【エッダ日本語訳】巫女の予言(巫女が世界の始まりから終わりまで語るお話)

2025年6月5日

北欧神話の一番重要な資料、「エッダ」!

北欧神話の古歌謡集で、いろんなお話が詩の形でまとめられてます。その中で特に有名なのが、「巫女の予言」という歌!一人の巫女(ヴァラ)が、オーディンに

「この世の始まりから終わりまで、すべて語れ」

と命じられて、ぺらぺらとしゃべるという内容です。北欧神話全部のあらすじを知りたいなら、この「巫女の予言」はうってつけ!

エッダはちょ~っと難解なので、わたくし坂口がちょくちょく説明します。では、はじまり、はじまり!

【関連記事】
オーディンは北欧神話の王!片目の理由や武器まで徹底解説!
北欧神話のあらすじ!どこよりも分かりやすい完全保存版!

(長すぎるので全文は載せません。ご了承ください)

巫女の予言

「すべての尊い氏族(やから)、身分の高下を問わず、ヘイムダルの子らに、よく聴いてもらいたい。戦士の父(ヴァルファズル)よ、あなたは、わたしに、思い出せる限り古い昔の話を、見事語ってみよと、望んでおられる。」

【解説!】
記念すべき、「巫女の予言」の第一行目!

「ヘイムダルの子ら」ってのは、人間ぜんぶのことです!ヘイムダルは人間の身分を最初に作った神様なので、以来人間のことを「ヘイムダルの子ら」って言うんですね。「ヴァルファズル」というのは、オーディンのことです。オーディン、いっぱい名前がありますね~。

 

 

「ユミルの住んでいた太古には、砂もなければ、海もなく、冷たい浪もなかった。大地もなければ、天もなく、奈落の口があるばかりで、まだどこにも草は生えていなかった。

やがて、ブルの息子たちが、大地を持ち上げ、名高いミズガルズ(ミッドガルド)を作った。太陽は南から大地の石の上を照らし、地には青々と緑の草が萌えた」

【解説!】
オーディン、巨人ユミルを殺して、その死骸から天地を創造しました!「ブルの息子たち」っていうのは、オーディン、ヴィリ、ヴェーの神様三兄弟のことです。

 

オーディンは北欧神話の王!片目の理由や武器まで徹底解説!

 

「やがて、これらの群れの中から、三人の、強いが、優しい神々が家に帰る。岸辺で彼らは、自らの運命を知らぬ、アスクとエブムラを見つけた。

彼らは息をもっていなかった。心ももっていなかった。命の暖かさも身振りも、良い姿ももっていなかった。オーディンは息を与え、ヘーニルは心を与え、ローズルは命の暖かさと良い姿を与えた」

【解説!】
いよいよ人間登場です!

「神々が家に帰る」という箇所は、ど~も写本の間違いじゃないの?と言われていて、意味不明なので気にしなくていいです。

オーディンはじめ、三人の神が海辺で流木発見!この流木を人間の姿にして、命を与えたというシーンですね。男がアスク、女がエブムラ!火をつけるために木を二つこすり合わせる行為は、性行為そっくりなので、流木から人間作ったといわれてるんです。

ローズルという神はここにしか名前が出てきませんが、おそらくロキのことです。この頃からオーディンととっても仲良し!

 

「神々が槍でグルヴェイグを突き、ハールの館で焼いたときが、この世での戦の始まりであることを、わたしは知っている。三たび焼いたが、三たび生まれかえり、何度もくり返したが、女はまだ生きている」

「オーディンは槍を放って、敵の軍勢の中に投げつけ、これがこの世で最初の戦となった。アース神の城壁は破られ、戦を告げるヴァンル神(ヴァン神)たちは戦場を踏み荒らすことができた」

【解説!】
ついに始まりました。アース神VSヴァン神の戦いです!

ヴァン神の一人、魔女グルヴェイグをアース神が殺しちゃったので、ヴァン神大激怒!

この時、オーディンが「戦闘開始」の合図に槍を放ったので、その後北欧人は戦争を始める時、「リーダーが敵勢に向かって槍を一台投げる」のが慣習になったんだそうな。

 

「一人で外に座っていると、アースの老王がやってこられ、わたしの眼の中をのぞきこまれた。何をわたしにおたずねになるのか。なぜ、わたしをおためしになるのか。オーディンよ、あなたがどこに眼を隠されたか、わたしはよく知っている。あの名高いミーミルの泉の中です。ミーミルは毎朝のように、戦士の父の担保から蜜酒を飲む。おわかりか。

戦の父はわたしに腕輪や首飾りを選び与え、魔法と予言の力を手に入れた。わたしは全世界を、遥か彼方まで見渡した。」

【解説!】

「アースの老王」はもちろんオーディンのこと!この「巫女の予言」は全部、オーディンが「この世の初めから最後まで、全部語って見ろ」と、この巫女に命令して、巫女が語った内容ということになってます。

