人生を変える一冊!「西遊妖猿伝」
このブログを真面目に読んでる方なら、わたしが歴史にのめり込んだ人生を歩んでいることはよくお分かりのことと思います。
ところで、どうしたいきさつで、わたしがこれほど歴史にはまったか?実は、ある漫画との出会いが運命を大きく変えたのです。その名も「西遊妖猿伝(さいゆうようえんでん)」!
知る人ぞ知る、漫画界の鬼才、諸星大二郎(もろぼしだいじろう)の代表作にして、ライフワークとしている傑作。(手塚治虫の火の鳥的な作品)今回は、この作品の魅力をお伝えします。
西遊妖猿伝ってこんな話
最初にお断りしておきますが、この作品は長いです。しかも、まだ完結してないです。現在は第三部まで出版されてますが、第一部は九巻、二部は十六巻、三部はまだ四巻です。続きはいつ出るのかな……。大二郎先生、永遠のファンですから、いつまでも待ってます。
題名を見れば大体察しが付くと思いますが、この作品は「西遊記」を題材にしています!誰もが知ってる、あのお話。中国の名僧、三蔵法師と、猿の妖怪、孫悟空が一緒に旅するストーリー。
ですが!この漫画の主人公孫悟空は、猿でもなければサイヤ人(よく知らないけど、サイヤ人って宇宙人らしいね?)でもありません!なんと、この孫悟空は一目で惚れてしまうほど紅顔の美少年(現在だと、もう青年かな?)。
孫悟空少年は最初フツーの人間でしたが、あるとき斉天大聖(せいてんたいせい)とゆー、なんか意味不明の猿の妖怪の称号を受けてしまいます(簡単に言えば憑りつかれてしまいます)。以来、孫悟空少年は頭に金の金輪をはめ、手には金箍棒(きんこぼう。如意棒のことだよ。でも伸びたり縮んだりはしないよ)を持ち、縦横無尽の戦いっぷり。金角、銀角、はてはアヤシイ仙人相手に、まさに無敵の強さです!
さて、そんな一騎当千の孫悟空。遠い天竺(てんじく。インド)まで仏教の神髄を学びに行こうとする三蔵法師(このときはまだ玄奘といいます)と運命的な出会いを果たし、この高僧と共に天竺へ渡る決心をしたのでした!
えらく略しましたが、大体そーゆー話です。(諸星ファンの人、ごめんね)
西遊妖猿伝のここが凄い!
この作品については、魅力が多すぎてとても語り尽くせませんが、「これだけは!」というところを厳選して言いますと……
絵がカッコよすぎる
この作品、とにかく絵が特徴的です。他にこんな絵を描く作家は見たことがありません!まるで、中国の古典絵画や切り絵が、そのまま動き回っているようです!
西遊記の時代ですから、ほとんどの人物が鎧を着ているわけですが、これはペンじゃなく筆で描いたんじゃないかと……。わたしも中高生のころ、けっこう真似して書いてみたんですが(鎧が大好きなんです……。どこに行けば買えますかね?)、足元にも及ばなくて泣きました。改めて大二郎先生の鬼神レベルが分かります!
実在の人がいっぱい出てくる!
この作品は、ただの西遊記題材のストーリーじゃありません。西遊記はモチーフにしてるだけで、全く別物の作品です。
かなり史実を取り入れてまして……例えば、中国史であまりにも有名な玄武門(げんぶもん)の変が思いっきり出てきて、その中で孫悟空が大暴れしています。中国の名君、李世民(りせいみん)、おつきの人々が勢ぞろい!しかも、顔がウケるほど肖像画そっくり。
モンゴルの北方民族と李世民との戦いも頻繁に出てきます。西遊記の世界で遊びながら、当時の中国史をたどれるところが凄いですね。
ただし。孫悟空とよく戦う李勣(りせき)とゆーカッコいい将軍だけは、顔を期待しちゃダメですよ。漫画では超ハンサムでしたが、肖像画を見ると泣きます。中学の頃、「ああ、見なきゃよかった……。なぜ見てしまったんだろう……」と後悔しました。歴史漫画に良くある話です。
あり得ないほど中国の伝説に詳しい
今日、民俗学だの考古学だの呪術だのを題材にした漫画は掃いて捨てるほど出まわってますが……わたしはここで断言します!
諸星の書くものはホンモノ!他はすべてニセモノ!
神をも恐れぬセリフですが、本気でそう思ってます!大二郎先生の作品には、まさにホンモノの古典の空気が漂ってくるのです。
この作者、信じられないくらい古典に精通してます。読んでて「こんくらい物知りになりて~」ってドキドキするほどです。中国の呪術の巫蟲(ふこ)だとか、聞いたことない妖怪の名前とか、五行説だとか八卦だとか、多分チベット当たりのわけのわからん地理の話……。とにかく、これでもかってくらい古代中国が詰め込まれているのです!
古代ロマン好きにはたまらない作品です!
孫悟空がたまらなくカッコいい
西遊記を読んだ方ならお分りでしょうが、原作の孫悟空は二枚目半ですよね。最強キャラですが、かなり下品だし、口汚いし、実は抜けてるし。……猿だから当たり前です。そこが可愛げがあって魅力なんですが。
でも、西遊妖猿伝の孫悟空は人間です。しかも謎なくらい美形です。「最強」「短気」「すぐ暴力で解決」とゆー面は、猿の孫悟空と変わりませんが、この悟空は何か特殊なフェロモンの持ち主。女は少女から年増まで夢中になるというモテっぷり。どころか男からも惚れられまくるという凄まじさ。
腕前もさえまくってます。数百人の大軍を相手に一人で退治。本気でキレたら宮殿の一つや二つぶっ潰すのも朝飯前。
決め台詞は、ボスキャラが「き……貴様、人間ワザじゃない。何者なんだ!」と尋ねると、いきなりボスキャラの頭を叩き割って
「斉天大聖孫悟空だ!」
です!名乗ってるだけですがカッコいいです!
西遊妖猿伝にハマりすぎてこうなった
わたくしことメリクリウスが、西遊妖猿伝を読んだのは小学五年生でありました。以来、二十年くらいファンを続けているのですが……初めて読んだ時の衝撃たるや、人生を変えるほどでありました!
それまで、メリクリウスはギリシャ神話など西洋史にしか興味がなかったのですが、これを読んで中国史に開眼。涙を流すほど感激し、中国の古典を読み漁るよーになりました。
その結果、高校の世界史はパーフェクトでした(これを読めば中国史はちょろいです!)。しかも、その後大学は歴史学科に進み、考古学を専攻してしまいました。まさに、人生を変える一冊です!
歴史学科の教授はこう語る
わたしは大学で東洋考古学を学んだのですが――この時の教授とおしゃべりしてた時、「諸星の漫画好きなんですよ。教授、ご存知ですか?」とさりげなく尋ねたところ……教授、重々しく、こう答えました。
「読んでないワケがない!あの人は、オレよりも詳しい!神なんだ!」
専門家にまで、こう言わせる大二郎先生。改めて尊敬を深めた一瞬でした。
まとめ
長々と書きまくりましたが、つまり、わたしが何を言いたいかとゆーと、「とにかく面白い!間違いない!読んでね!」ってことです!西遊妖猿伝の足元にも及びませんが、ついでに、わたしが書いた本も買ってくれると嬉しいです。
それにしても大二郎先生、わたしにとっては三拝九拝しても足りないくらいの大偉人です。一枚でいいからサインが欲しいな……。
全巻セットはこれだ!