふかのベッドもありました。商人はお腹いっぱい食べ、ベッドで眠ります。

次の朝、目を覚ました商人は庭にバラの花を見つけました。ベッリンダの言葉を思い出した商人は、バラを折ってしまいます。と、そのとき

「わたしはお前に食事を与え、ベッドも与えた。それだけでは足りず、バラも持って行く気か!」

凄まじい声とともに化け物が現れたのです。商人は腰を抜かして

「申し訳ございません。娘にバラをやりたいと思って……」

「娘がいるのか」

「はい、心優しい自慢の娘です」

「土産にバラが欲しいという娘か。では、お前は帰してやろう。その代わりに娘をここへよこせ」

こうして、商人は慌てて帰りましたが、その代わりにベッリンダを屋敷によこすことになったのでした。ベッリンダは「それでお父さんが助かるなら」と、素直に屋敷に行きました。化け物は大いに喜び、ベッリンダに

「この屋敷のものは、すべてお前のものだ。その代わり、毎日晩餐を必ずわたしと共に過ごしてくれ」

と言います。ベッリンダはこれを承知し、化け物と屋敷で暮らすことになったのでした。

化け物、ベッリンダを家に帰す

化け物はとても親切で、ベッリンダに何一つ不自由させませんでした。ベッリンダは初めのうちは恐ろしくてならなかったのですが、そのうち化け物の真心が分かるようになります。しかし、晩餐の時に化け物は必ず

「ベッリンダ、わたしを愛してくれるかね」

と尋ねるのですが、ベッリンダはどうしても化け物の恐ろしい姿が忘れられず

「あなたをとても尊敬しています。とても好きです。でも愛してはいません」

と答えるのでした。すると化け物はとても悲しそうな顔をして、自分の部屋に戻っていくのでした。

あるとき、ベッリンダは父が重い病に倒れたことを知り、化け物に「父の元へ帰してほしい」と泣いて頼みます。化け物は「お前がそれほど言うなら」と承知し、一つの指輪を渡しました。

「この指輪の宝石が完全に曇らないうちに帰ってきておくれ。完全に曇ってしまったとき、わたしは死んでしまうのだ」

と言います。ベッリンダは「必ず帰ります」と約束して、屋敷を出ました。

化け物、魔法が解ける

やがて父の病はよくなって、ベッリンダは屋敷に帰ろうと思いました。ところが、意地の悪い姉たちが、指輪を隠してしまっていたのです。

ベッリンダは必死で指輪を探し、とうとう姉たちから取り戻したとき、指輪はすっかり色が変わり、針の先ほどしか輝きがありませんでした。ベッリンダは泣きむせびながら屋敷へ走ります。

帰り着いたとき、屋敷は荒廃し、庭のバラは枯れ果て、そのバラの中で化け物は倒れていました。すでに体は冷たくなり、心臓は止まりかけていたのです。ベッリンダは化け物に取りすがり、

「ああ、死なないで。愛しています」

と叫びました。その時、化け物にかかっていた魔法は解けたのです。化け物はもともと王子だったのですが、魔法使いに化け物にされ、真の愛を捧げてくれる乙女を待っていたのでした。

ベッリンダと王子は結婚し、末永く幸せに暮らしました。

まとめ

美女と野獣はギリシャ神話が原点ですが、ギリシャ神話では「男は昼間声だけだが、美しい姿のまま」という設定。中世になってから、「男は魔法がかけられていて、恐ろしい化け物の姿をしている」となったようです。

神様にしろ化け物にしろ、「真の愛を捧げてくれる乙女」と結ばれるという設定は、古来永遠のロマンですね!

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