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【ケルト神話】聖剣カリバーン!実は何度も剣を引っこ抜かなきゃならなかったアーサー王

アーサー王と言えば、石に深々と刺さった聖剣をスルリと引き抜き、「アーサーこそ神が定めた聖なる王だ!」と人々の歓声を浴びたシーンが有名です。

このシーンはディズニー作品にもありますし、数々の映画にもなりましたね。

しかし伝説のホントの話では、実は最初にアーサーが剣を引き抜いたとき、誰もそばで見てなかったってご存知ですか?人々の注目を浴びつつ、劇的に剣を引き抜いたというのは映画の創作なのです!伝説では、アーサーは一人で剣を引っこ抜き、「引き抜いたよ」と言っても、誰も「はあ?うそでしょ?」と本気にしてくれなかったのです。実に地味~なシーンだったのでした。

ここでは、聖剣カリバーンの伝説を分かりやすくご説明いたします!

聖剣カリバーン。用意したのはマーリン

イングランドを支配していたユーサー・ペンドラコン王。彼には不倫の果てに誕生した一人息子アーサーがいたのですが、アーサーの出生が訳アリすぎたので、アーサーは部下の騎士エクターに預けられました。

その後、ユーサーが死んでしまうとイングランドはグッチャグッチャの状態に。我こそは王にならんと、腕に覚えのある騎士たちが暴れ出したのでした。

そこへ、世界一の魔法使いマーリンが登場。このマーリン、「アーサー王伝説」のここぞというシーンにいつもしたり顔でやってきて、魔法のすごいパワーで何でも解決するキャラなのです。

マーリン、教会に名だたる騎士たちを全員集めて、魔法の力を発揮します。異次元から巨大な大理石を出現させ、教会の中庭に音もなく設置。その石の上には鉄の鉄床(かなとこ)。輝く聖剣カリバーンが深々と刺さっていました。鉄床には金文字で「この剣を引き抜いたものがイングランドの王なるべし」と記されていました。

騎士たちはこぞって挑戦。しかし、剣はびくともせず、「ここには王と定められた者がいないのだ」ということでお開きになりました。

アーサー、何も知らずに剣を引き抜く

さて、それから数年が経ち、アーサー16歳。アーサーは自分が実は王子であることを知らず、エクター卿を父親と思って育っていました。エクター卿には実の息子ケイがいて、ケイはアーサーより年上でした。

あるとき、騎士になったケイが教会で開かれる模擬試合(騎士たちが剣や槍で戦うトーナメント大会。お正月に開かれていた)に出場するとき、アホ過ぎることにケイは剣をうちに忘れてきました。(学校にランドセル忘れるレベルのバカです)

「頼む!うちに帰って剣を持ってきてくれ」

アーサーに泣きついたケイ。「分かった!待ってて!」と、アーサーは急いでうちに引き返します。

しかし、うちのカギが閉まっていたのでアーサーは中に入れませんでした。困ったアーサーは、教会の中庭にある剣を思い出します。

「そうだ!あれをもらっていこう」と、勝手に中庭に入って無断で剣を引き抜き、横領したのでした。はっきりいって盗みと変わりありませんでした。

エクター卿に信じてもらえないアーサー

「兄さん、これを取ってきたよ!」

と、ケイに剣を渡したアーサー。アーサーはこの剣の由来を全然知らなかったのです。ですから、自分が真の王と定められたことを知らなかったのでした。

この剣は誰もが知っている剣なのに知らなかったのもニュースに疎すぎですが、引き抜くときに鉄床の金文字を読まなかったあたりもトホホです。アーサーは聖なる王で「優しく気高い」人ですが、「うっかりもの」で、この後も何度もこの性格で失敗します。

ところで、ケイはこの剣が何であるかちゃんと知っていました。そこで「この剣はオレが引き抜いたよ!」とエクター卿にウソの報告。しかし「こいつが王になれるわけない」とエクター卿はあっさり見抜き、「ほんとのことを言え」と脅します。

ケイはしぶしぶ告白。「アーサーが引き抜いてきた」と聞きますが、エクター卿はこれもうたぐります。

「本当にぼくが引き抜いたんです、お父さん」

「この目で見ない限り信じられん。アーサー、本当だというならやってみろ」

もう一回カリバーンを石に刺し込み、エクター卿とケイが引き抜きに挑戦。もちろん剣は動きません。アーサーが手をかけると、スルリと剣は抜けました。

やっと信じてくれたエクター卿。涙にむせびつつ、「あなたは私の子ではありません。マーリンに預かったんです」と語るのでした。

みんなに信じてもらえないアーサー

教会には模擬試合に集まった大勢の騎士たちがいました。アーサーは騎士たちにカリバーンを抜いたと言います。が、全然信じてもらえませんでした。

「こんな小僧が王だなんて嘘だ」

「ユーサー・ペンドラコンの血を引いているわけがない」

と、耳を貸さず、アーサーが目の前で剣を引き抜いて見せても逆切れするばかり。「王だと決定するのは聖燭節(せいしょくせつ。二月二日)の日だ」と、勝手に日にちをのばしてしまいました。

その日、また騎士たちが引き抜きに失敗し、アーサー一人が成功しても「復活祭(イースター、春分の日の後の最初の満月のあとの最初の日曜日)に決めよう」とまたまた日延べ。

その日も同じことが起きましたが、またまた騎士たちは怒り続け「聖霊降臨祭(せいれいこうりんさい、復活祭後の第七日曜日)に決めよう」とさらに日延べ。

教会の大司教とマーリンは「これはヤバい」と判断。大勢のサクラの騎士たち(ユーサー・ペンドラコンに忠実だった騎士たち)を選んでアーサーのそばに立たせ、アーサーが剣を引き抜くと

「アーサーが真の王だ!アーサーが王になるのは神の意志だ。逆らうものは殺してしまおう!」

と叫ばせました。

これで他の騎士たちもひざまずき、アーサーを王にしたのでした。

以上が、アーサー王の聖剣カリバーン伝説です。剣を引き抜いて「彼が王だ!」と劇的に王になったのではなく、道のりは実に地味で長かったのでした。

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