北欧神話の蜜酒(蜂蜜酒)、エール、ワイン。その歴史と製法、エピソード紹介
北欧神話にやたらといっぱい出てくるアイテム。蜜酒(蜂蜜酒、ミョード)、ワイン、エール!
北欧神話は最初から最後までお酒でいっぱいです!いつでも宴会、酒宴、飲み比べ。こいつらいったい、どれだけ飲むんだ?ってくらい飲みまくりです!
このページでは、彼らが飲んでたお酒の種類やエピソードについて説明します!
当時のお酒ってどんなの?
北欧神話に登場するお酒は蜜酒、エール、ワインの三種類です!でも、今のお酒とはちょっと違いますよ。
蜜酒(蜂蜜酒)
蜜酒は現在では蜂蜜酒と言う方が多いですね。北欧神話ではミード、ミョードとも書かれてます。蜂蜜が原材料です。
蜂蜜酒の歴史は古いです!何と、人間が農耕を始めるより古い!旧石器時代にはすでに作られていたことが分ってます。
というのも、蜂蜜酒は作るのがカンタンなんです。
①蜂蜜に水を入れる。(2~3倍)
②ほっとく。
これだけでできるんです!カンタンでしょ(*´▽`*)
こんなに歴史が古いのは、おそらく自然界で勝手に出来た蜂蜜酒を、古代人が発見。あるいは土器に入れておいた蜂蜜が勝手に蜂蜜酒に変化→こうした理由で、手に入れたからだと思われます。
旧石器時代から青銅器時代になると、蜂蜜酒を作るための土器が急増。みんなどんどん飲むようになっていったことが分ります!
ビールよりも古いんですから、古代ヨーロッパ人にとって蜂蜜酒は「一番身近なお酒」。特別な存在だったらしく、ただ単に楽しみのために飲むだけじゃなくて、呪術や儀式なんかでも使われてたみたいですね。
さて、気になるそのお味は!
実はバリエーションがかなりあるみたいです。というのも、蜂が集めてくる花の蜜の種類によって、味が変わるからです。だから部落ごと、家ごとに味がかなり違ってたらしいですよ。日本での「家ごとに漬物の味が違う」みたいな感覚でしょうか。
ワイン
ワインも蜂蜜酒と同じく、農耕以前からありました。
ブドウは糖分が多いので、
①ぶどうが木から落ちる。
②ブドウの糖分とそこらへんにテキトーにある酵素が結合。
③勝手にアルコールになる。
こうしてぶどうが勝手にワインに変化!
現在でも、山や森の中で自然発生した果実酒を動物が食べて、酔っぱらうことがよくあるんだそうです。おそらく古代人は、酔っ払い動物を見て、自然発生ワインをゲット。「ブドウを摘んでほっとくとお酒になるんだ!」と学んで、自分たちの集落にぶどうの木を植えるようになったのでしょう!
ただし、北欧神話のくそ寒い地方では、ワイン製造はやってませんでした。彼らは暖かいギリシャから、ワインを船で輸入。あるいは略奪。(北欧神話の人間たちって、みんな海賊のヴァイキングだから)
なので北欧神話において、ワインはとっても高級品だったんです!
気になるそのお味は……。
たぶん、現在のワインとかなり違っていたと考えられます。古代のワインはエラく濃くて、ちょっと粘り気がありました。なので当時は、1:3の割合で水割りにして飲んでたそうです。ワインに水を差す為の甕は「クラテール」と呼ばれ、宴会のテーブルの真ん中に置かれて、参加者は自由に使ってました。
↑モーゼルのワインはマジでうまい!ドイツの白は最高に良い!
エール
いよいよ登場、エール!いわゆるビールのことです。
ビールは原材料が麦ですから、人類が農耕を始めて麦を育て、さらに貯蔵、発芽による糖化技術を発見するに至るまで、作ることができません……。
なので、ビールの登場は蜂蜜酒やワインより、ず~っと後だったんです。
でも、やっぱり美味しいですからね!登場するなりビールはあっという間に人気者に!北欧神話でも、神様たちはビールをガンガン飲みまくってます!北欧神話では、蜂蜜酒とビールは「誰でも大好きなみんなの飲み物」。高級品ワインは「エライ神様が威張って飲んでる飲み物」って感じですね。
神話の時代から、ビールは庶民の楽しみだったってことです(^-^)
ただし、古代のビールは現代のビールと全く別モノ。
壁画から当時のビールの作り方を想定しますと……。
①麦を水に浸して発芽させる。(土に埋めとく場合も)
②芽が出たら、生のままでつぶす。
③大型のパンの形にこねあげ、外側が焦げる程度に焼き上げる。
④焼けたパンをバキバキに砕く。
⑤壺に全部入れて、水をくわえてほっとく。
⑥だんだん粥状になり、そのうち自然発酵する。
こんな風に、壺で作りますので、炭酸ガスは抜けちゃいます。今みたいにシュワシュワの泡はありません。
それから、苦み付けをするホップも当時はないので、味も全く違います。苦くありません。アルコール濃度も低いです。
でも!一番の衝撃は「北欧神話のビールは、鍋で煮て熱々にして飲んでた」ってことです!