「戦士の父の担保」とは、オーディンがミーミルの泉に投げ入れた片目のこと!この泉はただの泉じゃありません!水じゃなくて、飲んだだけで天才になれる蜜酒が湧いてます!ミーミルはこの蜜酒を毎朝飲んでるから大天才なんですね~。うらやましい!首だけにはなりたくないけど。

北欧神話の蜜酒(蜂蜜酒)、エール、ワイン。その歴史と製法、エピソード紹介

 

オーディンの子、紅(あけ)に染まる神バルドルに定められた運命をわたしは見た。野面に高く、ほっそりと、それは美しい寄生木(やどりぎ)の枝が生い茂っていた。ほっそりと見えるこの木が危険きわまるわざわいの矢にかわり、ヘズ(ホズ)がそれを射た」

【解説!】

光の神バルドルが、ロキのヤドリギで殺されちゃいます!もちろんバルドルはかわいそーですが、全然悪くないのに殺されちゃったホズはもっとかわいそうなんじゃ……。

 

ロキは北欧神話最大のスター!能力から武器まで徹底解説!

 

「温泉の森に、わざわいを次々にたくらむロキに似た者が縛られ横になっているのを、わたしは見た。シュギンは夫の身を案じて、そばに座っている。おわかりか」

【解説!】

ああ……!ロキ、捕まっちゃいました!

ロキは洞窟の岩の上に縛られて、顔に毒液をボタボタとたらされる拷問を受け続けます!なんて哀れな……(泣)

 

 

「怪物は、瀕死の人間の命をとって腹を満たし、神々の座を赤い血潮で染める。うちつづく行く夏化は、太陽の光は暗く、悪天候ばかりとなる。おわかりか。」

【解説!】

ついに始まりました!ラグナロクです!

 

【北欧神話】ラグナロクのあらすじ!結末や生き残りがこれで分かる!

 

「ガルムがグニパヘリルの前で、はげしく吠えた。鎖は引きちぎられ、狼は走り出す。古い昔のことをあまた、わたしは知っている。これから先の、裁き治める勝利の神の、むごい運命が、わたしの眼には見える。

兄弟同士が戦い合い、殺し合うであろう。親戚同士が不義を犯すであろう。この世は血も涙もないものとなり、姦淫は大手を振ってまかり通り、鉾(ほこ)の時代、剣の時代がつづき、盾は裂かれ、風の時代、狼の時代がつづいて、やがてこの世は没落するであろう。誰一人として他人をいたわる者などないであろう

ミーミルの子らは忙(せわ)しく行きかい、古きギャラルホルンで、運命の幕は切っておとされる。ヘイムダルは角笛を高高とあげて吹く。オーディンはミーミルの頭と語る」

【解説!】

ガルムは地獄の犬、狼はロキの子フェンリル狼のことです。

みんなめっちゃ戦ってますね~。ヘイムダルがとうとう角笛を吹きならしました!いよいよ大決戦ですよ!

 

 

 

「一艘の船が、東からやってくる。ムスペルの軍勢は海原を渡ってくるであろう。そして舵をとるのはロキだ。巨人たちは狼とともに攻め寄せる。ビューレイプトの兄弟も一味に加わっている。

アース神はいかに。妖精たちはいかに。全ヨーツンヘイムはどよもし、アース神は寄り集まって協議を重ね、岸壁の案内人、小人らは石の扉の前で吐息をつく。おわかりか。

スルトは南から、枝の破滅をもって攻め寄せ、戦の神々の剣からは、太陽がきらめく。岩は崩れ落ち、女巨人は倒れ、人々は冥府への道をたどり、天は裂ける」

【解説!】

船はナグルファル、死人の爪で作った船のことです。あの世の軍隊から巨人の軍隊まで、いっぱい満載してます!

ロキです!ついにロキが解放されましたよ!でも、やっと解放されたのに出てくるのはこの一行だけ……。悲しい……(T_T)

 

 

 

「オーディンが狼に戦をいどみ、ベリの、輝く殺し手がスルトを相手にまわすとき、二度目の悲しみがフリーンに迫る。フリッグのいとしい夫はそこで倒れるであろう」

「太陽は暗く、大地は海に沈み、きらめく星は天から落ちる。煙と火は猛威をふるい、火炎は天をなめる」

【解説!】

オーディン死んじゃいました!フェンリル狼にパクっと食べられちゃいましたよ。

神々の王なんだから、もうちょっと粘ったってよかったのに……。

フリーンというのは、フリッグの別名のことです。

 

 

