【ケルト神話】フィン・マクールと妖精王
巨人ギラ・ダッカー
フィン・マクールの時代、人間は妖精たちと親しくしていました。フィアナ騎士団のリーダーであるフィン・マクールは、妖精王に要請されて、騎士たちと一緒に妖精の戦いに参加したことがあります。
あるとき、フィン・マクールは下僕として1人の巨人を下僕として使っていました。巨人は1頭の巨大な馬を、いつも引き連れていました。陽気なフィアナ騎士団の騎士たちは、ある日この馬をからかってやろうとして、馬によじ登ります。馬には全部で、14人の騎士が乗りました。
すると、巨人がいきなり「よくも俺の馬をからかったな!もう故郷に帰る!」と猛烈に怒り出し、海にざばざばと入っていったのです。騎士たちを乗せたまま、馬も海に飛び込みました。馬を止めようとしてしっぽにしがみついた騎士もあわせて15人が、そのまま海に消えてしまったのでした。
部下たちを失ったフィン・マクールは、彼らを救うべく海へと乗り出します。
騎士ディルムッドと謎の騎士
馬の背に乗っていた騎士たちの中に、ディルムッドというひときわ若い騎士がいました。彼はフィアナ騎士団一の美男で、彼にはこの後数奇な恋の運命が待っているのですが、それはまた別の話。
ディルムッドが目を覚ますと、そこは緑の草原で、目の前には清らかな泉が沸いていました。彼が水を飲もうとすると、どこからともなく謎の騎士が現れ、勝負を挑みます。ディルムッドは応じますが、なかなか勝負がつきません。そのうちに日が暮れてきました。
すると、謎の騎士はいきなり泉に飛び込んで姿を消してしまったのです。そして、次の日も全く同じことを繰り返しました。
三日目、ディルムッドがいいかげんうんざりしていると、謎の騎士は、今度はいきなりディルムッドをひっつかんで一緒に泉に飛び込んだのです。
想定外の成り行きに慌てふためくディルムッド。彼が気がつくと、そこは花咲き乱れ鳥が歌う、妖精の国だったのです。そしてあの謎の騎士は、妖精王アヴァータであり、また巨人ギラ・ダッカーでもあったのでした。
「客人、ようこられた。実はわたしは他の妖精の国と戦っており、われらと一緒に戦ってくれる人間の勇士たちを探していたのだ。そなたの他に馬に乗ってきた、14人もここにおるぞ」
現代人の感覚からすると、なんとも迷惑な話。それなら最初から普通に交渉に来ればいいのに……と思ってしまいますが、それは、相手が人間ではないのであしからず。
妖精たちと戦うフィン・マクール
騎士たちを探して海を探索していたフィン・マクールも、やがて妖精の国にたどり着きます。妖精と親しいフィン・マクールは、妖精王の申し出を快く引き受け、妖精たちの戦いに参加したのです。
フィン・マクールとフィアナ騎士団の戦いぶりは目覚ましく、戦いは勝利しました。
妖精王は彼らに感謝し、フィアナ騎士団の人間界での戦いで、自分たちも戦って恩を返すことを約束するのでした。
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