【エッダ日本語訳】巫女の予言(巫女が世界の始まりから終わりまで語るお話)
北欧神話の一番重要な資料、「エッダ」!
北欧神話の古歌謡集で、いろんなお話が詩の形でまとめられてます。その中で特に有名なのが、「巫女の予言」という歌!一人の巫女(ヴァラ)が、オーディンに
「この世の始まりから終わりまで、すべて語れ」
と命じられて、ぺらぺらとしゃべるという内容です。北欧神話全部のあらすじを知りたいなら、この「巫女の予言」はうってつけ!
エッダはちょ~っと難解なので、わたくし坂口がちょくちょく説明します。では、はじまり、はじまり!
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(長すぎるので全文は載せません。ご了承ください)
巫女の予言
「すべての尊い氏族(やから)、身分の高下を問わず、ヘイムダルの子らに、よく聴いてもらいたい。戦士の父(ヴァルファズル)よ、あなたは、わたしに、思い出せる限り古い昔の話を、見事語ってみよと、望んでおられる。」
【解説!】
記念すべき、「巫女の予言」の第一行目!
「ヘイムダルの子ら」ってのは、人間ぜんぶのことです!ヘイムダルは人間の身分を最初に作った神様なので、以来人間のことを「ヘイムダルの子ら」って言うんですね。「ヴァルファズル」というのは、オーディンのことです。オーディン、いっぱい名前がありますね~。
「ユミルの住んでいた太古には、砂もなければ、海もなく、冷たい浪もなかった。大地もなければ、天もなく、奈落の口があるばかりで、まだどこにも草は生えていなかった。
やがて、ブルの息子たちが、大地を持ち上げ、名高いミズガルズ(ミッドガルド)を作った。太陽は南から大地の石の上を照らし、地には青々と緑の草が萌えた」
【解説!】
オーディン、巨人ユミルを殺して、その死骸から天地を創造しました!「ブルの息子たち」っていうのは、オーディン、ヴィリ、ヴェーの神様三兄弟のことです。
「やがて、これらの群れの中から、三人の、強いが、優しい神々が家に帰る。岸辺で彼らは、自らの運命を知らぬ、アスクとエブムラを見つけた。
彼らは息をもっていなかった。心ももっていなかった。命の暖かさも身振りも、良い姿ももっていなかった。オーディンは息を与え、ヘーニルは心を与え、ローズルは命の暖かさと良い姿を与えた」
【解説!】
いよいよ人間登場です!
「神々が家に帰る」という箇所は、ど~も写本の間違いじゃないの?と言われていて、意味不明なので気にしなくていいです。
オーディンはじめ、三人の神が海辺で流木発見!この流木を人間の姿にして、命を与えたというシーンですね。男がアスク、女がエブムラ!火をつけるために木を二つこすり合わせる行為は、性行為そっくりなので、流木から人間作ったといわれてるんです。
ローズルという神はここにしか名前が出てきませんが、おそらくロキのことです。この頃からオーディンととっても仲良し!
「神々が槍でグルヴェイグを突き、ハールの館で焼いたときが、この世での戦の始まりであることを、わたしは知っている。三たび焼いたが、三たび生まれかえり、何度もくり返したが、女はまだ生きている」
「オーディンは槍を放って、敵の軍勢の中に投げつけ、これがこの世で最初の戦となった。アース神の城壁は破られ、戦を告げるヴァンル神(ヴァン神)たちは戦場を踏み荒らすことができた」
【解説!】
ついに始まりました。アース神VSヴァン神の戦いです!
ヴァン神の一人、魔女グルヴェイグをアース神が殺しちゃったので、ヴァン神大激怒!
この時、オーディンが「戦闘開始」の合図に槍を放ったので、その後北欧人は戦争を始める時、「リーダーが敵勢に向かって槍を一台投げる」のが慣習になったんだそうな。
「一人で外に座っていると、アースの老王がやってこられ、わたしの眼の中をのぞきこまれた。何をわたしにおたずねになるのか。なぜ、わたしをおためしになるのか。オーディンよ、あなたがどこに眼を隠されたか、わたしはよく知っている。あの名高いミーミルの泉の中です。ミーミルは毎朝のように、戦士の父の担保から蜜酒を飲む。おわかりか。
戦の父はわたしに腕輪や首飾りを選び与え、魔法と予言の力を手に入れた。わたしは全世界を、遥か彼方まで見渡した。」
【解説!】
「アースの老王」はもちろんオーディンのこと!この「巫女の予言」は全部、オーディンが「この世の初めから最後まで、全部語って見ろ」と、この巫女に命令して、巫女が語った内容ということになってます。
「戦士の父の担保」とは、オーディンがミーミルの泉に投げ入れた片目のこと!この泉はただの泉じゃありません!水じゃなくて、飲んだだけで天才になれる蜜酒が湧いてます!ミーミルはこの蜜酒を毎朝飲んでるから大天才なんですね~。うらやましい!首だけにはなりたくないけど。
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「オーディンの子、紅(あけ)に染まる神バルドルに定められた運命をわたしは見た。野面に高く、ほっそりと、それは美しい寄生木(やどりぎ)の枝が生い茂っていた。ほっそりと見えるこの木が危険きわまるわざわいの矢にかわり、ヘズ(ホズ)がそれを射た」
【解説!】
光の神バルドルが、ロキのヤドリギで殺されちゃいます!もちろんバルドルはかわいそーですが、全然悪くないのに殺されちゃったホズはもっとかわいそうなんじゃ……。
「温泉の森に、わざわいを次々にたくらむロキに似た者が縛られ横になっているのを、わたしは見た。シュギンは夫の身を案じて、そばに座っている。おわかりか」
【解説!】
ああ……!ロキ、捕まっちゃいました!
