【ケルト神話】フィン・マクールと妖精王

2019年4月23日

巨人ギラ・ダッカー

フィン・マクールの時代、人間は妖精たちと親しくしていました。フィアナ騎士団のリーダーであるフィン・マクールは、妖精王に要請されて、騎士たちと一緒に妖精の戦いに参加したことがあります。
あるとき、フィン・マクールは下僕として1人の巨人を下僕として使っていました。巨人は1頭の巨大な馬を、いつも引き連れていました。陽気なフィアナ騎士団の騎士たちは、ある日この馬をからかってやろうとして、馬によじ登ります。馬には全部で、14人の騎士が乗りました。
すると、巨人がいきなり「よくも俺の馬をからかったな!もう故郷に帰る!」と猛烈に怒り出し、海にざばざばと入っていったのです。騎士たちを乗せたまま、馬も海に飛び込みました。馬を止めようとしてしっぽにしがみついた騎士もあわせて15人が、そのまま海に消えてしまったのでした。
部下たちを失ったフィン・マクールは、彼らを救うべく海へと乗り出します。

騎士ディルムッドと謎の騎士

馬の背に乗っていた騎士たちの中に、ディルムッドというひときわ若い騎士がいました。彼はフィアナ騎士団一の美男で、彼にはこの後数奇な恋の運命が待っているのですが、それはまた別の話。
ディルムッドが目を覚ますと、そこは緑の草原で、目の前には清らかな泉が沸いていました。彼が水を飲もうとすると、どこからともなく謎の騎士が現れ、勝負を挑みます。ディルムッドは応じますが、なかなか勝負がつきません。そのうちに日が暮れてきました。
すると、謎の騎士はいきなり泉に飛び込んで姿を消してしまったのです。そして、次の日も全く同じことを繰り返しました。
三日目、ディルムッドがいいかげんうんざりしていると、謎の騎士は、今度はいきなりディルムッドをひっつかんで一緒に泉に飛び込んだのです。
想定外の成り行きに慌てふためくディルムッド。彼が気がつくと、そこは花咲き乱れ鳥が歌う、妖精の国だったのです。そしてあの謎の騎士は、妖精王アヴァータであり、また巨人ギラ・ダッカーでもあったのでした。
「客人、ようこられた。実はわたしは他の妖精の国と戦っており、われらと一緒に戦ってくれる人間の勇士たちを探していたのだ。そなたの他に馬に乗ってきた、14人もここにおるぞ」
現代人の感覚からすると、なんとも迷惑な話。それなら最初から普通に交渉に来ればいいのに……と思ってしまいますが、それは、相手が人間ではないのであしからず。

妖精たちと戦うフィン・マクール

騎士たちを探して海を探索していたフィン・マクールも、やがて妖精の国にたどり着きます。妖精と親しいフィン・マクールは、妖精王の申し出を快く引き受け、妖精たちの戦いに参加したのです。
フィン・マクールとフィアナ騎士団の戦いぶりは目覚ましく、戦いは勝利しました。
妖精王は彼らに感謝し、フィアナ騎士団の人間界での戦いで、自分たちも戦って恩を返すことを約束するのでした。
【関連記事】ぶっちゃけ無意味!ケルトのルール誓約(ゲッシュ)

出版した本

山中鹿之介と十勇士より熱を込めて山中鹿之介と十勇士より熱を込めて
「我に七難八苦を与えたまえ」という名言で有名な、山中鹿之介。 本書では、「山中鹿之介の史実の人生」と、「鹿之介と十勇士たちの講談エピソード」をエッセイ調にまとめました。通勤時間に読める鹿之介入門書です!
平家物語より熱を込めて平家物語より熱を込めて
平家滅亡という、日本史を揺るがす大事件に巻き込まれた人々。平家物語に登場する、木曾義仲、文覚上人、平維盛、俊寛僧都など、一人一人の人物の人生を、ショートショートでまとめました。彼らの悲劇の人生を追いながら、平家物語全体のストーリーに迫ります。
曽我兄弟より熱を込めて曽我兄弟より熱を込めて
妖刀・膝丸の主としても注目の曽我十郎祐成・五郎時宗兄弟。 どんな困難にもめげず、父の仇討ちを果たして散った若き二人の物語が 講談調の語りと徹底した時代考証で鮮やかに蘇る! 鎌倉期の生活や文化に関する解説も満載の一冊。
忠臣蔵より熱を込めて忠臣蔵より熱を込めて
日本三大仇討ちの一つ、忠臣蔵。江戸時代に、主君浅野内匠頭【あさのたくみのかみ】の仇を討つために、四十七人の家臣たちが吉良上野介【きらこうずけのすけ】の屋敷に討ち入った、実際にあった大事件である。
あなたの星座の物語あなたの星座の物語
星占いで重要な、黄道十二星座。それぞれの星座にまつわる物語を詳しく紹介。有名なギリシャ神話から、メソポタミア、中国、ポリネシア、日本のアイヌ神話まで、世界中の星座の物語を集めました。