「海中から、常緑の大地がふたたび浮き上がるのが、わたしには見える。滝はたぎりおち、鷲は上空を飛び、山に休み魚を狙う。

アース神たちはイザヴェルにつどい、強敵、大地の紐のことを語り合い、かの大事件や、フィムブルチュールの古い秘密のことどもを回想する」

「ギムレーに黄金葺(ぶ)きの館が太陽よりも美しく聳(そび)え立っているのが、わたしには見える。そこには誠実な人々が住み、永遠に幸福な生活をおくる」

【解説!】

ラグナロク終わりました!世界がまた再生して、生き残りの神々がひょこひょこ現れてきたところですね。

「大地の紐」はミッドガルド蛇のことです。トールとミッドガルド蛇の戦いのことを語ってるんですね。フィムブルチュールはオーディンの別名です。ギムレーは、世界を焼いた日から保護された場所のことを言います。

「巫女の予言」は世界の再生でおしまいです!長々とお疲れ様!

いろいろ本も紹介してます。見てね↓
北欧神話関連マンガ!これさえ読めば神話の70%は分かる!リスト作成中
北欧神話についての本!これを読めば北欧神話マニアになれる!

【関連記事】
オーディンは北欧神話の王!片目の理由や武器まで徹底解説!
北欧神話のあらすじ!どこよりも分かりやすい完全保存版!
【北欧神話】ラグナロクのあらすじ!結末や生き残りがこれで分かる!
ヴァルキューレはオーディンのパシリ!忙しい女神の仕事を詳しく解説
トールってどんな神?ハンマーを持つ雷神を徹底解説!
ロキは北欧神話最大のスター!能力から武器まで徹底解説!
フレイヤってどんな女神なの?猫と首飾りがシンボル!
【北欧神話】ヘイムダルは神々の番人!実は人類の祖先でもある

【北欧神話のあらすじ】神々の王オーディン、世界を創造する
【北欧神話のあらすじ】ロキ、アース神の仲間入りをする
【北欧神話のあらすじ】アース神VSヴァン神!勝つのはどっちだ!
【北欧神話のあらすじ】アースガルドの城壁づくり。ロキ大活躍!
【北欧神話のあらすじ】フレイヤとブリーシングの首飾り
【北欧神話のあらすじ】フレイが勝利の魔剣を失ったわけ
【北欧神話のあらすじ】ロキ、小人にミョルニルとグングニルを作らせる
【北欧神話のあらすじ】ヘイムダルが人間に階級を作る
【北欧神話のあらすじ】トールがミョルニルを紛失!必死に助けるロキ
【北欧神話のあらすじ】ロキの3人の子供たち。その悲惨な運命!
【北欧神話のあらすじ】ロキ、バルドルを殺害する
【北欧神話のあらすじ】ロキの口論

出版した本

三国志の影 脇役たちの物語三国志の影 脇役たちの物語
劉備玄徳が登場し、彼が死ぬまでの間に活躍した、三国志の名脇役たちを集めたシリーズ、全10巻。第1巻は「劉備登場編」。劉備の故郷琢県(たくけん)に伝わる、「演義」とは全く異なる劉備の逸話。西遊記と劉備の共通点とは?――以来100年の治乱興亡のドラマが、ここから始まる。
山中鹿之介と十勇士より熱を込めて山中鹿之介と十勇士より熱を込めて
「我に七難八苦を与えたまえ」という名言で有名な、山中鹿之介。 本書では、「山中鹿之介の史実の人生」と、「鹿之介と十勇士たちの講談エピソード」をエッセイ調にまとめました。通勤時間に読める鹿之介入門書です!
平家物語より熱を込めて平家物語より熱を込めて
平家滅亡という、日本史を揺るがす大事件に巻き込まれた人々。平家物語に登場する、木曾義仲、文覚上人、平維盛、俊寛僧都など、一人一人の人物の人生を、ショートショートでまとめました。彼らの悲劇の人生を追いながら、平家物語全体のストーリーに迫ります。
曽我兄弟より熱を込めて曽我兄弟より熱を込めて
妖刀・膝丸の主としても注目の曽我十郎祐成・五郎時宗兄弟。 どんな困難にもめげず、父の仇討ちを果たして散った若き二人の物語が 講談調の語りと徹底した時代考証で鮮やかに蘇る! 鎌倉期の生活や文化に関する解説も満載の一冊。
忠臣蔵より熱を込めて忠臣蔵より熱を込めて
日本三大仇討ちの一つ、忠臣蔵。江戸時代に、主君浅野内匠頭【あさのたくみのかみ】の仇を討つために、四十七人の家臣たちが吉良上野介【きらこうずけのすけ】の屋敷に討ち入った、実際にあった大事件である。
あなたの星座の物語あなたの星座の物語
星占いで重要な、黄道十二星座。それぞれの星座にまつわる物語を詳しく紹介。有名なギリシャ神話から、メソポタミア、中国、ポリネシア、日本のアイヌ神話まで、世界中の星座の物語を集めました。