ロキは洞窟の岩の上に縛られて、顔に毒液をボタボタとたらされる拷問を受け続けます!なんて哀れな……(泣)
「怪物は、瀕死の人間の命をとって腹を満たし、神々の座を赤い血潮で染める。うちつづく行く夏化は、太陽の光は暗く、悪天候ばかりとなる。おわかりか。」
【解説!】
ついに始まりました!ラグナロクです!
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「ガルムがグニパヘリルの前で、はげしく吠えた。鎖は引きちぎられ、狼は走り出す。古い昔のことをあまた、わたしは知っている。これから先の、裁き治める勝利の神の、むごい運命が、わたしの眼には見える。
兄弟同士が戦い合い、殺し合うであろう。親戚同士が不義を犯すであろう。この世は血も涙もないものとなり、姦淫は大手を振ってまかり通り、鉾(ほこ)の時代、剣の時代がつづき、盾は裂かれ、風の時代、狼の時代がつづいて、やがてこの世は没落するであろう。誰一人として他人をいたわる者などないであろう
ミーミルの子らは忙(せわ)しく行きかい、古きギャラルホルンで、運命の幕は切っておとされる。ヘイムダルは角笛を高高とあげて吹く。オーディンはミーミルの頭と語る」
【解説!】
ガルムは地獄の犬、狼はロキの子フェンリル狼のことです。
みんなめっちゃ戦ってますね~。ヘイムダルがとうとう角笛を吹きならしました!いよいよ大決戦ですよ!
「一艘の船が、東からやってくる。ムスペルの軍勢は海原を渡ってくるであろう。そして舵をとるのはロキだ。巨人たちは狼とともに攻め寄せる。ビューレイプトの兄弟も一味に加わっている。
アース神はいかに。妖精たちはいかに。全ヨーツンヘイムはどよもし、アース神は寄り集まって協議を重ね、岸壁の案内人、小人らは石の扉の前で吐息をつく。おわかりか。
スルトは南から、枝の破滅をもって攻め寄せ、戦の神々の剣からは、太陽がきらめく。岩は崩れ落ち、女巨人は倒れ、人々は冥府への道をたどり、天は裂ける」
【解説!】
船はナグルファル、死人の爪で作った船のことです。あの世の軍隊から巨人の軍隊まで、いっぱい満載してます!
ロキです!ついにロキが解放されましたよ!でも、やっと解放されたのに出てくるのはこの一行だけ……。悲しい……(T_T)
「オーディンが狼に戦をいどみ、ベリの、輝く殺し手がスルトを相手にまわすとき、二度目の悲しみがフリーンに迫る。フリッグのいとしい夫はそこで倒れるであろう」
「太陽は暗く、大地は海に沈み、きらめく星は天から落ちる。煙と火は猛威をふるい、火炎は天をなめる」
【解説!】
オーディン死んじゃいました!フェンリル狼にパクっと食べられちゃいましたよ。
神々の王なんだから、もうちょっと粘ったってよかったのに……。
フリーンというのは、フリッグの別名のことです。
「海中から、常緑の大地がふたたび浮き上がるのが、わたしには見える。滝はたぎりおち、鷲は上空を飛び、山に休み魚を狙う。
アース神たちはイザヴェルにつどい、強敵、大地の紐のことを語り合い、かの大事件や、フィムブルチュールの古い秘密のことどもを回想する」
「ギムレーに黄金葺(ぶ)きの館が太陽よりも美しく聳(そび)え立っているのが、わたしには見える。そこには誠実な人々が住み、永遠に幸福な生活をおくる」
【解説!】
ラグナロク終わりました!世界がまた再生して、生き残りの神々がひょこひょこ現れてきたところですね。
「大地の紐」はミッドガルド蛇のことです。トールとミッドガルド蛇の戦いのことを語ってるんですね。フィムブルチュールはオーディンの別名です。ギムレーは、世界を焼いた日から保護された場所のことを言います。
「巫女の予言」は世界の再生でおしまいです!長々とお疲れ様!
いろいろ本も紹介してます。見てね↓
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