これはまあ、北欧が寒いからです。日本で日本酒を熱燗にして飲むのと同じ感覚ですね。
ビールはブドウ栽培に適さないヨーロッパ北部で、どんどん発達。なので「ヨーロッパ北部ではビール、南部ではワイン」が作られるようになりました。
北欧神話で飲みまくってる場面、三選!
さて、神話の中ではどんなふうに飲んでるでしょうか?有名どころのエピソードをそれぞれ紹介します!
クヴァシル、蜜酒になっちゃう
アース神とヴァン神が戦争をやめた直後のことです。クヴァシルという大賢人が神々によって作られました。
このクヴァシル、マジで天才だったそうで、答えられない問いは一つもなかったし、また詩の才能は神様越え。
ところが!ある時、小人のフィアラルとガラールという二人の兄弟が、共謀してクヴァシルを殺害!
……これだけだったらただの殺人事件ですが、衝撃なのは、殺した後の小人たちの行動。なんとこいつら、クヴァシルの血を全部抜くと、その血と蜂蜜を混ぜて、ひしゃくでグルグル。蜂蜜酒を作ったのです!(まずそう……)
この蜜酒は天才クヴァシルの血で出来てるので、タダの蜜酒じゃありませんでした。一口でも飲むと、どんなバカでも詩人か大天才になれるという激レアアイテムだったのです!
もちろん小人兄弟は、この蜜酒を家の奥に隠してストック。でも、悪いことはできないもんです……。この後、巨人が力技で蜜酒を強奪。さらにオーディンがこの巨人の娘をだまして横取り。う~ん、悪銭身に付かずとはこのことですね(^^;)
古代、蜜酒には魔力があって、蜜酒を飲むと知恵がつき、詩を生み出すことができると言われてました。この物語はそうした信仰からできたのでしょう(^▽^)/
海神エーギル、ビール造りの係になる
神々は食べ物に困りはしませんでしたが、蜜酒とビールは全然ありませんでした。でも自分で作るのはメンドイので、海神エーギルに
「おい、お前が神々全員分のビールを作れよ。たっぷり作るんだぞ」
と、責任を全部丸投げ。エーギルは超ムカついて、
「そんなこと言ったって、全員分作れる鍋なんかないもん。だから無理」
と、責任逃れしようとします。すると、「オオ、じゃあ鍋さえあれば作るな?約束したぜ!」と、鍋ゲット大作戦に乗り出します!
巨人ヒュミルは深さ五マイルもある鍋を持ってるという情報を得て、トールが力技で強奪するためにヒュミルの元へ。
ヒュミルとトールは釣り競争で勝負をつけるために、船に乗って沖合に出ます。ヒュミルはひょいひょいとクジラを吊り上げましたが、トールが釣ったものは、なんとミッドガルド蛇でした!
かくして勝負はトールの勝ち。とっても悲しんでるヒュミルを残して、大釜はアースガルドへ持っていかれてしまいました。そしてかわいそうなエーギルは無理矢理ビール製造係にされてしまったのです。
オーディン、ワインしか飲まない
実はオーディン、食べ物は口にせず、ワインしか飲まない!という習慣がありました。何と栄養分は酒で十分にとれるという特異体質だったのです!
なので、宴会の席で「これはオーディンのです」と肉やごちそうが持ってこられると、ペットの狼、ゲリとフレキに餌としてあげちゃってました。そして自分はワインをぐびぐび飲んでるのです。(オーディンはエライので、だいたいワインですが、蜜酒やエールの時もあります)
でも、たま~に肉が食べたくなる時もあるみたいで、美味しそうな肉があると時々食べてます。(特に旅行中)
まとめ
さて、北欧神話に出てくる酒の種類やエピソードをいろいろと紹介しました。こういうエピソードを読むと、人間って神話の時代から酒好きなんだなあと分かりますね(*´▽`*)
皆さんもよいお酒を!
いろいろ本も紹介してます。見てね↓
北欧神話関連マンガ!これさえ読めば神話の70%は分かる!リスト作成中
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