【日本神話】土偶はなぜすべて壊された?土偶を壊しては埋めていた縄文人!
つい先ごろ、上野で土偶の展覧会がやっていましたね。(行きませんでしたが……)
ところで皆さんは、土偶を作っていた縄文人が、せっかく作った土偶をバラバラに破壊して、その破片を大地に埋める儀式を行っていたことをご存知でしょうか?現在発見される土偶は、そのほとんどがバラバラの状態で発掘されているのですよ。
縄文人は、なぜそのような奇妙な儀式を繰り返していたのでしょうか?
しかも!この儀式、実は日本だけのものではないのです。東南アジア、遠くアメリカでも、同じ儀式は行われていました。今回はその謎についてご説明します!
土偶は大地の女神だった!オオゲツヒメ、ウケモチの神話
土偶はすべて女性です。よく見なければ分かりませんが、乳房が作られています。(裏表が分かるためにつけられている、という説がありますが、これは的外れですね。目口がちゃんとあるのだから、乳房を作らなければ裏表が分からないということはありませんよ)
それから強調された大きな腰。くびれ。中には、土偶の中にもう一つ小さな土偶が入っている「子持ち土偶」もあります。土偶とは、「子どもを産む女性」「妊娠している女性」を表したもの。豊穣の女神の姿なのです。
しかし、この土偶が完全な姿で発見されることはほぼありません。皆、バラバラに破壊された状態で見つかるのです。
それも、ただ破壊されているのではなく、破壊した土偶を穴を掘って埋めたり、埋めた周りを土器で囲んだり、大きな石の壇の上に祀っていたりしています。
縄文人は土偶を破壊した後、大切に祀っていたらしいのです。
一見奇妙に思われる行動ですが、この儀式のヒントとなる神話が残されています。豊穣の女神オオゲツヒメ(古事記)とウケモチ(日本書紀)の神話です。
オオゲツヒメとウケモチの神話
あるとき、最高神アマテラスに頼まれて豊穣の女神ウケモチ(古事記ではオオゲツヒメです。名前が違うだけで古事記も日本書紀も同じストーリーです)を訪ねたツクヨミ。
ツクヨミは月の神で大変身分の高い神ですから、ウケモチはニコニコ笑って接待。大量のごちそうを振舞います。
しかし、ツクヨミはウケモチが台所に引っ込んだところをこっそりのぞいて、衝撃の場面を目撃。なんとウケモチは口や尻の穴から食べ物を吐いたり出したりしていたのでした!ツクヨミは大激怒。「よくも汚いものを食わせたな」とウケモチを殺害。すると、死んだウケモチの身体から粟、米、麦、牛、蚕などの食物が生えてきたのでした。
死んだ女神の身体から作物が生じる
死んだウケモチの身体から作物が生じた、という神話は、原始農業のあり方から生まれたと考えられます。
人間が一番初めに始めた農業。親の芋をいくつかに切って、それを地面に埋める作業。実のなる木の枝を切って、それを地面に挿す作業(挿し木)などは、「女神の身体を切り刻んで、それを地面に埋める」と同じです。
おそらく古代の人々は、刻まれた芋が地面の中で育ち、何倍にもなって恵みをもたらしてくれることに感謝と神秘を感じ、豊穣の女神の神話を作ったのでしょう。そしてそれを、土偶を壊しては埋め、豊穣を願う儀式にして、毎年繰り返していたに違いありません。
日本だけじゃない!世界中にあるウケモチ神話
ウケモチの神話は、実はそっくりのバージョンが世界中にあります。今回は、「ウェマーレ族の神話」「アメリカの神話」を紹介しましょう。
不思議な少女ハイヌウェレ
インドネシアのセラム島。ウェマーレ族のアメタという男が、ある日ヤシの木に女の子が実っているのを発見します。
腰を抜かすほどびっくりな光景ですが、アメタはものに動じない人だったらしく、女の子を摘み取ってうちに持って帰り、ハイヌウェレと名付けて育てます。すると、このハイヌウェレ。産まれも驚きなら性質も驚き。大便と同じ方法で宝物を次々と体から排出するのでした。
たちまちアメタは大金持ち。ハイヌウェレはアメタだけでなく、すべての人々に惜しげもなく宝物を与え続けます。彼女は毎晩村の真ん中で踊り、踊りながら宝物をまき散らしたのです。
しかし、人々はだんだん、宝物をいくらでも出せるハイヌウェレを気味悪く思うようになり、ある晩彼女を生き埋めにして殺してしまったのです。
次の日、娘を殺されたことを知ったアメタ。泣き叫びながらハイヌウェレを探し続けます。ようやく見つけたときはすでに変わり果てた姿。そこで彼はなぜか娘の身体を切り刻んで埋葬。そこから、それぞれ違う種類の芋が生えたのです。
トウモロコシとカボチャになった女
ミシシッピ下流のナチェズ族の神話。
昔、一人の女が二人の少女と一緒に暮らしていました。この女は不思議な人で、食べ物がなくなると、いつも二つの大きな籠をもってある建物に閉じこもり、しばらくすると籠を食べ物いっぱいにして出てくるのでした。
「あの人はどうやって、食べ物を出してくるのかしら?のぞいてみましょうよ」少女たちは好奇心に駆られて、ある日のぞいてしまいます。すると女の人は、籠の上に股を開いて、便をするのと同じ方法で食べ物を出していたのでした。
その晩、食べ物を汚そうに見て食べようとしない少女たちを見て、女の人は言いました。「この食べ物が汚いと思うなら、しかたがないからわたしを殺して、死体を燃やしなさい。そうしたら、その場所からいろいろなものが生えてくるから。おまえたちはこれからそれを食べて生きていくことができるでしょう」
二人の少女はその通りにし、以後人々は農耕をして生きていくようになったのでした。